分類
大学図書館の二階。
本や書類や文房具が雑然とあるいは整然と積まれた事務机が並ぶ司書室。
その机の一つに向かい新刊に差す用とそれを館内で探す用の二枚のカードを書誌毎に作成している。
定期刊行物なら深く悩みはしないが過去に扱ったことのないような書物には何かと注意が必要になる。
そして先程から一つの論文の分類に頭を悩ませている。
主題が地球の新たなる救世主。
神学か倫理学の論文かと思いきや救いの主は人間に非ず。
副題がミドリムシが環境人口食糧問題解決の糸口となるか。
生物学か地学か経済学なのか。仮に生物学としても動物学か植物学か。
斜め読みしようと思って表紙を捲ると読み方すらわからない記号と複雑な数式の羅列に実験記録と思しき図表に衒学的な用語の連続で五百頁強ある内の二十頁目ほどで白旗を挙げざるを得ない。
そんな奇怪な論文をどうして仕入れたのかと思われるだろう。
別段気紛れを起こした訳でもなくある老教授から購入希望要請が度々出ていたからに過ぎない。
それなら教授が自前で用意すればと思わなくもない。
しかし出版社に見覚えが無いところから推測するに小部数で自費出版かそれに近い形式で出版された値が張る割に利用価値の低い代物なのだろう。
カード作成後にその教授以外にこの論文を必要とする人間が現れることは十中八九無いだろう。
だが図書館司書として入荷した書籍には管理責任を負わねばならない。
仕方ない。ここは教授の専門である線形代数学に配架しよう。
ここで目が覚めた。
分類の枝を細分化すればするほどどの枝にも属さない存在が多くなる。




