第7話 ダンジョン始めました 6
ダンジョンの中盤に差し掛かると、エンカウントするモンスターたちも強くなっていった。
この辺は冒険者ランクBの人が頑張ればソロで行けるかな? という階層らしい。
「この辺からは二人体制で戦ってみようか。オスカーが前衛で、ルル坊は後衛で付与とか祝福を中心に支援してみよう。騎士団の方々はシャルルの付与や祝福のことは他言無用でお願いします。」
「もちろんです。」
団長さんたち三人は僕が次の「教皇」の称号保持者だと気づいているけれど、他のメンバーは僕が「次代様」とか呼ばれているのに「???」みたい。
身分的に大公家の子供で、勇者や賢者が生まれやすい家系の血筋だから、その関係の何かの爵位の跡継ぎって思っていそう。
少し開けた場所に出るとCランクモンスターのスケルトンとマミーが数体彷徨っていた。
まだ僕たちに気づいていないみたいだ。
僕とオスカー君だけが静かに見つからないように進んでいった。
他の人たちは認識阻害プラス気配を消して、一定の距離を保ちながら、見学の体勢になった。
「顕現せよ。」
オスカー君がそう言って跪いて左手の掌を大地に当てると、その声に応えるように聖槍バイデントが静かに姿を現した。
バイデントは槍の先が二叉になっているんだ。
聖槍の精霊は大地の精霊で、普段は地下に潜っているか植物――特にお花の蕾の中で眠っていて、こうしてオスカー君が呼びだすと応じて姿を現してくれるんだ。
バイデントの精霊は、見た目は顎のお髭の長い仙人のようなサンタクロースのようでもある見た目のおじいさんで、つばの広い三角帽子にローブを着ていて、魔法使いみたいな雰囲気もあるんだ。
でも、全体的にサイズが小さいんだよね。
お人形さんサイズ(1/6スケールくらい?)だから、オスカー君の肩に座って自分のお髭を撫でながらオスカー君の戦いを観察して「ふむふむ」とか「ほっほっほ」って声を出して笑ったりしているんだ。
なんというか、時代劇で悪者を手練れの部下とか御庭番の人に退治させて、部下の人が「控えおろー」とか言って家紋の入った印籠を見せると悪者たちが「ははー!」とか言って正座しちゃう御隠居様にも似てるかも?
『ルル坊、付与とか祝福は儂に直接かけておくれ。』
「了解しました。」
聖槍の方にかけようかと思ったんだけど、バイデントおじいちゃんが直にかけて欲しいって言ってるから、僕は「聖属性強化」の付与と「状態異常無効化(中)」の祝福をかけた。
アンデッド系モンスターはたまに呪いかけてくることがあるから用心しないとね。
呪いは、基本的に「暗闇」「魅了」「沈黙」「眠り」の中のどれかがランダムで一人にかかってしまうんだ。
でも、たまにその場にいる全員にかかってしまう時もあって厄介なんだよね。
アンデッドモンスターのランクが上がると呪いの種類が増えてより強力になるから油断できなくて大変なんだってメルク兄さまが言ってた。
モンスターとの戦いにもだいぶ慣れてきたから、今回からは浄化活動の時に本体から逸れてしまった場合を想定しての訓練も兼ねているんだ。
浄化活動の方は、僕がまだ見習いだから、ということで近場で小規模なスタンピードや、スタンピード制圧後の安全面が確保された場所への浄化のお手伝いがメインで、中規模や大規模の現場には立ち会っていないんだ。
中規模とか、大規模になったら体力面で不安があるから、かえって聖騎士団の活動の足手まといになりかねないからなんだ。
だから今回の訓練と調査で中規模に対応できるくらいの体力や戦闘力を高めたいんだよね。
兄たちとオスカー君、アンディ君とはいつも一緒に行動していて、フルール王国の王都周辺での冒険者活動の時もすぐに手助けしてもらえる位置で見守ってもらっていた。
だから訓練とはいえ、たった二人で、自分たちだけで何とかしないといけない状況が少し不安。
オスカー君の足を引っ張らないように頑張らないと!
「シャルル、」
ぽふっとオスカー君の大きな手が僕の頭をひとなでした。
「変なこと考えてないで、いつも通りでいい。」
「でも・・・」
「じゃあ、シャルルが思った通りに動いてくれ。俺はそれに合わせるから、指示をくれないか?」
「僕が?」
浄化活動の時、実は聖者や聖女のみんなは割と自由に動き回っていて、専属護衛の聖騎士たちが臨機応変に対応しているんだ。
そして全体の流れを統括する部隊長さんがいて、上手く現場をまとめているんだ。
一応、前もって情報を頼りに作戦を立てるけれど、作戦通りにいかないことも多々あるし、現場の様子が変化していることもあるんだ。
そうなると聖者や聖女たちは、ただ祈ったり能力を強化する付与だけでなく、魔獣や魔物の発生源となっている瘴気だまりを見つけなくちゃいけないんだ。
そういう瘴気をピンポイントでサーチする能力が聖者や聖女たちにはあるんだ。
だから、ベテランの聖者や聖女たちの中には部隊長さん並みに的確に現場で指示を出せる人もいるんだ。
「僕にできるかなぁ?」
「できるできないじゃなく、やるんだ。」
オスカー君はいつもと違う真剣な顔で僕をじっと見つめた。
――カッコいい・・・
美形がこういう顔をすると同性でもドキドキしちゃうものなんだね。
普段、オスカー君は飄々としていて、ムードメーカー的な人だから、ギャップ萌えしそう。
あ、いけない、今は訓練に集中しないと!!
そうだね、ステップアップするためにこれは必要で大事なことなんだ。
いくら僕が次代の教皇で魔力がたくさんあっても、その使い方や運用は現場で経験を積んで、研鑽し続けなければ宝の持ち腐れになってしまう。
そんな勿体ないことしちゃいけないし、僕は僕に出来ることを極めたい。
「うん、わかった。」
「失敗してもリカバリーするから気にせず思いっきり思い通りに!」
「じゃあ、まずオスカー君はバイデントおじいちゃんと一緒にスケルトンとマミーの足止めして一箇所に集めて!」
「了解!」
オスカー君は聖槍で、バイデントは土系の魔法で植物の蔦を操ってスケルトンとマミーを絡めとって一か所に集めだした。
僕はその間に「聖なる炎」の魔方陣が描かれたスクロールを取り出して魔力を込めた。
本当なら、無詠唱のスキルでパッパッと一体ずつ浄化できるんだけれど、まとめて一気にはまだ修練が足りないから、それを補うためにスクロールを使うように事前におじいちゃまに指示されていたんだよね。
多分、スクロール無しだと魔法の負荷が多くて、僕がすぐに行動不能になるかもしれないからなんだよね。
やっぱり、体力と筋肉、がんばってつけないと!!




