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第67話 魔道具開発秘話(2)

「ケルビム。ちょっと街へ出掛けてくる」

『急にどうしたんですか?』

「このところ、ずっと屋敷内でダラダラゴロゴロ過ごしてきただろ。いろいろ物思いにふけっていたら何だか無性に人恋しくなってな……。俺はお尋ね者なんだが、あれからもう一年も経ってる。そろそろほとぼりも冷めた頃だろ。そう思ったら急に街に出たくなった」

『そうですか。でしたらバトルロイドを三体ほど護衛にお連れください』


 巨体の重騎士を三人も従えて街中を歩いていたら、目立ってしょうがない。

 俺は一応お尋ね者なんだからひっそり動きたいんだが。


「いや、今回は短時間の買い物じゃなくて、三、四日泊ってこようと思ってる。バトルロイドの護衛がいるとかえって目立つ。上空から流星号が警護してくれれば大丈夫だろ。何かあれば新装備の煙幕弾ばら撒いて逃げてくるよ」

『確かに目立つ行動は避けるべきですね。でしたら護身用の装備を用意しましょうか』

「護身用の装備なんてあったっけ?」

『何もありません。ですのでこれから作ります。そうですね、まずは通信機は必須ですね。今使っているブレスレット型通信機は近距離用ですから高機能タイプに替えましょう』


 俺の目の前に幅広タイプのブレスレットがホログラム投影された。

 ブレスレットの銀色の表面は光沢を放っており高級感を漂わせてる。

 これだと盗人の目を引きそうだ。


「別に機能はいいんだけど、ちょっと目立つな。表面の光沢を消してアンティーク風の意匠を入れられるか?」

『出来ますよ。こんな感じでどうでしょう』


 輝きを放っていたブレスレットの光沢が消えて、表面に古風な文様が描き出された。


「うん。いいね。これでいこう」

『了解しました。では次に武装ですね。この世界では剣が主流ですがマスターには無用の長物ですね。では銃にしましょうか。ブラスターなどいかがでしょう?』


 ブレスレットが消えて、SF映画に出てきそうな未来感溢れる大型銃が表示された。

 なんだかカッコいいんだけどデカ過ぎだ。デザインもこの世界の雰囲気に合わないぞ。


「デカいし派手だし扱い難そうだ。もっとシンプルなのはないのか?」

『はあ、これ人気モデルなんですがね。ではこんなのでどうですか? マスターの時代で使われていた銃です』


 見た事のあるデザインの銃が次々に投影された。確かにどれも俺の時代の銃だ。


「銃の弾数は六発だよな」

『リボルバーはだいたい五、六発ですが、オートマチックだと十数発入ります。お勧めは断然オートマチックですね』

「そうなの? うーん、でもなあ、リボルバーってカッコいいよな。憧れるなあ。でも弾数が少ないのはなあ……」


 その時、俺に天啓が舞い降りた。


(リボルバーを魔道具に改造しよう!)


 魔法の教本にファイヤーボールの魔法陣があった。あれを改良して銃に組み込めば弾の代わりに魔法を撃つ魔法銃に出来るはずだ。


「ケルビム、銃は保留だ。俺にちょっと考えがある」

『了解しました。では後は鎧が必要ですね。バトルロイドのような鎧は重すぎますから、これなどいかがでしょう』


 今度は全身が赤いメタリック塗装の金属装甲で覆われた人の姿が映し出された。

 これ知ってるぞ。確か宇宙刑事なんちゃらっていうメタルヒーローだろ。

 まあこれも一種の鎧と言えば鎧なんだろうけど、こんなピカピカ光るのを着て歩いたら目立って仕方がないじゃないか。


『これは私のお勧めのパワードスーツです。剣で攻撃されても防御できますし、腕力や脚力も三、四倍に強化されるので、人間相手なら余裕で捻りつぶせます。但し使いこなすのに一ヵ月ほど訓練が必要ですが』

「却下!」

『却下? なぜ! 安全を考えればスーツは必須です』

「訓練に一ヵ月って何だよ。長過ぎだ! だいたいこんなの着てたら思いっきり目立つだろ! バトルロイドでさえ目立つって言ってるのに、更に目立ってどうする!」

『はあ、全くマスターは我儘ですね』


 こっちがため息つきたいよ。


「だいたい、これって俺の時代のメタルヒーローってやつじゃないのか?」

『確かに外見は似てますが、れっきとした軍用パワードスーツですよ。マスターの時代のデザインは後世でも人気でいろんな製品に影響を与えています。人気のあまりそのままデザインを使う場合もありますし』

「だから流星号みたいなエアカーがあったのか。納得だな」

『軍用のパワードスーツに比べると性能は落ちますが、青年向けの玩具でしたらこんな製品もありますよ』


 メタルヒーローの姿が消え、代わりにバイクに乗って悪の組織と戦うあのバッタ風の仮面ヒーローが映し出された。

 こっちは俺の世代だから馴染みがあるな。子供の頃よく変身ポーズを真似して遊んだものだ。

 大人の目で見てもやっぱりカッコいい。


『玩具とはいえ、これも立派なパワードスーツです。着た者の力を1.5倍まで強化します。発売当時は人気沸騰で売り切れ続出となり価格が高騰したらしいですよ』

「ケルビムの情報ライブラリってそんな情報まで入ってるのかよ」

『制御ソフトのリミッターを解除して強化率を三倍以上に引き上げる違法改造が大流行し、そのせいで怪我人が続出。犯罪に使われることもしばしばで発売二ヵ月で販売禁止になったという曰く付きの製品です』

「お前、どんだけ詳しいんだよ」

『ちなみに私もリミッターを外す改造コードをちゃんと持ってます』

「お前、改造マニアだったのか!?」


 話を打ち切ろうとしたが、ふと気になった。


「こっちのバッタ風スーツ、使うのに訓練は必要ないのか?」

『ええ、玩具ですから。まあ、パワーに慣れるのに少し時間は掛かりますが、訓練と言うほどのものは必要ありません』

「これ着たら騎士と戦える?」

『これは力を強化するスーツです。戦うには力だけでなく戦闘技能も必要です。結局装着者の戦闘技能次第です』

「そうか……」

『そんなお困りのあなたに朗報です。戦闘技能のない初心者でもそれなりに戦える自動戦闘ソフトが今なら無料で付いてきます』

「お前、いつからテレビショッピングの司会者になったんだよ!」

『ただし自動戦闘時はリミッターが強制解除されるので、筋肉に多大なダメージを与えます。ご了承ください』

「そんな危険なもの了承できるか!」

『まあ、これも違法ソフトですから』

「何でそんなの持ってるんだよ!」


 反射的に拒絶してしまったが、俺に本日二度目の天啓が舞い降りた。


 このバッタ風スーツとあの役立たずの異空間収納魔法陣を組み合わせれば、とても心躍る魔道具が作れるのではないだろうか?

 異空間収納魔法陣の改良が必要だが、俺なら絶対うまく出来るような気がする。


「ケルビム。このバッタ風スーツを二つ作ってくれ。自動戦闘ソフトも付けて」


 街に出掛けるのは、もう少し先になりそうだ。



 ◇◇◇



「ケルビム。魔銃リボルバーのテストを始める。最初はファイヤーバレットだ」


 俺は腰に巻いたガンベルトから、黒光りするリボルバーを素早く抜き取り、前方の標的に向け引き金を引いた。


「パシュッ」


 小さな炎が標的に向かって飛んでいく。命中だ。標的の薄い金属板に穴が開いている。

 続けて何度か引き金を引く。


「パシュッ、パシュッ、パシュッ、パシュッ、パシュッ」


 標的に開いた穴は全部で四つ。六発中四発が命中だ。まあまあかな。


「いい感じだ。次はアイスバレットだ」


 俺はリボルバーのシリンダーを少し回してから、新しい標的に向かって引き金を引いた。


「カン、カン、カン、カン、カン、カン」


 銃弾型の氷が標的に向かって飛んでいく。

 標的にいくつかの穴が開いた。六発中五発が命中だ。いいね。


「これも問題ない。最後はエアバレットだ」


 俺は再びリボルバーのシリンダーを回し、次の標的に向かって引き金を引いた。


「バン、バン、バン、バン、バン、バン」


 今度は標的の金属板が軽くへこんだだけで穴は開いていない。

 エアバレットは非殺傷弾なのでこれで問題ない。

 へこみの数は二つある。六発中二発か。ちょっと命中率が悪いようだ。


 俺は銃のグリップの蓋を開いて中の魔石を確認した。魔石の色は透明だ。


「魔力の消費はごく少量。問題なし」


 俺はシリンダーをスライドさせ、中から円柱型のカートリッジを三本取り出した。

 カートリッジの先端を見ると極細の線で魔法陣が刻まれている。その魔法陣の表面はどれも非常に滑らかだ。


 俺はカートリッジをシリンダーに戻した。


 金属に刻まれた魔法陣は魔法を発動すると表面が焼けてしまい、数回使うと魔法陣が完全に焦げ付いて使用できなくなる。

 俺の銃のカートリッジは金太郎飴のように円柱の中全てに魔法陣が刻まれており、使用後に先端を薄く削ることで、常にきれいな魔法陣が出てくるようにしてある。

 そのため銃を撃ち続けると、徐々にカートリッジは短くなっていく。

 ある程度まで短くなったらカートリッジは交換だ。


「カートリッジも問題なし」


 俺はリボルバーをホルスターに戻した。


「全て問題なし。魔銃リボルバー、こいつは使えるぞ!」

『はあ、よく分かりませんね。確かに使えはしますが、ハンドブラスターの方が威力はありますよ』

「何度言えば分かるんだ。リボルバーは男のロマンなんだよ。お前も一応男のはずなのに何で分かってくれないかな。それにこれは護身用だからそんなに威力なんていらないんだよ」


 どうもケルビムは、俺の自信作の魔銃リボルバーが気に入らないようだ。

 俺の精魂込めて作った銃にケチを付けるとは何と不届きな奴だ。


「じゃあ、銃のテストはここまで。変身ベルトのテストに移るぞ」

『了解です。標的出します』


 俺の前に不格好なロボットが現れた。

 どうせ壊すものだからと、ケルビムが破棄部品を集めて作った模擬戦闘用ロボットだ。


 俺は変身ベルトにそっと触れた。このベルトの裏側には、俺が改良に成功した異空間収納魔法陣が刻まれている。


 さあ、今こそ変身ベルトの力を見せてやる。

 俺はポーズを取って叫んだ。


「変身!」


 腰のベルトの風車が回転を始める。……この風車はただの飾りで特に意味はない。


 変身は一瞬で完了した。

 頭は緑のマスクに赤い複眼の目とギザギザ模様の銀の口。

 体は黒と緑のスーツに銀のグローブとブーツ。

 そして首には赤いマフラー。

 昭和のバッタ風ヒーローの登場だ。


 長い道のりであった。

 収納魔法陣で異空間にバッタ風スーツを収納するのは簡単だった。

 だがそのスーツを他人が取り出せないようにしたり、スーツを『人が着た状態』にして取り出したりすのは、何度も失敗を重ねた末にやっと成功に漕ぎつけたのだ。


 だがその苦労は今報われた。さあ、バッタ風スーツの力でヤツを倒すのだ。


 俺は模擬戦闘用ロボットに駆け寄りパンチを繰り出した。

 ……あれ? あまり効いてないぞ。くそっ、それならキックだ!

 ……どういう事だ。これもそれほど効いてない。


「どうなってるんだ。パワーは増してるはずなのに!」

『マスター。これはしょせん玩具です。力が五割増しになったくらいでロボットは倒せません』

「ええっ! じゃあ俺の今までの苦労は何だったんだよ!」

『オートモードに切り替えてください。リミッターが解除されるので倒せるはずです』

「筋肉に多大なダメージを与えるんだろ。ううっ、嫌だなあ。……仕方がない。いくぞ! オートモード!」


 言い終わると同時に、俺の体が勝手に動いてロボットにパンチを繰り出した。

 ロボットの腹に穴が開いた。


『次行きます』


 新たなロボットが俺に迫る。俺の体が高くジャンプしてロボットにキックを放つ。

 ロボットがバラバラに四散した。


 その後も次々現れるロボットを次から次へと撃破していった。


『戦闘試験終了です。お疲れ様でした』

「このスーツすごいな。あれだけ動いたのにそんなに疲れてないぞ」

『それはスーツが筋肉に微弱な電流を流して疲労を感じないようにしているんです』

「なにそれ。ちょっと怖いよ。じゃあスーツを脱いだら一気に疲労が襲ってくるのか?」

『疲労はもとより、筋肉の酷使による痛みも押し寄せます』

「はあ、気が重いな。ちょっとだけ脱いでみるか。変身解除!」

『ダメです!!』


 遅かった。ケルビムが制止した時には、既にベルトに変身解除の指示を出し終わっていた。


「あだだだだだだだだだだだだだだ!」


 体中を激痛が走る。俺は悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。

 どれくらいの痛みか確かめたら、すぐにスーツを着直そうと思っていたのだが、とても着直す余裕などなかった。


『だからダメだと言ったのに』


 俺は屋敷から駆け付けたガーデロイドたちに担がれて自室のベッドに運ばれた。

 その後の二日間、俺はベッドから一歩も出られなかった。

 この時ばかりは寝たきりの俺の面倒を見てくれる三人のメイドたちに、ただただ感謝するばかりだった。



 ◇◇◇



「ケルビム。じゃあそろそろ行くよ」

『ブレスレットは付けましたね。銃はちゃんと持ちましたか? 変身ベルトは?』

「お前は俺のオカンか! 大丈夫だよ。フォラントの街は比較的治安のいい街だ。何も起きたりしないよ。流星号も一緒だしさ」

『だといいんですが……』

「三、四日したら帰ってくるよ。さあ流星号、フォラントの街へ向けて出発だ!」

『ラジャー』




 このフォラントへの気晴らしの旅が、アルビナ王国を滅亡の淵へと追いやり、エデン帝国建国の契機になることなど、一体誰に予想出来たであろうか。

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