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断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常  作者: 藍生らぱん
第二部

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第11話 ラジオ体操

 

部屋に戻ってからは、エクター先生に言われた通りに、時間割や年間行事予定が書きこまれたプリントをチェックして明日の準備を終わらせた。

その後は、再度念入りに年間予定表を見たんだけれど、予定表には「運動会」とか「体育祭」とか「球技大会」とか「マラソン大会」とか、そういう運動系の行事が一つも載っていなかったんだ。


「運動会が無い、なんて・・・」


前世、5月の下旬に中学校までは運動会、高校では体育祭があったけれど、魔法学園には陸上競技も球技も無いから体育祭のような行事が無いっぽい。

代わりに学園祭で騎士科のみの武器別のトーナメント戦とか流鏑馬、全学年では「模擬戦」というものがあるんだ。

模擬戦は、全員参加ではなく、クラスから代表を三人選出して、その三人がワンチームになっての魔法団対戦だ。


この世界は「勇者召喚」で異世界人が召喚されるし、僕のように異世界の前世の記憶を持っている人も歴史上、何人もいる。

だから、僕と同じ異世界の記憶持ちか、召喚者がいたと思うんだ。

だって食文化が前世の僕が生きていた日本のものが多いんだもん。


ああ、でも、異世界転生ものって「米」「味噌」「醤油」の再現を頑張る系の主人公が多いから、学校行事系はおざなりになっちゃったのかな?

魔法があるから、魔法に拘っちゃうだろうし、騎士科があるから陸上系よりは武道系だもんね。


――でも、せっかく健康な体に生まれ変わったのに、運動会が無いなんてガッカリだなぁ・・・


前世では運動会はおろか、体育の授業も見学だった。

健康になって運動会のリレーの選手になるのが、小学生の時の僕の夢だった。

風を切るように颯爽と走ってみたかったのに・・・


――ん?


今は健康なんだから、体育とか運動会とか関係なく、いつでもどこでも全力で走ってみてもいいんだよね?

僕、何で今までそれに気づかなかったんだろう?

まだ時間もあるし、思い立ったが吉日!


僕はさっそく動きやすい服装に着替えて、意気揚々と部屋の外に出た。

いや、出ようとしたところでケント様に捕まった。

ケント様とハヤト様は毎日交替で僕の護衛をすることになっていて、就寝時間までは一緒にいてくれることになっているんだ。

うっかりそれを忘れてしまって、一人で外に出ようとしたから捕獲されたみたい。


「ルル坊、どこに行くのかな?」

「あのね、全力で走ってみたくて。」

「ん? 詳しく?」


そういえば、ケント様たちは「勇者召喚」で異世界からここの世界にやってきた人たちなんだよね。

もしかしたら「運動会」とか知ってるかな?

名前が日本人っぽいから、僕と同じ世界の日本人だったかもしれないよね?


「僕ね、うっすらとなんだけど、前世の記憶があるんだ。」

僕は思い切って前世の記憶を持っていることを告白した。

「うん。そうだね。」

僕の一世一代の告白に、ケント様は驚くことなくウンウンと頷いた。

「知ってたんですか?」

「ルル坊が産まれた時に鑑定してステータス画面見たからね。」


大賢者であるケント様は僕と同じ神眼の特殊スキル持ちだ。

だから母さまが出産後に母子共に異常がないかどうかと、生まれつきの称号の有無を確認するために神眼で鑑定をして、僕が転生者であることを知ったそうだ。


ということは、家族もみんな僕が転生者だって知ってるってことだよね?

今まで、深くそのことを考えないで自己処理してきたけれど、家族にカミングアウトするかどうか悩む前に解決してたんだね。


僕の前世の記憶はどんどん薄れている。

自分を含めて近しい人の顔や名前は全く思い出せなくて、ただ、知識と少しの思い出が残っている状態だ。

ただし、思い出も、影絵を見ているような感じで、現実味が無いんだよね。

以前はもっと、鮮明に見えていたはずなのに・・・


「そうなんだ! でね、前世の僕は体が弱くて運動会とか体育の授業は全部見学で、全力疾走したことが無かったんだ。でも、時間割には体育の授業ないし、運動会とか体育祭もないから、徒競走とか、リレーもないでしょう? だからね、今の僕は健康体だから、試しに外で思いっきり走ってみようと思ったんだ。」

僕は、前世の記憶が消えつつある不安と哀しみを押し込めて、努めて明るくそう言った。

「なるほど。でも、いきなり走るとお腹が痛くなるかもしれないから、まずは準備運動してみようか。」

「はい。じゃあ、付き添いと御指導お願いします!」

「OK ちなみに準備運動の仕方は覚えてる?」

「なんとなく・・・ラジオ体操みたいな感じだったかな?」

「走る前はラジオ体操でもいいのか? 走り終わったら柔軟? 体育の準備運動ってどうだったっけ?」


ケント様が高校生だったのは、60年も昔だから、どうやら体育の準備運動の記憶が曖昧らしい。

でもでも、ラジオ体操知ってるってことは、やっぱり同じ世界の日本出身なのかも!

そう思ったら、余計に親近感が湧いてきた。


――今度、ハヤト様も交えてゆっくりお話ししてみたいな。


取りあえず二人で、アルジェントも連れて寄宿舎の中庭に出て、思い出しながらラジオ体操をしてみることになった。

ただ黙ってするのも味気なくて、メロディーを口ずさみながら。


「ちゃーんちゃかちゃちゃちゃちゃ♪ちゃーんちゃかちゃちゃちゃちゃ♪ちゃちゃちゃちゃ♪ちゃちゃちゃちゃ♪ちゃちゃちゃちゃちゃーん♪」


結果・・・


「ぜぇーはぁーぜぇーはぁ―」


半分も終わらないうちに、息が上がってしまった。

「走るの、無理そうだな・・・」

ケント様は見た目はシルバー世代一歩手前の50代後半なのに、息一つ乱していない・・・

僕の方が、若くてピチピチなのに解せない・・・


「も・・・動け・・・ましぇん・・・」


地面に四つん這いになってゼーハーしていると、ひょいっとケント様に抱っこされて部屋に戻され、手際よくお風呂にも入れられた。


『アワアワ~』

『ブクブク~』

『ツルツル~』

『スベスベ~』


ケント様と契約している水の上位精霊であるセイレーンとウンディーネの二人がメイドさんの格好で、くたびれて動けなくなった僕のお風呂のお世話をしてくれた。

こういう時は、お手伝いしてもらえるのも楽でいいね。


ああ、でも、ウォーキングとか、冒険者活動とか、色々頑張っているのに、体力がなかなかついてくれない。

ラジオ体操も半分もできなかったし・・・


「ラジオ体操はさ、歌いながらやったのがダメだったんだよ。」

フフッと笑いながらケント様が問題点を指摘してくれた。

「だって、ルル坊ってば息継ぎとかしてなかったし・・・要は呼吸がダメダメだったんだよ。」


呼吸・・・呼吸法?

火とか水とか波紋とか、ラマーズ法とかかな?



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