第8話 ダンジョン始めました 7
オスカー君たちの出した蔦にグルグル巻きにされたスケルトンたちとマミーたちは、モタモタと身じろぐように手足を動かしていた。
アンデッド系は動きが遅いから、こうやって纏めることが容易いんだ。
でも蔦で纏めたせいか、スケルトンとマミーが生る木みたいですこし不気味かも・・・
――不気味なんだけれど、シュールな感じもするなぁ・・・
大地の精霊王の眷属であるバイデントお祖父ちゃんは、光と闇、両方の属性を使える聖属性の能力を持っているから、どんな属性のモンスターでもこうやって蔦で絡めとってくれるんだ。
だから、聖者と聖女たちにバイデントの契約者となったオスカー君は大人気なんだ。
個別に浄化するよりまとめて一気に浄化できた方が楽だし早いんだもん。
魔力の消費は大きいけれど、スクロールがあれば節約もできるからね。
だから聖騎士団に入団したてのオスカー君の取り合いが始まった時に、僕の護衛を誰にするかを聖騎士団で話し合ってたこともあって、年も近いし、僕の専属にしたらクレームが減るだろう、ってことで僕の聖騎士になったんだ。
スクロールに魔力を込め終わった僕は、スクロールをグルグル巻きの集団の方に放った。
スクロールは蔦ごとスケルトンたちとマミーたちをさらにぎゅうぎゅうと巻き込んでいった。
「迷わず成仏して下さい!!!」
スクロールにカドケウスの先端を当てて、魔方陣を起動させると銀色の光がスケルトンたちとマミーたちを飲み込んだ。
銀色の光は光の柱に変化して、光に包まれていたものたちは一瞬後には消え去っていた。
「シャルル、お疲れさん。」
「うん、オスカー君とバイデントおじいちゃんもお疲れ様。」
当初の予定とは違って、オスカー君たちが補助で僕が倒す方になっちゃったけれど、結果オーライかな?
みんながいる場所に戻ると、おじいちゃまが「頑張ったな。」と言って回復魔法をかけてくれた。
歩くのもやっとなくらい体力が削られていたけれど、おじいちゃまの回復魔法のお陰で普通に歩けるくらいに復活できた。
「おじいちゃま、ありがとう。」
「ルル坊は今日の分は終わり。残りはランスとメルクが間引きね。」
「「了解です!」」
「アンディは後方支援。」
「はい!」
「オスカーは今日の分の報告書作成。」
「はい!」
兄たちとアンディ君が先行して、僕たちはその後を追いかけた。
オスカー君は歩きながら器用にメモをし始めた。
さっきの僕との共闘の内容に加えて、兄たちとアンディ君の戦闘の記録も、まるで運動系の部活のマネージャーがスコアブックに書き込んでいるかのように細やかにメモしていた。
聖騎士団には専任の事務官さんはいなくて、団員がローテーションで事務仕事を兼任しているんだ。
そのために、座学の試験があって、結構難しいって評判なんだよね。
座学試験を受けずに聖具に選ばれて聖騎士になってしまった人は、座学のスパルタ教育が待っているとかいないとか・・・
兄たちとオスカー君とアンディ君はまだ学生だから、座学の学力が高い教皇国の魔法学園高等科の卒業資格を取ればいいらしいんだけれど、実は全員、座学試験と実技試験をきちんと受けて両方とも合格しているんだ。
――僕も一応聖具の、カドケウスの主として、聖騎士の試験、受けた方がいいかな?
称号のこともあるから多分「受けなくてもいい」んだろうけれど、報告書とか、事務関連は勉強しておいて損はないだろうから、きちんとその辺も勉強しなくちゃね!
取りあえず、今日の残り時間、僕は休憩というか見学になったので、オスカー君やメラニーさんやフォルカーさんの事務作業を見て学ぶことにした。
*****
僕たちは順調に最深部に向かって歩を進めた。
特に各階層のマップにもモンスターたちにも異変はなく、今までと変わりはないそうだ。
「神器のあった隠し部屋は流石に変化したね・・・」
僕たちは一番の目的だった最深部の、神器があった隠し部屋に到達した。
でも、そこには何も無かった。
神殿の広間のような造りではあるけれど、祭壇も何もなくて、ただの空っぽの空間が広がっていて、その奥にいかにもラスボスがいそうな部屋に繋がっている大きな扉があるだけだった。
でも、神器があったころは、人ひとり寝転がれそうな大きさの祭壇のような台座が真ん中らへんにあったんだって。
「神器と台座が無くなっただけで、異常はなさそうだな。」
「いや、ボス部屋へ続く扉が派手になっていないか?」
「ボス部屋はランダムだからさ、扉だけは毎回変化があるんだよ。」
「そうなのか?」
「黒鋼の扉は黒竜ニーズヘッグ、黄金は九尾の妲己、真紅はヴァンパイアのエストリエ伯爵閣下。」
「今は真紅だな。」
「うん、真紅だね。」
「開けるのか?」
「開けたくないけど、開けて調査しないとね。ボス部屋も全部チェックしないといけないし、新たなボスが増えていないかの確認もあるし。開けるのは明日にして今日はもう休みたいね。」
おじいちゃまたちと騎士団長さんたちがヒソヒソとそんな話をしている傍で、僕らは野営の準備をしていた。




