第31話 プロローグ
今回は短め。
本編とはあまり関係しないので、読み飛ばしても問題ありません。
ミルドランド大陸の西側に位置するアルビナ王国。
その南端の港町アンデ。
空が闇に包まれ街のあちこちに灯火が灯り始めた頃、事件は起こった。
「ねえディック。今日は空が澄んでて星がきれいに見えるわね」
「ああ、今日は一段ときれいだな。まあ、君ほどじゃないけどね」
「何言ってんのよ」
海岸でいちゃつくカップルが肩を寄せ合って星空を眺めている。
すると突然、夜空に眩い光を放つ星が現れた。
「見て! きれいな星よ」
強烈な光を放ち夜空に出現したその星は、一瞬のうちに水平線の彼方に飛んでいってしまった。
まるで引き絞った矢が、弓から解き放たれて飛んでいったかのような、そんな動きだった。
「流れ星?」
「いや、なんか違ったぞ。不思議な動きをしてたよな?」
星は水平線に消えたが、星の通った軌跡はまだ残光を放っており、空にまっすぐな光の筋を残している。星の軌跡は徐々に光を失い、やがて消えて見えなくなった。
「消えちゃったね」
「流れ星じゃなかったみたいだけど……」
そしてそれは突然起こった。
海の向こう、星が落ちた辺りで、太い真っ赤な火柱が立ち上ったのだ。
火柱はその高さをぐんぐん上げており、天まで届くかの如く上空に向かって伸びてゆく。
「ねえ、何なの? 何が起こってるの?」
「俺にも分かんないよ!」
火柱から放たれるまぶしい光のせいで、周囲の空は真っ赤に染まり、一度は闇に包まれた港町も再び光に照らし出された。
街の人たちは海岸に押し掛け、水平線上に立ち上る火柱をその目にし、恐怖に震えることとなった。
天に向かって伸びた火柱は、翌朝まで消える事なくその炎を輝かせ続けた。
◇◇◇
海の向こうに立ち上った火柱は、アルビナ王国の海岸沿いの各地で目撃され、港町アンデと同じような状況となっていた。
この火柱の件は、直ちに王都ライランドにも伝えられ、調査の者達が海岸地帯に派遣された。だが、火柱は海の向こうで発生し一晩で消えてしまったことから、調査の成果は何一つ得られなかった。
その後、火柱を目の当たりにした人々の間で、まことしやかに一つの噂が囁かれることになる。
『火柱は世界の終焉の予兆である。魔王の復活は近い』と。




