祭りの後
橙の夕陽が窓から差し込み頬やシャツを朱に染めている。
場所は授業教室。
時刻は夕方五時を回っている。
文化祭実行委員として委員長と二人で文化祭の会計帳簿を記入している。
目線を机の上の領収書と金券の束から逸らし背中を大きく反らせて伸びをすると後ろに雑然と置かれた役目を終えたばかりのダンボール製の模擬店看板やレンタルのバーベキューセットやステージ劇で使った書割や小道具が逆さまに映る。
姿勢を戻すと委員長は眉根を寄せた渋い顔をして右手に持った鉛筆の後ろをこめかみに当てつつ帳簿の数字を睨みつけている。
文化祭自体は三時に終了している。
それにも拘らずこんな時間まで帳簿と格闘しているのは他でもない。
いわゆる勘定合って銭足らずという奴だ。
そして今年の生徒会執行部の会計長は神経質で適当にお茶を濁すことを頑なに嫌うため鐚一文の狂いも許されないと来ている。
更に提出期限が明日昼休みの予鈴が鳴るまでと決まっていてそれまでに提出が無い場合は生徒会の予算として認められない。
つまりクラス全員で自腹を切らねばならなくなってしまう羽目に陥りかねない。
そこへ担任教員が現れる。
こんな遅くまで何をしているのかと訊ねられる。
実はかくかくしかじかでと事情を説明する。
担任は杓子定規な人間の起こす厄介はいつでも真面目な人間に押し付けられるものだと言いながら背広の尻ポケットから小銭入れを取り出すと不足分を机に置く。
呆気に取られていると下らない規則に縛られて貴重な青春を浪費するなと言い残して足早に立ち去る。
目下の懸案事項が解決され一先ず安堵する。
それと同時に普段は生徒指導部長として逆鱗と渾名付けられるほど厳格な担任の意外な一面に戸惑いを隠せない。
ここで目が覚めた。
与えられた役職に義務感を持つことは立派なことだ。
しかしそれを意識し過ぎると却って周囲に迷惑をかけてしまう。
また役職から求められる姿とそれを与えられた人間の性格は別物である。




