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「精霊が見えるのは俺だけ、魔力ゼロの少女と始める異世界スローライフ」  作者: れいじ


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第8話 騒がしい山と掴んだ欠片

逃げたままでは終われない。

足りないなら、掴みに行く。

今度は――持って帰るために。

朝の空気は、どこか張りつめていた。


 シュンはすでに山の入り口に立っている。


「……今日で決める」


 小さく呟く。


「ほんとに行くんだね」


 アイラが少し不安そうに言う。


「ああ。昨日のままじゃ終われない」


 あの感覚。


 一瞬だけ、違う力が重なったあの瞬間。


 あれをもう一度掴む。


 それだけだった。


「無理はしないでね」


「できる範囲でな」


 短く答え、山へ踏み込む。


 空気が変わる。


 静かすぎる。


 音が吸い込まれるような感覚。


 その瞬間、頭の中が騒がしくなる。


〈ライオス〉「いいねえ、来た来た!」

〈ノクス〉「警戒しろ」

〈シルフ〉「風が変だよ」


「……わかってる」


 小さく返す。


 アイラには聞こえていない。


 この会話は、シュンの中だけのものだ。


 少し進んだところで、足を止める。


「……あったな」


 岩肌に混ざる光。


 鉱石だ。


「それ?」


「ああ、これで間違いない」


 しゃがみ込む。


「少し下がっててくれ」


「うん」


 アイラが後ろに下がる。


「……ガイア」


 名前を呼ぶ。


 空気が重くなる。


 地面がわずかに震える。


〈ガイア〉「任せろ」


 岩が滑るように割れていく。


 必要な部分だけ、綺麗に。


「やっぱり便利だな」


〈ライオス〉「地味すぎる!」

〈フローラ〉「いいと思う」


「これでいい」


 鉱石をいくつか拾う。


 その瞬間だった。


 ぞわ、と空気が揺れる。


「……来る」


「え?」


 草が揺れる。


 飛び出してきたのは、苔に覆われた狼。


「また……!」


 だが数が違う。


 明らかに多い。


「囲まれてるな」


 さらに、足元がわずかに動く。


「……下もかよ」


 岩殻虫。


 完全に挟まれている。


「シュン……!」


「下がれ!」


 短く言う。


 すぐに動く。


 ガイアで地面を盛り上げる。


 壁を作る。


 だが、数が多い。


 苔狼が一斉に飛びかかる。


 避ける。


 だが追いつかれる。


「くそ……!」


〈ノクス〉「右、三」

〈シルフ〉「後ろ!」


「わかってる!」


 だが間に合わない。


 さらに、岩殻虫が動く。


 突進。


「っ!」


 避けきれない。


「……ガイア!」


 地面が盛り上がる。


 衝撃を受け止める。


 だが――


「硬すぎる……!」


 攻撃が通らない。


 押し込まれる。


 囲まれる。


「……やばいな」


 呼吸が浅くなる。


 その時だった。


「シュン!」


 アイラの声。


 振り向く。


 不安そうにこちらを見ている。


 その瞬間――


 あの感覚が戻る。


 守る。


 それだけでいい。


「……一瞬でいい」


 呟く。


 ガイアで動きを止める。


 そして――


 頭の奥が熱を帯びる。


「……!」


 拳を叩き込む。


 バキッ、と音が響く。


「……割れた?」


 自分でも驚く。


 硬い殻に、ヒビが入っている。


 だが次の瞬間、力が抜ける。


「っ……!」


 膝が揺れる。


「シュン!?」


「大丈夫だ!」


 無理やり立ち上がる。


 完全じゃない。


 だが、通じる。


「今だ!」


 鉱石を掴む。


 持てる分だけ。


「逃げるぞ!」


「うん!」


 二人で走る。


 背後の気配は追ってこない。


 山の外へ出る。


 空気が軽くなる。


「……はあ」


 大きく息を吐く。


 手を見る。


 鉱石。


 確かにある。


「……取れたな」


「すごい……!」


 アイラが嬉しそうに笑う。


「さっきの、すごかった」


「……そうか?」


「うん。なんか……いつもと違った」


 シュンは一瞬だけ黙る。


 やはり感じている。


 だが、見えてはいない。


「気のせいだ」


 短く返す。


 だが内心は違う。


「……今の」


 確かに重なった。


 ほんの一瞬。


 もう一人の力。


〈ノクス〉「再現できるか」

〈ライオス〉「できるだろ!」


「……どうだかな」


 小さく呟く。


 山を見る。


 まだ終わっていない。


 だが――


「次はもう少しやれる」


 確信だけはあった。

読んでいただきありがとうございます。

設定を守りつつ、しっかり前進できました。ここからさらに成長していきます。続きをお楽しみください。

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