30.ハッピーエンドまたは思い出したこと
祝福の鐘の音が鳴り響いた。
私は傍らに立つエルさんを見上げる。
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獣人の国アニサンブラでの騒動が片付いてから、人間のエルさんと一緒にアイステリア王国のダンジョリアの街に戻ってきていた。
ダンジョリアの街の入り口を通過する時、また犯罪歴をチェックする魔道具の水晶玉に触れたけど、水晶玉は赤く光らなかったし、ダンジョリアに初めて来たときのように白く光った。
戦争で多分、相手をどうにかすることも多かったはずのエルさんも赤く光らなかった。
「うん、赤く光らないから犯罪歴無し。白く強く光るから魔力は多いし、むしろ増えたみたいだね」
門番がそんな私たちをニコニコと笑って見守ってくれている。
私は異世界だからそんなこともあるのだろうと笑って街の門を通過したけれど、エルさんは複雑そうな表情だ。
ギルドに戻ると、レアボスの件を途中で放り出していった私たちだったが、戻ったことをとても歓迎されて、ランクは以前のままで続けることになった。
「リアさんとエルさんのパーティーでしかレアボスは出ていないし、パーティー『黒の炎』さんの堅実な収益は本当にギルドに寄与してくださっていて、ずっと帰ってきてくださるのを待っていましたー」
おなじみの受付嬢ミレーネさんがうっすらと涙ぐみながら私たちを迎えてくれた。
なんなら私の両手はミレーネさんにがっしりと握られていて、もう離すまいみたいな強い意志を感じる。
エルさんから圧を感じてちょっと横目で見ると、柔らかく微笑みながらも握り合う手を見るエルさんの目が少し笑っていなかった。
本来なら獣人は、たとえ同性でも番と他人がべたべたするのをすごく嫌がるらしい。
でも、これは仕方なくないだろうか??
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エルさんは、私の話を馬車から獣人の国でまで色々聞いて考えてくれた。
そして、私も他の獣人の人の話も聞いた。
それに加えて、獣人のミハエルに人間のエルで居てほしいエゴも聞いてくれた。
人間のエルさんに対して、恋心を抱いていたことも告白した。
「リアさんの傍にいられるなら、僕は騙していた事の贖罪も含めて、ずっと人間でいることになんら躊躇いを感じません」
「私がピンチになってももう獣の姿に戻らないことも約束してくれる?」
私の言葉に、ミハエル……エルさんは、少しの沈黙の後に深く頷いてくれた。
「獣人である自分を捨て、人間としてずっとリアさんの傍にいます。ありがとうございます。僕を傍に置いてくれて」
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エルさんと私は、ダンジョリアの街でまた堅実に冒険者をした後(余談だが、レアボスの検証は進んで、変身してパワーアップできるものやパワーアップ系のスキルを持っているものの前にレアボスが低確率で出現することが分かった)、ギルドの支援や補助もあって、ダンジョリアの街に手ごろな一軒家を建てて結婚することにした。
ダンジョリアの街の一番大きな聖堂で、盛大な結婚式を挙げることになった。
「二人ともおめでとうございまーす!」
「おめでとう」
「幸せになれよー!」
今までお世話になったギルド職員や冒険者の人たちが集まって、私たちを祝福してくれる。
ダンジョリアの街で信仰されている神についてはよく分からなかったけれど(前世でも結局神様とかとくによく分からなかったし同じようなものだと思う)、異世界での永遠の愛を神様に誓った。
「愛してます」
「私も」
そして、聖堂で皆に祝福されながら、エルさんと初めてキスをした。
前世も含めて、好きになった人とキスとかはしたことがないので、初めての経験に感動というよりも心臓が痛く、びっくりして少し涙が出た。
そしてエルさんを目を開いてみたら、滝のような涙を流していてさらに驚いた。
その様子に、なんでか胸がキュンとした。
順調に私の恋心は育っているみたいだ。
穏やかで優しいエルさんの事を、ほのかに好きで、一緒にいるととても楽で、悠々自適な老後の為にもエルさんに一緒にいてもらおうと思った。
そして…………………これは誰にも言っていない私のずるい考えなのだけれど、私はエルさんに獣人である自分を捨てろと言っている割には、その特性を利用している。
前世でも早々に家を出て好きな人はできなかったし、今世では母は早々に死んで父も私の事を好きじゃなかったみたいだ。
でも、獣人のミハエルは私がどんなに手ひどい拒否をしても、例え私がミハエルを愛してなかった時も、私がどんなに遠いところに行っても、私が私であるというだけで、私を愛してくれる。
人間という事では得られない愛を、獣人が人間の形をしていつまでもずっと愛してくれる。
愛し方は私が教えればいくらでも修正してくれる。
私はその降り注ぐような愛に、少しずつ返していけばいい。
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ふと、結婚式の最中で気づいた。
もちろん、ずっとお世話になっていたギルドの受付嬢ミレーネさん。
今日も結婚式には出席してくれて、そのあとの皆でのレストランでのパーティーにも来てくれていた。
いつもの受付嬢の服装ではなく、式を盛り上げるようにおめかししてきてくれている。
ミレーネさんは、前世の後輩のようにとても大きなリボンをつけていた。
それがとてもかわいくて、落ち着いたダークレッドの赤いリボンがとても似合っていて、私は前世をまた思い出した。




