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豚と哲学者
アイマスクのようなものを装着させられた状態で片手を牽かれてどこかへ向かって歩いている。
それがどこかは知らないがこれから行く先はとても良い場所なのだという。
暑くもなく寒くもなく毎日齷齪働く必要もなく美味しい食べ物を鱈腹食べられるらしい。
ただし絶対に目隠しを外さないことが条件。
随分と旨い話だ。
純粋で無垢な御目出度い心の持ち主なら素直に従うだろう。
だが荒んだ大人の心には何か裏があるに違いないと思えてしまう。
また天邪鬼が禁忌を破れと誘惑している。
あと少しの辛抱ですからと言われた時とうとう誘惑に負けて空いている方の手で両目に当てられた布をずらしてみる。
そこで視たものは柵の内側で大勢の丸々と太った人間が地べたに寝そべったまま狼が次々と運んでくる食べ物を何の疑いもなく口にしている光景である。
ふと目の前にいる引導役に注目すると手足こそ人間のそれだが頭には獣耳が口元には牙が背後には尻尾が生えている。
折角飢えも自然の猛威も労苦もない楽園に辿り着ける機会でしたのにあなたは考える人間でしたか。
引導役はそう言って指を鳴らすと楽園諸共姿を消す。
ここで目が覚めた。
何も知らないまま何も考えずに盲信して騙されていることは楽な状態かもしれない。
しかしそこに自由はないだろう。




