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第50話 いつもの日常

「オスカー、いい依頼あった?」

「駄目だ。いい依頼なんて全然無いよ。最近ずっとこうだよね」


 ここはフォラントの冒険者ギルド。

 今日も今日とてお金になりそうな依頼を探しに来たのだが、ここ最近は碌でもない依頼ばかりだ。


「また拠点を移さないといけないかも知れないな。どうだろう、そろそろ僕らも迷宮のある街に行ってみないか?」


 迷宮とは地下に作られた魔物の巣窟のことだ。魔素が多く湧き出る土地に出現し、内部では魔物が次々と生み出される未だ謎に満ちた地下の洞窟である。


 本来は忌み嫌われる存在のはずだが、迷宮内では何故か貴重なアイテムが見つかる事が多く、また生息する魔物の種類も多く素材目当ての冒険者たちにとっては貴重な素材供給地なのだ。


「興味はすごくあるんだけど、まだちょっと迷宮は……」


 ソフィーが迷宮を渋っている訳は、知り合いの冒険者から注意を受けたからだ。

 ソフィーの使うファイヤーボールはその威力が強すぎて、迷宮内のような閉鎖された空間で放つと、敵はもちろん味方さえ巻き込みかねないと。

 ファイヤーボールはソフィーが使える唯一の攻撃魔法だ。これを封印されてしまったら彼女は戦いようがない。

 ちなみに彼女の放つファイヤーボールは上位魔法のファイヤーボムさえ上回る威力で、彼女の魔法の威力を垣間見た者からは『爆炎の魔女』の二つ名で呼ばれている。


 今は威力の調整が可能な上位魔法の習得を目指して特訓しているが、未だ習得には至っていない。


「あたしは賛成。でも怖いのも確かだから、迷宮用の装備をタツヤさんにねだってみようよ」


 最近のノーラはタツヤさんから借り受けた銃を腰に差し、目にも止まらぬ早業で魔物を仕留める凄腕の銃士として名を馳せている。付いた二つ名は『神速のガンナー』

 銃を片手に颯爽と戦うノーラの姿はフォラントの冒険者の間でかなり有名になっている。


 僕がソフィーに迷宮の話を強く勧めるどうか思案していると、後ろの方から大きな声が聞こえてきた。


「おい! お前みたいなガキがこんなとこで何してやがる!」


 またか! 最近このパターンが多くないだろうか?


 僕が後ろを振り返ると、そこにいたのは以前初心者冒険者に絡んでタツヤさんに撃退されたチンピラ冒険者だった。彼の背後には前と同じ仲間が二人控えている。

 今日の彼らの被害者は若い少年三人のグループだ。


「ここは子供の遊び場じゃ…」

「バン!、バン!、バン!、バン!、バン!」


 チンピラ冒険者の足元で何かが弾けた。チンピラ冒険者が慌てて足を振り上げ飛び跳ねている。


「タツヤさん!」


 僕の視線の先には、例のウエスタンスタイルとか言う、怪しげな格好をしたタツヤさんがいた。彼はチンピラの足元に銃を向け次々と引き金を引いている。


「さあ、踊れ踊れ! もっと踊れ!」


 チンピラ冒険者の足が床に付くと、その足元へ銃弾が撃ち込まれそれに驚いてチンピラが慌てて足を上げる。まるで踊りを踊っているかのようだ。


「タツヤさん。まずいですよ。ギルド内で武器の使用は禁止されています」

「おお、オスカー、元気だったか? 大丈夫だよ。これは何の変哲もないありふれた魔道具だ。武器などではありません」

「とぼけても駄目ですってば。最近はノーラの活躍で銃がどういう武器か知れ渡っています。ギルド内で彼らに怪我させると大問題になりますよ」


 銃を撃ちまくっていたタツヤさんが『それはまずい』という顔をして動きを止めた。

 だが、すぐにまた素知らぬ顔をして銃を撃ち始めた。


「大丈夫、大丈夫。当たらなければどうということはない!」


 弾は彼らの足元に撃ち込まれているが、確かに直接足には当てていないようだ。

 タツヤさんはもう誰にも止められない。



 チンピラ冒険者たちをギルドから叩き出して、タツヤさんが僕たちの所へやってきた。


「まったく懲りない奴らだな」

「今日はどうしたんですか?」

「前に約束してたノーラの銃が出来上がったから持ってきたんだよ。今度の銃はカートリッジの切り替えが出来ない代わりに、威力と連射性を高めてある。まあこれも試作品だからテストが必要なんだけどな」


 ノーラがタツヤさんに抱き着いた。


「タツヤさん大好き! あたしはもう一生タツヤさんについていく!」

「一生俺に付きまとってたかり続けるつもりか!? なんという恐ろしい娘だ!」

「大丈夫です。私も一緒に付いていきます」

「出たなソフィー。何が大丈夫だよ。俺はお前が一番恐ろしいよ。だが俺も精神を鍛えてきたからな。もう簡単に魔道具を取られたりしないからな!」


 ソフィーとタツヤさんの視線が絡み合う。二人の視線が火花を散らしているようだ。


「ところで僕には何かないんですか?」

「あるある。『変身ベルト、マーク2』だ」

「またですか!? もっと他に何かないんですか!?」

「話は最後まで聞けよ。今度のベルトはバッタの魔物じゃないぞ。騎士風のカッコいいスーツだ。きっとオスカーも気に入るはずだ。おまけにオートモードは抜本的に見直しを行い、体への負担を大幅に軽減させた。もう二、三日寝込まなくて済むようになったぞ」

「えっ! それはすごい! もうベッドの上でのたうち回る必要はないんですね!」

「ええっと……、二、三日が半日にまで短縮された。これでもずいぶん頑張ったんだよ」

「嬉しいような、嬉しくないような……。半日ですか……。確かに二、三日よりはましですが……」

「なに、オートモードに頼らなければいいんだよ」


 タツヤさんが僕たち三人を前にして言った。


「さてと、ノーラの新しい銃のテストも必要だし、他にも新しい魔道具のテストが必要なんだが、君たち今日から三日間、俺に雇われる気はないか?」


 僕たちの顔に笑みが浮かんだ。また楽しい日々が始まりそうだ。


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