episode 106
(何が起こったんだ?)
春都は、改めて自分の格好を見た。
いつのまにか、イマージングが完了し、ケビンのユニフォームになっている。
左腕には、先程ダーハと対決した時のスターブレードが、そのまま装着されていた。
『コッチカラでーたヲ再送信シタノ』
泣きそうな声のナタリーが説明する。
『ダッテイキナリ通信ガ途絶エタンダモン、ビックリシチャッタ』
「全くだ」
少し離れた所で身体を休めたケビンは、手元の通信機に呼びかけた。
「おい蔵敷……エルビス」
『おっ、生きていたか、大将』
スピーカーからは、呑気そうな蔵敷の声が聞こえてくる。
「通信障害が発生した、どこか異常があったんじゃないか?」
『あ、やっぱりそうか?』
蔵敷は、カラカラと笑って答えた。
『いやーあんまり暇なもんでさあ、ついウトウトしていたら、うっかりアンテナを倒しちまったい』
「おいおい」
呆れてものも言えない春都。
『悪い悪い、もう絶対倒さねえからさ。メンゴメンゴ』
「ホント、頼むぜぇ!」
春都はサクッと通信を切った。
『ネエ……けびん』
何か言いた気なナタリーを制する。
「あいつがそう言っているんだ、信用するよ」
そう言って、彼は再び歩き始めた。
「……絶対、倒さねえよ」
切れた通信機を足元に下ろして、蔵敷は溜息交じりの言葉を吐いた。
彼の全身は、何かに刻まれた様に傷だらけで、数十か所から出血していた。
足元にも、数ヶ所の血溜まりが出来ている。
周囲には、既に命の無い何千もの小動物の死骸が積み重なっていた。
アンテナを杖代わりにして寄り掛かり、一息つこうとした彼は、ふと向けた視線の先に何かを捉えた。
「……また、すげえのが来やがったな」
彼が見つめる正面からの道路の奥に、赤く瞳を光らせた大きな物体が見える。
その物体が放っている鼻息が、ここまで聞こえて来た。
『えるびす……』
不安そうなナタリーの声が聞こえる。
だが、蔵敷は明るく歯を見せて笑った。
「心配すんな嬢ちゃん、俺も正義の味方の端くれだ」
恐ろしいスピードで迫り来る影に、アンテナを背にして立ち上がる。
「それより、ケビンのバックアップを頼む。あいつには、この事を言うんじゃないぞ」
『ウ、ウン』
(さあ、来やがれ化け物!)
彼は、両手でレーザーガンを構えると、一気にトリガーを引き絞った。
イマージングが復活したケビンは、急スピードでアジア園を駆け抜けて行った。
ここに秋希がいないことは、直感で判断した。
根拠としては、それだけ敵の層が薄かったのだ。
真っ直ぐに突っ込んで来たトナカイの角を軽く交わした彼は、擦れ違いざま首筋に気弾をたたき込んだ。
アイバード以来、人獣には遭遇していない。
(やはり、次のエリアが本命か)
案内板で現在地を確認した彼は、ゆっくりと歩を進めて行った。
最終エリア、オーストラリア園に向かって。




