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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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105/121

episode 104

 サバンナ地区を突っ切った春都は、イマージングを解除すると、アジア園に続く山道を歩いていた。


 ダーハが後を追ってくるかと思ったが、今のところその気配はない。

 どうやら、念のため彼がわざと残したダミーの足跡に上手く引っ掛かってくれたらしい。


 手首から、携帯端末のバッテリーを取り出して交換する。

 予備のバッテリーはあと5個。

 榊原燕鼠との決戦に備え、イマージングは慎重に行わなければならない。


 頭の中で園内の地図を広げた春都は、次回は猛禽舎あたりで人獣との対決になると踏んでいた。


 だが、いきなり前方に開けた場所が出て来たので、彼は思わず面食らった。

「……何だ、ここは?!」

 その時、頭の片隅に引っ掛かっていた画像がふと蘇った。

 それは、正門の券売機近くに貼ってあったポスターで、こう書かれてあった。


『チンパンジー園、新規OPEN』


(そうか、ここが)

 そう思った彼は、再び目の前のスペースに目を凝らした。

 木々を組み合わせて、アスレチックコースのようになったスペースに、無数の赤い光が宿っている。

 その全てに強烈な敵意を感じた春都は、戦闘態勢を取ろうと端末を覗き込んだ……瞬間、全身に戦慄が走った。


 電波の受信状態を示すアンテナが、一本も立っていなかったのだ。


「……なんてこった」

 次第に包囲網を狭めてくる黒い影の群れを前に、春都は背中に冷や汗を感じながらも何とか身構えた。


 キイッという声をあげ、黒い塊が飛び掛かって来る。

 良く見ると、それは4、5頭の猿が固まったものであった。

「はあっ!」

 横っ飛びに躱した春都の背中に、数十頭の牙が襲いかかる。

 右手の気弾でそれを退けた彼は、改めて現在の不利な状況を痛感していた。


 彼の装備は、イマージングしなければ使用出来ないものが殆どであった。

 使えるものは、エアーランと右手のドライバーズグローブに仕込んだエアーハンド程度。

 端末が圏外である現在、イマージングは全く出来ない事になる。

 電波妨害を予測して、局地用特殊アンテナを準備していたのだが、エルビスの方に、何らかのトラブルがあったのだろうか。


 現在戦っている猿軍団の中に、人獣が混じっていないのが唯一の幸いだが、状況が悪い事には変わりなかった。


(落ち着け……考えるんだ)

 春都は周囲に目を配りながら、必殺の方法を考え出そうとした。

 一方の猿達も、エアーハンドの威力を目の当たりにしたのか、少し距離を置いたまま彼を取り囲んでいる。

 暫く膠着状態が続いた後、不意に春都の頭の中で何かが閃いた。


「よし!」

 エアーハンドを強引に発射して包囲網の一角に穴をあけた彼は、坂道を一気に駆け上がった。

 虚を突かれた猿達だったが、すぐに激しい叫び声と共に後を追い掛け始める。

 まともに走っていては、獣に敵わない。

 春都は、エアーランの出力をマックスに入れ、まさに宙を飛ぶ様な姿勢でアジア園へのゲートを通過した。


 目的地まで、あと200メートル。

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