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第30話 エピローグ

 クラレンスは苦悩していた。


 護衛を付けてレマーンに送り出したタツヤが、飛燕騎士団に捕まった。早急に手を打ったつもりであったが、こちらの対応を上回る早さで捕縛されてしまった。

 私の考えが甘かったのだ。


 私はブライアン商会に戻って来た紅い疾風のフリッツから、護衛任務失敗の報告を受けると、彼と今後の対応を話し合った。


 真っ先に行ったのは、飛燕騎士団に対する抗議であった。だが、この試みは失敗に終わった。騎士団の駐屯地でタツヤへの面会と解放を求めたが、返ってきたのは『タツヤなる人物はここにはいない。捕縛を命じた事実もない』という返事だった。


 タツヤが王都に戻ってきた時に、門で対応に当たった門番を探し出し、彼の行方を尋ねた。その結果、王都から馬車で外に連れ出されたという事実は分かったが、その行く先は杳として知れなかった。


 ブライアンに命じ、問題の発端となった雑貨屋店主の調査も行った。だが店主のバックに犯罪組織やその他の組織との繋がりは見つけられなかった。

 店主の持つスキルは、品物の名前や価値を見抜く鑑定系のスキルと判明したが、このスキルには、他人のスキルを見抜く能力は無いようだ。どうやってタツヤの能力を見抜いたかは謎のままだ。


 紅い疾風のステラから、魔力波を使った安否確認の話も聞いていた。


 最初の魔力波による通信は一回だった。「無事」の連絡だ。

 だが、次の日の通信は三回だ。「手出しするな」だ。彼が救援を断る際の連絡だった。

 通信はその二回でパタリと途絶えてしまった。


 調査は完全に行き詰った。タツヤの行方も安否も全く分からないままだ。

 手出しするなとの通信を受けて以降は、表立った調査は行っていない。


 私に出来る事は何も無くなった。


 テレーゼは体調を崩して寝込んでいる。


 彼女は幼い頃、縁あって商会で面倒を見る事にした娘だ。真面目で働き者で、いつも商会に尽くしてくれる優しい娘だ。だが、そのせいで世間との関りに無関心で、友人と呼べる人もいないまま育ってしまった。


 そんな時にタツヤが現れた。テレーゼは無表情を装っていたが、周りの者には彼女の気持ちなど筒抜けだった。だから皆で応援した。


 タツヤがレマーンに戻る事になった時、自分も一緒に帰らせてくれと、私の所に頼みにやって来た。さすがに帰途は危険が予想されるので、護衛のフリッツの了承が必要だと伝えたら、フリッツの所に押しかけて強引に了承を取り付けてきた。


 恋は盲目。もう、あの娘の目にはタツヤしか映っていなかったのだろう。

 そして今、彼女の目の前で想い人は連れ去られ、その消息は途絶えた。

 私はあの娘に、なんと声を掛ければいいのだろうか。


 ◇


 王都に来てから既に十日が過ぎていた。

 タツヤの消息は未だに分からず、調査の進展も見られない。

 私はレマーンの街に帰る事にした。テレーゼにどう伝えるか。気が重い。


「テレーゼ、そろそろレマーンに帰ろうと思うんだが」

「まだ、タツヤさんが見つかっていません」

「分かっている。だが、ここにいても私達に出来る事は何もない。後の事はブライアンに託そうと思う」

「…………」


 辛い決断だったが、テレーゼも最後には納得してくれた。

 翌日、私たちは王都を後にする事にした。


「ブライアン、タツヤさんの事が何か分かったらすぐに連絡をくれ」

「父さん、任せてくれていいよ。目立たないように捜索も続けるよ」

「すまんな。但し危険を感じたらすぐに手を引くんだぞ。いいな」

「分かってる」


 当初の王都訪問の目的、ペットボトルのオークション出品は成功裏に終わっていた。

 落札価格は一本当たり金貨約七十枚。売上をそのままブライアンに預け、今後のタツヤの捜索費用に充てるよう指示してある。


「では、レマーンに帰ろうか」


 ◇


 タツヤは消えてしまった。

 一年待っても帰らなければ、預けた品物を譲渡すると伝言を残して。


 私はそんな物譲ってもらっても嬉しくもなんともない。

 私はただ彼に帰って来てほしいだけだ。


 テレーゼは今でもタツヤを信じて待ち続けている。毎日毎日待ち続けている。


 そして一年が経った。タツヤはまだ帰って来ない……。


第二章はこれにて完結。

長らくお待たせしました。第三章からはロマン兵器の登場(予定)です。

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