25.狼なのか人間なのか(エルの視点)
パーティー『黒の炎』結成から、リアさんとはとてもうまくいった。
リアさんは、堅実な人柄で無理のないようにダンジョンを一緒に進んでくれる。
ずっと仲間として大事にしたいと思う。
そう、そして………いつからだろう。
仲間としてと思っていたけれど、この街の近くで起こったスタンピードをきっかけに自分が仲間以上にリアさんを大事に思っているということが分かった。
もちろん、仲間としての対等な関係を崩したくないから、特別な関係を迫ったりしない。
リアさんが穏やかな生活を望んでいるのは見ていれば分かる。
僕は人間だから、一方的な気持ちの押しつけはしない。
スタンピードでリアさんが倒れるという事件はあったものの、回復まで仲間としてリアさんを支えたし、そんな穏やかなリアさんとの生活はとても充実していた。
ギルドでリアさんと待ち合わせて、パーティー任務をこなしたりダンジョンを攻略すると、僕の視線の先にはいつも楽しそうに笑うリアさんがいる。
それだけで僕はとても幸せだった。
そう、それだけでよかったのに。
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「うわあああ!!! リアさん!!」
僕は悲鳴を上げながらベッドから飛び起きた。
周りはまだ暗い。
ベッドサイドの時計は夜中を指し示していた。
周りは何の変哲もないいつもの長期滞在している宿屋の部屋が見える。
最近、いつも見る悪夢で夜中飛び起きることが続いてた。
昼にリアさんと楽しい冒険をして、充実した一日一日を過ごせば過ごすほど、夜に…………酷い夢を見る。
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『アメリア、愛している』
夢の中では、リアさんはなぜか灰色の古ぼけた服を着て、死んだ目をしていた。
僕は、リアさんを何故かアメリアと呼んでいる。
そして、僕は一匹の大きな狼になっていて、頭からバリバリとリアさんを食べようとするのだ。
好きで愛していて、リアさんを自分だけのものにしたい衝動が抑えきれなくて。
そんな僕に軽蔑と恐怖の視線を向けるリアさん。
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……僕はリアさんに嚙みつこうとする寸前で、いつも目を覚ます。
そんなはずはないことを確認するためにベッドサイドに置いている小さな手鏡で、自分の顔を確認する。
僕は人間だ。
狼なんかじゃない。
夢の中で狼になっている間、自分の気持ちは少しもコントロールできていなかった。
僕はリアさんが大事だ。
リアさんの気持ちを大事にしたい。
自分の気持ちを押し付けることはしたくない。
僕はリアさんを大切に思い、そしてリアさんにもいつか欠片でも同じような気持ちを返してもらえる。
そんな未来を目指して。
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……そして、そんな日々の折に、一通の魔法の手紙が届いた。
宛先の人物がどこにいても届く魔法の手紙。
封筒に送り主は書いていなかった。
でも、魔法の手紙だから僕に届いたということは、僕宛だ。
僕は何か嫌な予感を感じて、震える手でゆっくりと手紙を開けた。
『ミハエル・ミスト・シルフィへ告ぐ。戦争発生。至急帰れ。貴族としての責任を果たせ』




