episode 113
「実にくだらない茶番だな……」
いささか興ざめした様子の拝島は、余裕の表情を崩さないまま言った。
「だが、充分だったよ」
秋希を支えていない反対の手で、祭壇に置いてあった短剣を取り上げる。
「私が何故、わざわざ時間稼ぎをしていたと思う?」
思い切り上方に突き上げ、一気に彼女の額を突き刺そうとする。
慌てたケビンがスターバックを発射しようとした瞬間、パアッと光に包まれて時間切れとなったイマージングが解除された。
「それを待っていたのさ」
「しまった!!」
生身のままダッシュした春都だが、彼までの距離は約10メートル。
(畜生ッ、間に合わない!!)
思わず目を閉じた彼の横を、一陣の風が吹き抜けて行った。
「ぐっ……貴様ァ……」
春都が目を開けると、柚香であるカワセミの嘴が、拝島の喉笛に深く突き刺さっていた。
しかし、彼が握っている短剣が逆に彼女の身体を貫いており、剣の柄口は真っ赤に染まっている。
「ずあッツ!!」
フルパワーのエアーハンドで拝島を吹き飛ばした春都は、慌てて柚香の元へ駆け寄った。
「柚香ッ!この馬鹿野郎!!」
『バカとは……ずいぶんな言いようね……』
ごぼっと血を吐きながら、彼女は必死に嘴を動かしていた。
「喋るな、すぐに血を止めて」
『……もう、無理よ。さすがに分かるわ』
自分の身体からとめどなく吹き出している血を見て、彼女は静かに言った。
『それよりも……私の懺悔を、貴方に聞いて欲しいの』
「……分かった」
大きく頷いた春都に安心したのか、彼女は一気に話し始めた。
『私が榊原燕鼠の血を引く人間だと分かったのは、つい最近。そう、あのいまいましい拝島新太が現れてから……』
悔しげに嘴を閉じ合わせた柚香は、再び話を続ける。
『獣祠道について、アイツは私より遥かに精通していた。彼は私に、自分の野望を達成する為の取引を持ちかけて来たのよ』
「取引?!」
『そう……たまみらい学園の全生徒を人質にとって、私が協力を断ったら人獣を使役して皆殺しにする、と脅してきたのよ』
彼女は、本当に哀しそうな口調で言った。
『その頃は私も、自分の隠された能力を認識していなかったし、貴方のような正義の味方の存在も知らなかった。だから、アイツに協力するしか無かった……』




