表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】パン屋の娘とスープ屋の息子、令嬢と王子の恋を守るため偽装カップルになりました  作者: もくずしょい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/12

いざ、ドラゴン(と聖女)よ、勝負!

ついにドラゴンとの戦いの日となった。

斥候によれば、ドラゴンは前情報と同じ位置に留まり、特に大きな行動は起こしていないとのことだった。

近くで火を起こして刺激するのは良くないため、あらかじめ作っておいたパンなどで腹ごしらえを済ませる。


出発前の最終確認をしていたユシリスと将軍たちの場で、

聖女アユナが突然「戦いの場に自分も同行する」と言い出し、皆を驚かせた。


「聖女様、後方で怪我人の手当を優先してください」


「いえ、私は聖女。ドラゴンの悪しき部分を見破れるかもしれませんわ」


「ドラゴンがどれほど強いか未知数です。お守りしながら戦うのは得策ではありません」


ユシリスがどれだけ言っても、アユナは一歩も引かない。

場の空気がじわじわと悪くなっていく。


「……戦場では私の指示に従ってもらう」


「殿下、ありがとうございます!必ず役に立ってみせますわ!」


ユシリスの苦々しい表情とは逆に、アユナは上機嫌に微笑んだ。


こうしてユシリスとアユナを含む本隊はドラゴンの元へ向かった。

ミールとシムレルはそれを見送り、本隊から怪我人が運ばれてきた時の準備や、軽く食べられる物を用意する。


「殿下たち、無事に戻ってこられますように」


「ああ。僕たちは僕たちにできることをしよう」


二人はそれぞれの作業に戻っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「前方にドラゴンの姿を確認しました。蹲って寝ているようです!」


「よし、チャンスだ。計画通り、弓部隊を横一列に配置。すぐ後ろに長槍部隊をつけろ」


「は!」


緊迫した空気が辺りを包む。

人員の配置が整ったのを確認し、ユシリスは弓矢攻撃の合図を出した。


シュパン、シュパン、シュパン――!


次々と弓が放たれる。

ドラゴンに当たるが、遠目で見る限り、どれも刺さってはいない。

鱗が強靭なのだ。


ドラゴンは衝撃で目を開け、ゆっくりと立ち上がった。


「……これは大きいな」


予想以上の巨体に、ユシリスはゴクリと喉を鳴らす。

ドラゴンが羽ばたくと、その風圧がユシリスたちの位置まで押し寄せた。

そしてドラゴンは飛び上がると、弓部隊のすぐ前に着地した。


「弓部隊退避! 長槍部隊、つけーーー!!」


長槍部隊が一斉に攻撃するが、まったく歯が立たない。


(これほどまでとは……)


ユシリスの頬を汗が伝う。


その時、後方にいた聖女アユナが突然叫んだ。


「私には見えます! 喉の下の鱗に邪悪な光が! そこが弱点です!」


(なに……?!)


アユナは自分に心酔している護衛たちに、喉元を狙うよう命じた。

護衛たちは戸惑いながらも、聖女に懇願されると剣を抜き、ドラゴンへ突進する。


「勝手なことをするな!!」


ユシリスが止める声も届かない。

護衛たちは突進し、何人かは尻尾で叩き落とされ、地面に強く叩きつけられた。


そして最後の一人の剣先が、運よく喉元の鱗の隙間に刺さった瞬間――

ドラゴンは怒り狂ったように咆哮した。


「い、一体どうなって……」


アユナはガクガクと震え出し、近くの馬を奪うと、

我先にと逃げ出した。


「あ……聖女さま……」


傷ついた護衛たちは、その姿を茫然と見送るしかなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミールとシムレルたちは昼食を先に済ませ、後々の事態に備えようとしていた。

余っていたナッツのパンを頬張るが、やはりユシリスたちのことが気になり、ソワソワしてしまう。


「殿下たち、大丈夫かな……」


「殿下もパネラ様のことを思い出したら百人力さ」


「それはそうかも」


ミールがシムレルの気遣いをありがたく思っていると、

遠くからバッサバッサと大きな羽ばたき音が近づいてきた。


「お、おい……あれを見ろ!!」


調理係の一人が空を指さした。その先には――


「ドラゴンだ!!」


「え?!」


最初は点のように小さかった影が、どんどん大きくなり、それがドラゴンだと明らかになった。


さらに視線を落とすと、馬に乗った誰かが死に物狂いでこちらへ向かってくる。

ドラゴンはその馬を追いかけている。


後方部隊はパニックに陥り、皆が三々五々に逃げ出した。


「ミール! 早く逃げないと!」


「う、うん!」


しかしミールの足は恐怖で固まり、動かなくなってしまった。


「ご、ごめ……私……」


「落ち着け。一緒にいるから」


シムレルが手を貸し、ミールはなんとか立ち上がる。


そこへ馬に乗った聖女アユナが

「邪魔よ!! どきなさい!!!」

と叫びながら突進してきた。


シムレルはムッとして、持っていたお玉を思いきり投げつけた。


「邪魔してんのはどっちだよ!!」


お玉はスコーンと聖女の額に命中し、

アユナはのけぞって落馬した。

馬は聖女の落馬など気にも留めず、そのまま走り去っていく。


「い、痛っ……なにすんのよ!!」


「それはこっちのセリフだよ! ドラゴンに何して追いかけられてんだよ!」


その瞬間、ドラゴンが三人の目の前に降り立った。


「「「あ……」」」


あまりの恐ろしさに三人はピクリとも動けない。

ドラゴンは低く唸り、一人ずつ顔を見回す。

牙の間からツーッと涎が垂れた。


(((もう駄目だ……)))


シムレルとアユナは目をつむり、その時を待った。

しかしミールだけは、ドラゴンの視線が自分の作ったナッツパンから動いていないことに気づいた。


ジーッと、その視線はパンに固定されている。


(も、もしかして……食べたいのかな……?)


ミールはすぐ横にあったナッツパンの籠を、

ドラゴンと自分たちの間にそっと置いた。


ドラゴンは籠に鼻先を近づけて香りを嗅ぎ、

器用に爪で籠を引っかけて持ち上げると、

ザラザラと口の中へ流し込んだ。


そして飲み込むと、

「まだある?」と言いたげな顔でミールを見た。


「シムレル……パン、食べたいみたい。一緒に運んで」


「……な、なんだって??」


ミールとシムレルはテントに入れていたナッツパンの籠をすべて持ってきて、ドラゴンの前に置いた。


ドラゴンは先ほどと同じようにペロリと平らげると、目を細めて満足そうに微笑み、

元いた場所へ飛んで戻っていった。


ミールとシムレルが腰を抜かして座り込んでいるところへ、ユシリスが本隊を率いて戻ってきた。


「お前たち、大丈夫か?! 聖女は?!」


「……聖女様なら、そこで気を失ってます……」


ミールとシムレルもそれだけ言うと、バタッと倒れ伏した。







面白い、続きが気になると思ってくださった方は、下にある【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると嬉しいです!読者の皆様の評価やブックマークが、執筆の大きな励みになります。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ