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異世界物件のツキモノ  作者: シラ猫
魔方陣

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7/13

1

久しぶりの投稿なんで、登場人物の説明になります

主人公:アリサ

父親:デューク

母親:ミレイア

使用人:ケリー

学友:ルリエ、ラターニャ、キリシア

 ドン! ドン! ドン!


 ベットの中から音がする方を確認すると、隣の空き部屋からだ。


「どうして? だって防音の魔術具を使っておりますのに……」



 少し前までは音がしなくなり、安心していたのに昨日から音がするようになった。耳を塞いでも振動と共に音がするので、頭を布団の中に突っ込んだ。それでも音がするので観念したアリサはゆっくりと布団から顔を出し、魔石が埋め込まれた置き時計を確認する。まだ4時だ。



 いつまで私を苦しめるの?

 静かにして欲しいだけなのに。



 おかしなことに家族の中で音が聞こえているのは私だけだった。

 だからかお母さまは、わたくしが嘘をついているとなかなか信じてくれなかった。


 しつこく言い張っていると、信じてくれる気になったけど、状況は改善していない。


 止まらない音と振動のダブルパンチに、まだ眠いのを我慢して7時までベットの中で過ごした。



 ふと目を開けると、ケリーが側にいて私の身体を揺すっていた。



 どうやら寝ていたのね。

 音もいつの間にか止んでいるし。



 こんな状況がずっと続いていたら、わたくしは病気になってしまう。



 リビングに着くと、両親は朝食を食べるためにアリサの到着を席に座って待っていた。アリサは隣の部屋について尋ねた。


「お父さま、お母さま、それにケリー。誰でもいいですが、お隣に人がいるのを見たことがあります?」


「お隣は居ないって商業ギルドに聞いてるけど?」とデュークがアリサに言ってきた。その後にケリーが淹れたくれた紅茶を飲んでいる。



「私も見たことがないわよ。それにアリサが言う音も聞いたことがないし。一度一緒にお医者様の許にいきましょう」


 ミレイアはアリサが病気だと思っている。幼い子供が体験する不思議現象だと信じ込んでいる。



 アリサは露骨に不満顔に変わる。母親に信じてもらえない事もそうだが、病院に行って治ると思っていないからだ。



「まだ音がするのかい?」


 デュークが優しくアリサに尋ねる。


「ええ、お父さま。今朝なんて4時に起こされたわ。4時よ? わたくしにそんな早起きの趣味なんてございません。本当にどうにかして欲しいです」


「僕は聞こえなかったけどなぁ」


 デュークはこめかみを軽く掻いて、ミレイアを見る。


 視線を感じたミレイアが「私も同じよ」とデュークの意見に続いた。


 ケリーを見ると両親の意見に頷いている。


「わたくしのお部屋はお隣ですもの。お父さま達とは違うわ。もう一度商業ギルドに言ってくださらない?」


「この前言ったばかりだからなぁ。あまり文句ばかり言うと、次何か頼む時に困るかもしれないし」


 デュークは困った顔して、アリサの願いは聞き入れてくれなさそうだ。



 お父さまの言い分は分かりますけど、納得できませんわ。それにこれからもずっと音に悩まされる生活なんてまっぴらごめんだわ。



 アリサしか困っていないので、両親は食事を再開していた。そんな様子にアリサは不満顔だった。


 ★★★


 ルリエ、ラターニャ、キリシア、そしてアリサ。貴族学校に入ってから親しくなった四人は、本日も行動を共にすることが多かった。


 貴族学校は学校のスタイルとして、講義以外の演習や実習に伴うほとんどをグループで進めていくシステムである。これは協調性もそうだが、親しい仲ほど競い合うほど、学力が伸びるからである。授業だけではなく、教室移動などの休憩時間も一緒で、自然とおしゃべるする時間が多くなる。


 リーダーであり物怖じしないルリエ、四人の中でさらに二人でつるむことが多い平民のラターニャ、キリシア。大人しいアリサは何となく三人の傍にいるだけで、まだ少し人見知りを引きずっていた。


 四人のバランスとしては、アリサがおとなしめの存在でいるのが丁度よかった。アリサが自分から話題を振ることはほとんどなく、他の三人のおしゃべりを「そうだね」と返事したり、「うんうん」と頷きながら聞いている事が多かった。


 取り留めないおしゃべりの中で、集合住宅の噂話のその続きが、話題に出ることはなかった。色々と知っていそうなラターニャとキリシアも、あれから一度も集合住宅の名を口にしない。よくある幽霊の噂話を引っ張る気はないのか、アリサの知らないところで貴族のルリエにクリプトについて話を聞いたのか、敢えてそれを確認するつもりはなかった。



 現にもう住んでいるのだから、怖い噂なんて聞きたくないし、それよりも今アリサを悩ませているのは、幽霊ではなく、隣の部屋から聞こえる壁を叩く音なのだ。

 これ以上、不安材料を増やすのは勘弁して欲しいと心底思っている。


「学校終わったら、近くにあるお茶屋さんに寄っていかない?」

「さんせー。お母さんに聞いた旬なフルーツを使ったデサート食べたかったの」

 ラターニャとキリシアが盛り上がり、ルリエも賛同していた。


「アリサ様はどうされますの?」


 ルリエに問いかけられたアリサは「今日は遠慮しますわ。家でやることが残ってますので」と、やんわり断った。


「分かりましたわ。アリサ様、また明日お会いしましょう」

「アリサ様、またね」

「またです」


 ルリエ、ラターニャ、キリシアが順にアリサに挨拶を済ませると、よほど楽しみにしてたのか、勢いよく教室を飛び出して行った。



 言葉に出してないが、アリサは旬なフルーツを使ったデザートにかなり心が引かれていた。とはいえ、まだ慣れていない環境と新しい友達との交流、頼んでもいない早朝に起こしにくる隣からの音に、アリサは疲れていた。三人と別れゆっくりと自分のペースで帰路についた。


 ぼんやりと集合住宅の敷地を歩いていると、人影が見えた。先日見かけた女の子の姿があった。この前と一緒で今日も地面に絵を描いている。近くに公園があるのにそこに行かず、なぜ一人で遊んでいるのかアリサは不思議に思った。


 女の子がアリサの視線に気づいて顔を上げた。


 少し嫌な感じがしたのだが、仲良くなれたらいいなと期待をしながら歩み寄り、アリサは女の子に声を掛けた。


 それがさらなる恐怖になることも知らずに。


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