第十三話「Remember」
政府首都アルマ 外縁
『お疲れ様でした、セレス』
ホワイトが上空から舞い降り、正面に着地する。
『あなたが苦戦するとは思いませんでしたが、流石の戦果ですね』
セレスが背の大剣を抜き、刀身に蒼炎を宿す。
「お前を殺して、私の求めた力は完成する」
『ふふ……
彼女はああ言っていますよ、マイグラント。
ええ……』
ホワイトは身体の各部の装甲を展開し、コアから淵源の蒼光を発しつつ、全身に赫々たる炎を纏う。
『あなたと私たち、どちらがより強いのか……
私は純粋に、気になります』
「……!」
セレスが一瞬で踏み込みながら大剣を突き出し、それに伴って蒼光剣が五本飛ぶ。ホワイトは右方向に瞬間的にブーストして回避し、左肩からレーザービットを展開して蒼光剣を破壊してすぐにビットを回収し、瞬間的ブーストで前進しながら左腕の強化パイルバンカーをノンチャージで繰り出す。だが届く前にセレスの姿が消え、後方に双蒼光剣を振りかぶって現れる。ホワイトは胴体のロックを外し、咄嗟に強化パイルバンカーから撃針を射出し、その反動で一気に反転して蒼光剣を撃ち抜き、仰け反ったところに右手のマシンガンを胴体に押し付けて連射する。セレスは瞬時に反応して雷霆に変わって逃げ、ホワイトはビットを展開しながらブーストで一気に接近し、実体化して大剣を振り被るセレスに対して、滑り込むように接近しながら蹴りで大剣を弾き飛ばし、チャージした強化パイルバンカーで撃針を撃ち込んで貫き、セレスを強烈に吹き飛ばす。
「ッ……!」
セレスは左手で地面を削って堪える。
『あなたも戦う時、こう思うでしょう――
もっと、本気で戦いたい、と』
オペレーターの挑発に合わせて竜化し、凄まじい蒸気を発して撹乱しつつ、その向こうから尾を伸ばして狙う。ホワイトは蝿でも払うように強化パイルバンカーで尾先を弾きながら接近していき、蒸気の中から飛び出したセレスのメイスと強化パイルバンカーが激突し、反動で少し浮き上がったセレスが右爪先から蒼光剣を飛び出させて蹴りつけ、返しながら続けて左爪先にも蒼光剣を生み出して連続で蹴りつけ、左手にも蒼光剣を呼び寄せて二連切りをぶつけ、体重をかけてメイスで薙ぎ払う。しかしホワイトは器用に強化パイルバンカーで全て凌ぎきって飛び退きながら、右肩の二連グレネードキャノンを発射する。上部の砲弾が爆発しながら火炎をぶちまけ、続けて下部の砲弾が炸裂して冷気を解放し、それらが融合して巨大な水蒸気となって周囲を遮る。メイスを破却して飛び出し、正確にホワイトを狙って襲いかかると、既にチャージを終えていたホワイトの強化パイルバンカーが見事に胸部を捉え、撃針を射出して勢いで後方に吹き飛ばし、セレスを貫いた撃針が連鎖爆発を起こして追撃する。
セレスは足で堪えて傷を修復し、天を仰いで咆哮し、総身から蒼炎を沸き立たせる。
『怨愛の炎……ですが彼女からは、憎しみは感じられない』
再び真っ直ぐに向けた視線の元、光を発する瞳は、濁った黄金のものへと転じていた。
「ハァッ……」
熱された吐息を漏らしながら、セレスは左手にアッシュの大剣を、右手に蒼光大剣を生み出して握る。
『マイグラント。ええ……しばらく黙っています。
存分に……楽しんでください』
セレスが双大剣を構えて高速回転しながらホワイトに突っ込み、左の大剣を地面に叩きつけ、自身を中心として火炎の嵐を起こす。だがホワイトもまた一歩も退かず、生命エネルギーを変換し、赫々たる炎が混じった強烈な衝撃波を解き放つ。見事に炎の嵐を相殺し、セレスが咄嗟に右の大剣を振っても飛び退いて躱し、だがそのままそれを尾先に連結し、逃げるホワイトを追って連続で振るう。猛攻に対しホワイトが回避に専念しているところに、徐々にステップで詰めていき、最も距離が縮まる間隔より一手早くホワイトが前に詰め、フロントステップを踏もうとしていたセレスが警戒して硬直する。それを待っていたとばかりにビットが一斉に射撃し、肝心のホワイトは後方にブーストしながらマシンガンを連射し、寸分の狂いもない狂気的なエイムで全弾命中させてくる。セレスはその場から闘気を使って滑るように右側の空中に飛び出しつつ、左の大剣の刀身に纏う蒼炎の量を一気に増幅させて回転しながら急接近して二回薙ぎ払う。ホワイトは器用に高度を稼いで一度目の薙ぎ払いを避け、二段目に撃針を射出してセレスの脳天を撃ち抜く。セレスは薙ぎ払いながらも空いている右手で撃針を引き千切りながら急降下して着地しながらホワイトに向きを合わせ、撃針を雷霆に変えて投げる。爆発に合わせて雷霆は分裂し、広く空間を取って構えていたビットを一気に撃ち落とし、拡散した電撃が意思を持つかのようにホワイトへ集束していく。ホワイトは後退しながら左肩のレドームをパージして身代わりにし、セレスが尾先に装着していた剣をアッシュの大剣へ変え、手には改めてメイスを生成しながら飛び上がって詰めにかかる。
「グアアアアアアッ!」
セレスの咆哮とともに彼女の甲殻が淵源の蒼光に染まって重装甲に変わり、ホワイトの放つマシンガンの弾丸を全て弾き返す。ホワイトは即座にマシンガン自体を投げつけながら二連グレネードキャノンを発射し、氷結させてから大爆発させる。しかしそれでもセレスは強引に突破し、メイスを勢いのまま薙ぎ払う。渾身の一撃を強化パイルバンカーで受け止め、セレスはその上で尾をホワイトに巻き付け、力尽くで退避を封じる。
ホワイトが鍔迫り合いに付き合いながら、敢えて見せつけるようにコア部分から衝撃波を放とうとする。それでもセレスは一切退かず、逆に全身から魔力やら蒼光やら、闘気やら何もかもを混ぜ込んだ力を際限なく放出させ続ける。ホワイトは強化パイルバンカーのチャージを開始し、撃針を囲む杭が高速回転を開始してメイスの打面を削り取っていき、そのまま衝撃波を解放する。セレスの全力の膂力でも強烈な威力の奔流には堪えられずに押し返され、崩れたところに強化パイルバンカーを胴体に押し当てられる。杭がドリルのように猛烈な速度で削りながら、撃針が射出されて胴体を貫く。セレスは間違いなく致命的なその一撃を受けながら、メイスに全ての力を懸けてホワイトの左半身を腕ごと叩き潰すように強打する。セレスが撃針の勢いのまま吹き飛ばされ、同時にホワイトの左腕の上腕から引き千切られ、強化パイルバンカーごと宙を舞う。セレスが地面に縫い付けられ、追撃に連鎖爆発を受けて倒れ、程なくしてホワイトが着地する。
『マイグラント。
これ以上の戦闘は、私たちにとっての益はない。
そろそろここからは離脱しましょう。
彼女は……この世界に執着している。
その意思を尊重しましょう』
ホワイトが頷き、もげた自分の左腕を拾い上げて、飛び去る。
「私の……勝ちだ……」
セレスはそのまま竜化を解いて、気絶した。




