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断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常  作者: 藍生らぱん
第二部

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幕間 ヒロイン(♂)とおじさん 前編

 

「はぁ・・・」


ジャン・アルベール・ド・ブランシュールはSランク冒険者の魔剣士だ。

「状態異常無効化」の特殊スキルを持っているので呪物を素手で触っても呪われないし、ゾンビ系やレイス系の魔物は殴って浄化できるポテンシャルを持っている。

Sランク冒険者ではあるが、フォーティス大公家の魔法騎士団にも所属している魔法騎士でもあり、フルール王国の魔法伯家の令息でもある。

銀灰色の髪に金眼、見た目は20歳前後の美青年だが、実年齢は三十代半ばだ。


「はぁ・・・マジかよ・・・」


ジャンは目の前に広がる光景に、ただただ、ため息をつくことしかできなかった。


***


フルール王国で悪魔関係の事件やトラブルで散々な目にあった後、ジャンはレムリア王国にある炎のダンジョンに向かう為、お気に入りの高級ホテルにやってきた。

憂さ晴らしでダンジョンに潜る前に、ストレスを緩和し英気を養うためだ。


アンデッド――ゾンビやレイスが湧き出る階層のある炎のダンジョンは、物理攻撃系の冒険者たちには不人気だった。

神官や僧侶系のジョブ持ちの冒険者にとっては、効率よくレベルを上げることができて魔石も取れる穴場ではあるが、グロテスクなゾンビ系や正体のわからない幽霊のようなレイス系を好んで狩る一般的な冒険者は稀だ。


ジャンの持つ魔剣――妖刀ムラマサはアンデッド系に有効な魔剣で、ムラマサに宿る悪魔フラウロスは、負の感情を持ったそれらの魂を好んで糧にしていた。

ジャンは、「状態異常無効化」の特殊スキルと、剣術と体術に合わせて攻撃的に進化させた浄化スキルがあるため、Aランクのアンデッド系モンスターに対しては、ほぼ無敵だ。

だから特に憂さ晴らしをしたい時に、ジャンはよくここのダンジョンに潜っては、高レベルのモンスターであるスカルナイトやリッチなどを満遍なく狩っていた。


ジャンの憂さ晴らしがゾンビ系やレイス系のスタンピードの抑制にもなっているので、レムリア王国の上層部やギルド関係者からは好意的に見られている。

そのため王族が経営に携わっている高級ホテルは、ジャンがいつ来てもゆっくり休めるように専用の部屋を用意してくれていた。


「おかえりなさいませ。ブランシュール様。」

高級ホテルのフロントマネージャーは、ジャンが冒険帰りでボロボロの状態であったとしても、いつもにこやかに出迎えてくれる。

「いつもの部屋空いてる?」

毎回同じ部屋に通されるから、ジャンはいつからか、ついつい常連っぽくそう聞くようになってしまっていた。

「もちろんでございます。」


高級ホテルのスタッフは、傷病により退役した元騎士団員で構成されている。

だから、スタンピードの経験者も大勢いる。

王国騎士団は、人気のない炎のダンジョンがスタンピードを起こさないように、間引きに駆り出されることが多かった。

グロテスクなゾンビ系、正体不明のレイス系、それらは対処を間違えると、倒しても倒してもすぐに復活するし、増殖することもあって苦戦を強いられる。

精鋭揃いのメンツでも大変なのに、たった一人でゾンビ系もレイス系も一刀両断にして最深部まで行けるジャンを、彼らはリスペクトしていた。

だから、安宿は止めてうちのホテルだけにして欲しい、なんなら住んじゃえばいいのに――スタッフ一同、心からそう思っているが、そんな心情をおくびにも出さずに完璧なサービスをするのであった。


特別に優待されている事を知らないジャンは、サービスの行き届いた高級ホテルをダンジョンに潜る前日とダンジョンから出た後の数日間だけ利用している。

年に数えるほどしか利用していないが、ゆったりと浸かれる大きめのバスタブとふかふかのベッドもあって寝心地がいいし、食事も格別に美味い。

冒険者向けの安宿に比べれば割高だが、たまに贅沢するくらいの甲斐性はあるからな――と、ジャンは心の中で毎度毎度そう呟いているのだが、実は自腹で宿代を出したことはない。


冒険者タグにはキャッシュレスの機能があり、商店や宿屋では代金を自動で引き落とす仕組みになっている。

ジャンが高級ホテルに入ると、その情報はフルール王国のギルド長バーナードに伝達され、ジャンのホテル代やホテルでかかった飲食代と雑費は全て、バーナードが支払っていた。

ジャンはいちいち明細を確認しないので、その事実に一向に気づいていないし、きちんと自分が支払っていると思っている。


バーナードは、そういうジャンの抜けた――世間知らずな部分を利用して、ジャンが宿泊する部屋に我が物顔で勝手に出入りしているのだが、10代の頃からずっと一緒のパーティーで、いつも一緒の部屋で寝起きをしていた影響なのか、ジャンはそれが普通だと思い込んでいる節があった。


今回はフルール王国での悪魔絡みの事後処理でバーナードは多忙を極めているだろうから、ホテルでは一人でのんびりできるだろう。


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