強迫観念
網戸も閉めずに窓を開けたままにしていると幽界の蝶が舞い込んできて首筋に止まり霊魂を吸い出されて冥府へ連れて行かれてしまうという話を聞いて以来網戸の無い窓が開け放たれていたり道端でひらひらと舞う姿をみかけたりするとどこか落ち着かない気持ちになってしまう。
きっと体内ではノルアドレナリンが多量に分泌され交感神経の働きが活発になっているに違いない。
しかもこれは蝶の大きさや羽の鮮やかさによって反応の大小がある。
紋白蝶ならばそれほど過敏に反応しないが揚羽蝶では道を隔てた先にちらりと見えただけでも心拍数が急上昇してしまう。
理性的で合理主義の醒めた人間ならそんな下らない俗信に惑わされ続けているなんて愚の骨頂だと言って相手にされないだろう。
自分でもこんなことを信じているのは馬鹿げていると思っている。
それでも一度根付いた考えは一朝一夕で払拭できるものではない。
ここで目が覚めた。
果物の種を吐き出さずにそのまま飲み込んでしまうと臍から芽を出す。
夜口笛を吹くと蛇に遭う。
この手の奇譚や都市伝説は何故か廃れることなく一定の周期で流行する。
それらは最終的には一見不可思議だが科学的に合理的説明が可能であるとされるかそもそも全く非科学的で何の根拠もないと一蹴されるかである。
でもそうやって割り切っている科学者が実は心の奥底では誰よりもオカルトを信じている気がする。




