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山猫

昨今の動物園は唯動物を檻の中に閉じ込めて飼育するのではなく来園客に動物を身近に感じさせようと創意工夫を凝らしているようだ。

担当者から渡されたパンフレットによるとここでは自然ふれあい餌やり体験という企画を目玉にしているらしい。

都会の人工空間で育った人間に自然の凄さを肌で感じて貰おうというのだろう。

手始めは鶏。乾燥させた玉蜀黍を与える。

続いて兎。小さく千切った玉菜の葉を与える。

次は山羊。まだ仔山羊で草を食べられないので哺乳瓶に入れた脱脂粉乳を与える。

その後牛に塩を与えたり馬に人参を与えたりした。

正直なところ始めは言葉の通じない相手に触れ合うなど真っ平御免だと思っていたが実際に体感すると満更捨てたものでもないと思えてくるから不思議なものだ。

今度の動物でラストだと言われ担当者から鍵を手渡される。

最後は一人で餌やりに挑戦するようにとのこと。

鶏→兎→仔山羊→牛→馬と徐々に体格の大きな動物になっているところからすると象でも現れるのかと胸を躍らせながら檻の中で待つ。

すると奥から虎が現れた。

なにかの手違いだと思い檻から出ようと南京錠を開けようとするがよく見るとそれは入る時に開けた鍵式のそれではなくダイヤル式の別物。

そうこうする内に間合いを詰められる。

虎はいざ獲物に跳びかからんという体勢。

直視に耐えきれず反射的に視線を逸らした時檻の外で担当者が虎と同じ嗜虐的な眼でこちらを覗いているのが見えた。

ここで目が覚めた。

虎になった人間の話は聞いたことが有るが人間に化けた虎が生態系を乱す人間に復讐の刃を向ける話は聞いたことが無い。


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