31.前世について思い出せていなかった事
完全蛇足だったかもしれないけど、でもこの話置いときます。
「せんぱーい!! しっかりしてください! 私と一緒に、企画をやるっていったじゃないですかー!」
痛みの中でどこからか声が聞こえる。
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そうだった。
前世、私はトラックがバスに突っ込んできた事故で死んだわけではなかった。
あちこち骨折して、頭を打ったもののなんとか意識を取り戻せて、病室で初めて見たのはリボンをつけていない後輩の姿だった。
大きな目から涙をいっぱい流して、私の手を離すまいと強く握っている。
病院での生活が長くなっても、後輩はずっと病院に通ってくれた。
「せんぱい! 何か必要なものはありますか? 洗い終わった下着とタオルもって明日も来ますから」
「ありがとう。本当にごめんなさい」
事故で運び込まれた病室に、できる限り付き添ってくれて、何かの処置が必要な時には姿さえ見せない私の両親の代わりにあれこれやってくれた。
時には書類にどうやったのか、私の両親のサインをもらってきてくれたらしい。
「前も言いましたけど、私、本当にせんぱいの事尊敬してます! 後、元気になったら、私と一緒に企画をやるの忘れないでください!」
「もちろん! 頑張らせてもらうね!」
リハビリまでかかってようやく会社に復帰した後は、これまた後輩によって会社に私の席はキープされていたことを知った。
職場の上司は、私の休職中に他の人たちへのパワハラで自己都合退職になったことを知った。
新しい上司は厳しくも無理のないようにしっかりやる女性に変わっており、私の事も気遣ってくれ、
「今までの実績から見て、期待しているから」
と言われ、私の隣には自分の事のように喜んでニコニコしている後輩がいた。
後輩とプロジェクトを進めた『ワタオオカミ』の作者の新作であるファンタジー日常物小説は、地域も含めた大盛り上がりになり、地域振興に貢献したとして自治体から後輩と一緒に表彰された。
そのどれもの場面に私の隣には、大きなリボンを頭につけてニコニコしている後輩がいた。
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「私、おおまかな企画はできるんですけど、先輩がやるように細かなスケジュールとか段取りとかが苦手で、本当助かりました」
自治体から表彰された日、打ち上げの居酒屋で改まって後輩にそう言われた。
「それなら良かった」
私は、後輩の大きな信頼に成果を返せているのだろうか。
困って少し首をかしげる。
「あ、そうだ。そういえば、今だから言いますけど、先輩の仕事横取りしたって噂の他社の男、全然自分の力で仕事できなくて、先輩の時のように他の人にも同じような事をしようとして、退職になって今は田舎の実家に帰ったらしいです」
「帰る実家があって良かったわね」
「もちろん実家ではこき使われて、物置に住んでるらしいですよー。男の地元に友達いるから聞きましたけど、げっそりやつれてブツブツ何か呟いてて周りからキモがられてるらしいですー。先輩の事、本当に反省しているといいなー、って私思っちゃいましたー。あははー」
私性格悪いですかねー、と言いながら後輩が生ジョッキのビールをあおる。
「ううん、ありがとう」
私は、後輩の気持ちを受け取って首を振った。
………しばらく取り留めのない話が続いた後に、後輩が意を決したように少し赤い顔で私を真剣に見る。
「それで………、先輩。相談なんですけど、今世ではいったん男を諦めて、私と一緒に暮らしませんか?」
「いったん?」
私は突然の話に目を丸くする。
「そう、いったん。やっぱり人間の男は古いですよ。ここは私と楽しく暮らして、恋愛は来世という事で」
「来世………?」
「そう、来世。獣人の狼さんとかとどうですか?」
「酔ってるのね?」
私の問いに、後輩は赤い顔で酔ってません! と宣言した。
「先輩と今世は仕事バリバリして楽しく暮らしたいです。来世はさすがに譲ります」
後輩の真剣な顔に、私は思わず頷いた。
途端に後輩の顔がパアッと輝く。
「分かった。じゃあ、よろしくね。恋愛は来世にするわ」
「ふふっ、じゃあじゃあ、先輩は『ワタオオカミ』のヒロインですね。私も絶対同じ世界に生まれて先輩にまた会います」
「ヒロインか。私がなれるか分からないけど、来世は恋愛できるように努力しようかなー」
そんな居酒屋での雑談が最高に楽しかった。
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私は、前世を普通に後輩と人生を楽しんで(結婚もしなかったし、子供もいなかったけど幸せだった)……。
そして、望んで、ちょっと考えなしに小説「家族に虐げられていた私ですが、迎えに来た番と幸せになります~私と狼さんの幸せな結婚生活~」のヒロインに生まれてきたのだった。
-おわり-
(後輩ちゃんは、今世受付嬢ミレーネさん時にはちゃんと受付嬢としての身だしなみを考えてリボンつけてなかった。前世も病院のTPOを考えてリボンしてなかった)
色々気になるところとかはあるとは思いますが、これで書きたかったことは書いたので終わります。
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