19.異世界の娯楽って?
スタンピードの後の魔力酔いの後、十分な休養を取ってから冒険者の活動に復帰することをミレーネさんから提案された。(もちろん、その間は収入が減るので無理にとは言わないけれど…………とも付け加えられた)
ギルド専属のお医者様も同じことを言っていた。
私が休んでいる間は、エルさんが、
「パーティー仲間が休んでいる時のフォローは任せてください!」
と言って、ゴーレムが出ている階より浅い階層でモンスターを大量に狩ってパーティーとしての収入を維持してくれた。
……と、言っても気ままな冒険者だ。エルさんも休んでよかったのにとも思うけど、
「万が一僕が休む時にも困らないように稼いでおきます! あまり動かないと体がなまってしまいますから」
と言ってシャカシャカ動いてソロ活動をしている。
後、夕方ごろには休んでいる私の所にやってきて、魔力を流す紐を繋いで、私の魔力を安定もさせてくれるので、本当にエルさんには頭が上がらない。
いつの間にか、正式なパーティーになっていたし、エルさんは私で良かったのだろうか。
魔力酔いで私が動けないなら、パーティーは解消でよかったような気もする。
自分の分の生活費は、今までの活動分で賄える計算だ。
だからエルさんがパーティーの共有財産として一人で稼いで私のギルド口座にもお金を入れてくるのは心苦しい。(エルさんが自分の分の生活費、パーティー活動維持費、私の口座にも生活費としてお金を入れるという大変な事をしている)
ある日、休んでいるとそんな弱気な考えになって、お見舞いに来てくれたエルさんについ甘えて聞いてみてしまった。
「他の人とパーティー組みなおした方が稼げるんじゃない?」
って。
そしたらエルさんは、
「えっ??」
って鳩が豆鉄砲食らったような顔をして固まった。
まるでそんなこと考えたこともないって顔だった。
「………………僕たち、仲間ですよね?」
「そ、そうだよね。弱気になってごめん。エルさんが私の事仲間だって思ってくれてるのは分かってる。甘えてごめん」
「あっ、甘えてくださったんですね。僕の方こそすみません。また拒否されたのかと、いやっ、あのっ。甘えてくれてありがとうございます。そうだっ! そろそろリアさんの体も良くなってきたってミレーネさんも言ってましたし、明日は一日、町の中心街の方で遊びませんか? 『春服が良いの並んでました』ってミレーネさんが言ってましたよ」
私の取り繕うような謝罪に、エルさんが慌てて色々言葉を尽くしてくれる。
甘えたやつに、なんてエルさんは優しいのだろう。
「途中で疲れちゃうかもしれないけど、散歩程度なら」
「もちろんです!」
私たちは顔を見合わせて笑いあった。
――次の日。
私が待ち合わせ場所のギルドの前に行くと、もうそこにはエルさんが来ていた。
「待たせた?」
「いいえ、全然待ってないですよ、って………………え?!」
道を眺めて立っていたエルさんが私の方を向くと、驚いたように真っ赤になって固まった。
「あ……おしゃれなんて人生で初めてさせてもらったんだけど、どう……かな?」
エルさんの驚いたような視線を受け止められなくて、足元に視線をやると、そこにもミレーネさんから借りた華奢なストラップのサンダルがあった。
前世でファッション系の情報を発信していた割には、今世のファッションは何も分からない。
いつもギルドの皆と食事に行くときの普段着を着ていこうとしたら、ミレーネさんに、
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と止められた。
そして、ミレーネさんが貸してくれた服を着たというわけだ。
確かにファッションに興味がある人の服装ではなかったかもしれない。
今の私の服装は。裾に細かい細工のレースが付いたクリーム色のシャツワンピースだった。
(ミレーネさんに聞いたら、手編みのレースではなく魔導機械で編んだ機械編み(?)の安いレース、だそうだ)
「かわいいです。…………とても」
「あ…………エルさんも、その、かっこいいね」
エルさんは黒に近いダークな色のスラックスにシャツそしてベストを着て、非常にシックにまとめていた。(もちろん長剣は背負ってなかった)
「ありがとうございます。実はミレーネさんから、リアさんがおしゃれしていくから僕も合わせた方が良いとアドバイスをもらっていたことを告白します…………」
「私たち、めっちゃミレーネさんにお世話になってるね」
「ですね」
「今日はミレーネさんにたくさんお土産買おうかな」
「そうしましょう」
元々、ミレーネさんにはお礼を買おうと思っていたけれど、私たちはお世話になりっぱなしだ。
本当に感謝しかなかった。
二人で中心街の通りを歩きだすと、今日はやたら冒険者ギルド所属と思われる人たちが道を歩いていた。
後、いつもより人通りが多い。
時々、人の波に流されそうになる私をみかねて、エルさんが手を繋いでくれた。
「……手を繋ぎましょうか?」
とおずおずと申し出てくれたエルさんにドキッとした。
前世も含めて男の人と改まって手を繋ぐなんて初めての事だ。
エルさんの手は少し汗をかいていた。
エルさんと手を繋ぎながら、異世界のファッション巡りは楽しかった。
異世界のファッションは機能的でありながらも、そもそも日本で書かれた小説の世界だからか、ファッションが日本と似ていて面白かった。
見ていると、前世の名残でファッション記事を書きたくなった。
なんやかんやで、エルさんは私に色々な服を試着してもらいたがり、そして、
「服をプレゼントさせてください!」
とすごい勢いで言ってくるので、これから仲間としてお返しできる機会もあるだろうと、お言葉に甘えてプレゼントしてもらった。
すると、エルさんがプレゼントした側なのに、すごくうれしそうに幸せそうに微笑むのだ。
更に、エルさんは私をよく見ていて疲れてきたな、と私が思った絶妙なタイミングで喫茶店に入る。
喫茶店には、これまた日本で書かれた小説の世界だからかあるアイスコーヒーフロートを頼む。
アイスを食べたり、コーヒーを飲んだりする私をエルさんが、目を細めて幸せそうに見つめてくる。
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………………………………、
さすがに私にもわかった。
この短時間で分かる。
多分、うぬぼれじゃない。
私は照れくさくて目を反らした先に、小さい犬を散歩させている人が居て熱心に犬を見ているふりをした。
まあ、犬は可愛いけれどそうじゃない。
――エルさんは私のことが好きなんだ。
「……リアさんは犬が好きなんですか?」
何故かエルさんが私の視線が外れたからか、ちょっとすねたような声で聞いてくる。
「……うん、まあ」
私は観念してエルさんに視線を戻した。
「そうなんですね……犬、かわいいですしね」
エルさんの私への幸せそうな視線は結構ちゃんと見ると露骨だった。
……え、でもいつから私の事好きなんだろう?




