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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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113/121

episode 112

 その時、再び彼を救う声が届いた。

『鼻よっ!!』

「!!」

 身体が、自然と対応した。

 前方に大きく飛び込んだ彼は、ビッグサムの蹴りを紙一重で躱すと、そのままの軌道で靴先を跳ね上げ怪物の鼻先を思い切り蹴り上げた。


『ガアッ!!!』

 急所への一撃に、ビッグサムは堪らずのけ反った。

 身体の周囲から、バリヤーの気配が一瞬消える。

「今だッ!!」

 ケビンは再びスターバックを発射した。

 今度は動きの止まった怪物にヒット、二つに分かれた肉体が大きく地面に叩き付けられ、バウンドした。


「……罪のない動物達まで巻き込んで」

 ジャリッと地面の砂を鳴らして、彼は黒幕に向き直る。

「拝島、絶対許さないぞ!」

 秋希の身体を抱えたままの拝島は、北野鍾子の顔で口元をニヤリと歪めた。



「成るほど」

 拝島は、ケビンの後方で枝木に止まっているワライカワセミに目を向けた。

「最難関のルートを採ったにしては、やけに到着が早いと思っていたが……お前が入れ知恵をしていたんだな」


『もう、あなたの好きにはさせない!』

 カワセミに身を変えた柚香は、翼をバタつかせながら叫んだ。

「そうだ!」

 ケビンもあとに続く。

「俺が、貴様と悪の元凶である榊原燕鼠を倒してやるッ!!」


「……ふっ」

 拝島は短く笑った。

「フフッ、フフフフフフフフフフ……アハハハハハハハハハハハ!!」

 それはやがて大きくなり、大爆笑となった。

「何がおかしい!」

 その馬鹿にしたような態度に、ケビンはスターブレードを腰溜めに構えた。

 すると、拝島は素早く秋希の身体を楯にする。

「おっと、こちらには人質がいることをお忘れ無きように」

「うっ!」


「まあ、そんなに怖い顔をするなよ」

 鍾子(拝島)の瞳の中に、下卑た光が宿った。

「折角、いい情報を教えてやろうとしているのに」

「……情報だと?!」

 前後の脈絡が無い不自然な展開に、彼の思考は狂い始める。

 その隙をついて、拝島は一気に言葉を続けた。


「お前が求めている本当の敵は、さっきから横にいるんだよ!」

 含み笑いを浮かべて、彼は言った。

「そうだろう?『榊原柚香』」



「榊……原?!」

 驚いたケビンは、慌てて左隣の枝木に止まっているワライカワセミを見た。

 人間の時ほど表情の変化は分からないが、明らかに動揺と狼狽の色が浮かんでいた。


「どうやら、貴様にだけは知られたくなかったようだな」

 してやったかの様に、拝島は大声で言った。

「さあ、どうする?同級生を殺され、多くの動物を犠牲にした『獣祠道の末裔』がそこに居るのだ、さっさと仇を討ちたまえ!!」


 暫くの間、沈黙が流れる。

 やがて、ケビンはゆっくりと口を開いた。

「河崎……本当なのか?」

 彼にまっすぐ見つめられた柚香は、少し顔をそむけて、小さく頷いた。


「そうか」

 その言葉を聞いたケビンは、改めて拝島の方に向き直った。

「では、お前を脅して無理矢理従わせていたあいつだけが、俺の敵だな!」


『えっ、どうして疑わないの?!』

 信じられないといった口調で、柚香がケビンに尋ねる。

 彼女をチラリと見た彼は、口の端を弛めながら言った。

「先ほど、河崎は『もう好きにはさせない!』と叫んだだろう?俺はあの言葉を信じただけさ」


「だって、仲間だろう?」

 最後に付け加えた台詞までは、彼女の耳に届かなかった。

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