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断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常  作者: 藍生らぱん
第二部

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幕間 ヒロイン(♂)とおじさん 後編

 

炎のダンジョンに潜って数日後、ジャンは休憩所代わりに利用している最深部に近い階層の隠し部屋へ向かった。

ダンジョンの各階には隠し部屋があり、そこには宝箱があったり、出入り口に戻れる転移陣がある場合がある。

そして、そこはモンスターが入り込むことのない安全地帯でもあった。

ジャンは各階の隠し部屋を網羅し、毎回どこかの階層の隠し部屋を根城に活動していた。

今回、ジャンは何となく神器が眠っている隠し部屋へ行かなくてはいけないような気がして向かったのだが、そこで神器が眠る隠し部屋が炎に包まれているのを目撃した。


「はぁ・・・」


ジャンは溜息をついた。

隠し部屋には神器が奉納されている祭壇がある。

ジャンはその神器には興味が無かったので、いつもは神器を尻目に隠し部屋の片隅でソロキャンプをよくしていた。

神器は、神器自身が認めた者でないと持ち出すことはできない。

隠し部屋が燃えているということは、持ち出そうとしたバカがいるということだ。


「はぁ・・・マジかよ・・・」


ごうごうと燃え盛る隠し部屋の中をのぞくと、神器の剣の傍で真っ黒な灰の塊になっている人間の姿が複数見えた。


「もう、死んでるよな。・・・ご愁傷様。」


翌日、炎と熱気が無くなった頃を見計らってジャンは隠し部屋の扉を開けた。

灰も残ることなく遺体は全て消え去っており、いつも通りの静寂でどこか神聖な空気のある隠し部屋に戻っていた。

一か所を除いて。


「お邪魔しま~す。常連のジャンですよ~」

ジャンは軽口を言いながら隠し部屋の中に入り、いつもの隅っこにテントを張った。

そしてテントを張り終わると、携帯用の焚火台に固形燃料を置いて火をつける準備をした。

鍋に魔法で出した水球を入れ、火を点けようとした時、何となく神器の置かれている台座に視線を移した。

「ん?」

台座の上に誰かが横たわっているのが見えた。

ジャンはそっと台座に歩み寄り、少し離れた位置からそこで死んだように眠っている黒髪の少年の様子を窺った。

「死体か?」

少年は10代半ばくらいの年齢に見えた。

神器である剣を抱きしめるような格好で眠っていた。

ただし、顔色や全体的な肌の色は土気色で、ぱっと見は死体にしか見えない。

「神剣に選ばれたのか?」

燃えていない、ということは神器が護ったということに他ならない。

それは、つまり・・・


「エリクサーでもかけろってか?」


ジャンは、魔法伯であり賢者の称号を持つ自分の父親が錬金術で作った万能薬――エリクサーを数本、所持している。

ジャンは訝しげに神器を見つめた。

ジャンは魔剣の所持者ではあるが、自分の魔剣に宿る肉体を持たない「悪魔」と呼ばれる存在を見ることも声を聴くこともできない。

だから、聖剣や神器に宿る精霊や妖精といった存在も見えないし、声も聞こえない。

ただし、何となく雰囲気というか、空気を読むことはできる。

今回、ここの最下層にはもっとゆっくりしたペースで来る予定だったのに、こうして早く来てしまったのは神器の意思が関係していたのかもしれない。


ジャンはマジックバッグからエリクサーを数本取り出すと少年の全身に振りかけた。

振りかけた直後から少年は生気を取り戻し始めた。

そして数分後、少年がうっすらと瞼を開け、ジャンと目が合った。

すると少年は勢いよく起きあがり、そしてジャンに抱きついたのだった。


「ルル様!」

「おい、離れろ!」

「ルル様、会いたかった!!」

「人違いだ!」

ジャンがそう叫ぶと、少年はジャンから手を離してジャンをジッと見つめた。

そして、「あれ?」と呟きながら首を傾げた。

「目の色が違うし、老けてるけど、顔がソックリだ。もしかして親戚?」

「老けてて悪かったな。あと、俺の親戚にルルって名前のやつはいない。」


――でも、本名じゃなくて愛称で呼ばれている甥っ子はいるな。


けれど、それは初対面の他人に言う必要はないだろう。

ジャンはそう結論付けると、警戒するように少年を見つめた。


「そうなんだ・・・」

少年は残念そうにジッとジャンの顔を見つめた。

「俺はジャン。冒険者だ。」

少年の視線に耐えかね、ジャンはそう言って冒険者のタグを見せた。

少年はジャンが見せた冒険者タグの色を見て目を輝かせた。

「白金! S級! 俺はオズ・・・じゃなくて、マリウスって言います。B級です! 是非弟子にしてください!」

「弟子ぃ~?」

ジャンは初対面で弟子になりたいと叫ぶマリウスをジッと見つめた。

マリウスは獣人族に多い琥珀色の瞳をしていて、ジャンの金眼に近い色合いだ。

ジャンは特殊スキルである魔眼を使ってマリウスのステータスを密かにチェックした。


***


マリウス・ド・オズワルド

 14歳 獣人族 召還者

 死と再生の神アドニスの愛し子

 アゼルスタン王国出身

 オズワルド伯爵家嫡男

 Bランク冒険者 剣士

 神器・炎の神剣(フェネクス)の契約者

 冒険者パーティの仲間に刺殺されるもフェネクスの特殊スキルにより蘇生

 

***


――召還者? 転生者ではなく?

ジャンは「召還者」という言葉をじっと見つめた。

すると召還者の文字の色が変化し、別のウィンドウが開いた。


***


小津千影

 転生者

 日本国 東京都出身

 ストーカーに刺され死亡

 享年19歳


***


――これは、じいちゃんたちに相談案件、だな。


ジャンは溜息をつきつつ、マリウスのステータス画面を閉じた。

本当なら、こんなに簡単に他人の個人情報を閲覧すべきではないのだが、最近、「悪魔」絡みの事件で長年の友人兼恋人だった魔女に裏切られたことがトラウマになりつつある。

彼女の望みを叶えるために魔石をたくさん貢いだというのに、肝心の彼女は悪魔の甘言に乗ってジャンを騙して利用しただけだった。

結局、その彼女も悪魔に利用されていただけで、その末路は呆気ないものだった。


そんなこんなでジャンは人間不信気味なせいもあり、初対面なのにぐいぐいと距離を詰めようとする輩が本当は何者なのかを確認するために魔眼の無駄遣いをしていた。


けれど世の中には、人間に紛れて面白おかしく「人間」として生活している物好きな「悪魔」もいる。

害がなければいいが、そうでない者の方が多いのが現状だ。

マリウスは、ステータス画面を見る限り、「愛し子」ではあるものの、「悪魔」とは関わりが無さそうだった。


――今世も前世も「刺殺」だなんて、なんて物騒な人生を歩んでいるのか。同情はするが、だからと言って弟子にして面倒をみるのは御免だ。


「お前の師匠になる気はない。」

ジャンはアイテムバッグにテント一式をしまい込んだ。

蘇生したことだし、これ以上は関わり合いになりたくない、とジャンは思った。

けれど、「愛し子」で「神剣の契約者」をほっぽり出して何かあったら目覚めも悪いし、教会側からクレームもくるかもしれない。

「ええぇ~! そんなイジワル言わないで下さいよ、師匠!」

「だ~か~ら~、弟子はお断りだって!」

「そんな~師匠~先生~マスター~」

「はぁ・・・とりあえず、移動だ。」


――取りあえず、教会関係者に預けて丸投げしよう。


そう決意して、ジャンは弟子入りを諦める様子が無いマリウスの腕を取ると、転移陣が書き込まれたスクロールを取り出し、起動させた。


転移した先は、フルール王国の辺境にある修道院へ続く参道の石造りの階段の手前だった。

「鳥居?」

マリウスは参道の入口から階段に沿って設置されているいくつかの赤い鳥居を不思議そうに見つめた。

「この鳥居を作って建てたのは、60年くらい前に異世界から召喚された勇者御一行様だ。」

「ええっ!!」

「本物の勇者に会わせてやるから、弟子はそっちに頼むんだな。」


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