episode 108
そこから出て来たのは、体型は確かに蔵敷なのだが、全身が戦国時代の武将の様な赤い甲冑に包まれている「コスプレ戦士」であった。
背中に大きな旗印まで背負っている彼に、あんぐりと口を開けたマフーが問いかける。
『お前……なんだ、その格好は?』
「え、俺が誰かって?」
その言葉を待っていたのか、蔵敷はいきなり両腕を左右に突き出し、剣を上方に構えるような決めポーズを作った。
「我こそは、インベンションマン2号、紅の騎士エルビスである」
『2人目のインベンションマンだと?!』
マフーは度肝を抜かれた。
『ではお前も、源無春都と同じ……能力者なのか?』
「まあ、そういう事だな」
『これは、とんだ拾い物だ』
舌なめずりをして、マフーが近付いて来た。
『源無が東ルートを採ったので、正直言って退屈していた所だ。貴様の首を持ち帰れば、燕鼠様もお喜びになるだろう』
じりっとにじり寄ってきた彼に、構えを解いたエルビスは言葉を返した。
「うーん、それはおそらく無理だと思うよ」
『ナニ?!』
「だってお前、もうすぐ死ぬからな」
その言葉を理解しょうとした瞬間、マフーは背中にドスッという大きな衝撃を感じた。
重力の変化を受けながら、前方へと倒れ込む。
上半身を失い、鮮血を吹き出しながら残っているマフーの下半身を見ながら、エルビスは手元に戻った棒状の物体を左手首に収めた。
「試作品だけど、いい性能してるじゃん」
それは、蔵敷の専属技術者へある大谷が、彼の言葉で思いついた新兵器『スターバック』であった。
一旦放擲してしまえば、半径20メートルの範囲で約5分間あたりを周回している。
そして手元のボタンを押した時点で、その時居た地点から手元まで一直線で瞬時に戻ってくるのだ。
物体の表面は特殊なエネルギー膜で構成されており、触れた物体を瞬時に切り裂く能力がある。
「レーザーと違って、丸々回収可能だからな。節電にもなるのさ」
遂に動かなくなったマフーの上半身を見て、エルビスは言った。
『ソレヨリ、ヨク機転ヲキカセタネエ』
感心しているナタリーに、彼はえへんと胸を張った。
「まあ、丁度こいつがあったからな」
エルビスが指差した方向には、一台の公衆電話が設置されていた。
その近くにあるジャックから伸びた線が、そのまま彼の左手発信機に直結されている。
「もう少し設定に時間が掛かると思ったが、ナタリーも頑張ったな」
『イヤァ』
微笑みながら謙遜したナタリーだったが、ふと気になる事を思い出して彼に尋ねた。
『トコロデえるびす、アナタノこすちゅーむナンダケレド……』
「おう、なかなかナイスなデザインだろ?」
よほどこの衣装が気に入ったのか、未だにイマージングを解除していないエルビスが旨を張って言った。
『マッタク、イツノ間ニ準備シテイタノカシラ』
ナタリーは、呆れた様にそう呟いた。




