episode 105
前方に、鉄柵で囲まれた自然ドームが見えて来た。
最大値で逃げている春都だったが、既に何頭かの猿に追いつかれている。
牙をむいて襲いかかるそれらを躱しながら、ようやく目的地に辿り着く。
そこには、何十羽もの肉食鳥が、今か今かと獲物を待ち構えていた。
一番奥に座っていた大鷲が、むくっと起き上がる。
『ようやく来たか、我が名はアイバード』
勢い良く名乗りを上げた彼だったが、次に飛び込んで来た猿の大群を見て度肝を抜かれた。
『な、何だあ?!』
動きが止まった猛鳥の群れに、春都は丁度突っ込んで来た猿を一匹捕まえ、思いっきり投げつけた。
猿爆弾の犠牲になった数羽がなぎ倒される。
それが引き金となり、猛禽舎の中は大騒乱となっていった。
鷲鷹や猿達は、既に本能レベルの戦いに入っており、当初のターゲットである春都の存在は全く目に入っていない。
暫くの間、周囲にはお互いの放つ叫び声と、噎せ返るような血の匂いだけが充満して行った。
物陰に隠れて状況を見守っていた春都は、頃合いを見ながら先へ進もうとした。
『……何処へ行く、小僧』
背後から掛けられた声に返事を返す暇も無く、彼はいきなり強烈な空気の波に吹き飛ばされた。
地面に思い切り叩きつけられた春都は、衝撃を堪えながらエアーハンドを発射する。
しかし、アイバードは右の羽根を一振りしただけで、気弾を跳ね返してしまった。
『このわたしに、空気銃は効かんよ』
勝ち誇った表情を見せたアイバードは、全長3メートルはある翼を揺さぶりながらこちらに向かって来る。
『さて、どこから喰らってやろうか……頭か、腹か、それとも腕か?』
唯一の武器が封じられた春都は、もはや為す術が無かった。
脳内では次の対処方法を必死に模索しているが、身体自体は全く動いていない。
『もはや面倒だ、丸飲みにしてやろう!』
そう言ってグワッと嘴を開けたアイバードに、彼は観念して目を閉じた。
その時、春都の思考の中に懐かしい声が響いた。
『けびん、すたーぶれーどヨ!!!』
彼は、条件反射に近い感覚で左腕を真横に払った。
『?!』
まさに彼の間近まで迫っていたアイバードは、身体に突如起こった衝撃で動きを止められた。
自分の身体を見下ろすと、胴体の部分が切り取られ、下半身がズズズッとズレ始めている。
『こ……こんな、馬鹿なァ!!!』
ごふっと血を吐いたアイバードは、大地に倒れて絶命した。




