第3話 ダンジョン始めました 2
炎のダンジョンの入口に到着すると、そこではレムリア王国の騎士団の一個小隊が僕たちを待ち構えていた。
「僕たちだけで潜るって言ったのに・・・」
困ったような口調でおじいちゃまが溜め息交じりに呟いた。
「勇人目当てだろうな。」
「賢人目当てっぽい魔導士もいるぞ。」
「タイムアタックで振り落とそう。」
ハヤト様とケント様たちの笑顔が、黒い・・・
すると、僕たちの前に小隊の中で一番偉そうな人がやって来て跪いた。
「わざわざのお越し、感謝します。聖下。」
「僕? 僕はもう、隠居の身だから聖下じゃないよ~」
「では、先代様!」
「ただの調査に騎士団長が出張って来ないでよ~」
一番偉そうな人、騎士団長さんだった!
「近衛騎士団長と魔法騎士団長も控えております!」
笑顔でそう言う騎士団長の後ろに続くように二人の人が、そしてさらにその後ろで残りの人たちがおじいちゃんたちに向かって跪いた。
「先代様、勇者ハヤト殿、大賢者ケント殿、是非とも我らを調査隊の末席にお加え下さい!」
「断る!」
「何故!?」
「何故って、ただの調査だよ?」
「しかし・・・」
「今回は、新人聖騎士たちの訓練目的の調査なの。俺たちはただの引率です。」
「え・・・でも、いくら新人の聖騎士とはいえ、たった四人では・・・」
・・・四人・・・兄たちとオスカー君とアンディ君・・・
もしかして騎士団長さん、僕を頭数から外したのかな?
「おい、また見た目だけで判断したな? お前の悪いクセが復活しているぞ。」
ハヤト様が冷ややかに騎士団長さんに向かってそう言うと、騎士団長さんは僕を改めてまじまじと見つめてきた。
「失礼をいたしました!!」
そして、そう叫ぶように言って団長さんたちが僕に向かって深く頭を下げた。
「え、あの、気にしてませんから、どうか頭を上げて、皆さん、どうか楽な体勢になって下さい。」
父上と同じ年代らしい団長さんたちに額づかれるのは居心地が悪すぎる。
団長さんたちが立ち上がってくれたのにホッとしていると、団長さんたちは再びおじいちゃまたちに同行のお願いをしていた。
**団長さんたちサイド**
「団長! 前教皇聖下御一行様が湯治場に御来訪!!」
「よっしゃぁ~!!」
レムリア王国騎士団団長エアハルト・フォン・ヴィーラントは数年ぶりにレムリア王国に足を踏み入れた前教皇の来訪に雄叫びをあげた。
前教皇アマデウス11世は在位期間は10年程と短かったが、剣聖にも匹敵する強さを兼ね備えた猛者で、妖刀使いのSランク冒険者としても名を馳せていた。
幼少時にアマデウス11世に救われて以来、エアハルトは彼に傾倒し、聖騎士を目指した。
しかし、何度目かの挑戦でようやく座学で合格して実技試験、という頃に退位されてしまった。
一応、聖騎士試験には合格できたのだが、アマデウス11世がいない聖騎士団には入団する気になれず、辞退して故郷に戻った。
戻った先の故郷のダンジョンで王国騎士団の小隊と共に見習いの聖者たちを従えて、嬉々としてアンデッド系モンスターを狩っている勇者パーティーの中にいたアマデウス11世を見たエアハルトは、一念発起して王国騎士団の門を叩き、ハイスピードで出世して騎士団長の座に上り詰めた。
一介の冒険者より騎士団でのし上がった方がアマデウス11世とダンジョンで肩を並べて共に戦うことができる可能性が高いことに気づいたからだ。
アマデウス11世は勇者と大賢者と共にレムリアのダンジョンへ年の半分ほど入り浸っていた。
騎士団は可能な限り彼らのサポートをし、時折その教えを享受した。
「お前は筋がいいから教え甲斐があるな。」
そう言われて剣技や体術をアマデウス11世と勇者殿の二人がかりで鍛えてくれた。
アマデウス11世たちがよく連れ回していた勇者の弟子たちや見習い聖者たちとも友好を深めた。
けれど弟子たちが一人前になると、アマデウス11世は冒険者としても一線を退き、年に数えるくらいしか訪れなくなった。
代わりに弟子たちが各ダンジョンに潜り、定期的に間引いてスタンピードの抑制をしてくれるから王国としては助かってはいるのだが、アマデウス11世と会える頻度が極端に減ったことだけが不満だった。
ちなみに近衛騎士団長のハインリッヒ・フォン・ロイエンタールは勇者ハヤト、魔法騎士団長のニコラウス・フォン・ワイズマンは大賢者ケントが推しである。
アマデウス11世御一行は年齢のこともあってレムリア王国へ来る場合は必ず神殿の敷地内にある湯治場へ足を運ぶルーティンになっていた。
だから、湯治場の近所に騎士団の詰め所を作り、アマデウス11世御一行が来た時、各騎士団の団長室に直に伝令が飛ぶようにさせた。
今回は炎のダンジョンで神剣が主を定めたという報告があり、アマデウス11世御一行が調査に来る確率が高かったこともあって前もって各騎士団から精鋭を集めて小隊を編成して到着を待っていたのであった。
「団長が三人も調査に加わる必要はない。」
「「「ええぇ・・・」」」
「うちは新人の訓練を兼ねてるから、騎士団は事務方だけでいいよ。」
「「「ええ!?」」」
「あんまり大人数で動きたくないから、事務方二人にその護衛二~三人で。」
「しかし、見たところ聖騎士とは言え子供ではないですか!」
「ここはベテランの我々も共に!」
「君たちの実力は折り紙つきで信頼してるけれどさ、君たち、はっちゃけるじゃん。」
「「「ううっ・・・」」」
「今回はあくまで調査で、訓練なの。戦闘は聖者見習いのうちの可愛い曾孫ちゃんのための訓練なの。だから低ランクモンスターで慣れさせてから奥の方に行く予定だから、必要以上の火力はいらないんだよね。どっちみち勇人も賢人もいるから、何か問題が起こっても二人が対処できるし。」
「手は出しません!」
「先代様方の指示に従います!」
「だから、連れてって下さい!!」
「ホントに手を出さない?」
「「「はい!」」」
「子供たちにうるさく口出しもしない?」
「「「はい!!」」」
「ん~、でも団長三人を何日も拘束するのは良くないよね。」
「何日か潜りっぱなしになるし、シフト制にしたらいいんじゃないか?」
「そうだな、それがいい。」
「じゃあ、団長クラスは交代制で、枠は一つ、後はさっき言った事務方とその護衛ってことで決定ね。」
「しかし・・・」
「文句があるなら、君たち全員、今すぐ王城に強制転移させるよ?」
「強制転移・・・されてみたいかも・・・」
「馬鹿、何言ってんだよ!」
「先代様方の案を受け入れます! けれど、念のため、入口に小隊は待機させてもらいます。」
「調査が終わるまで勝手に中に入らないならいいよ。」




