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ドアマットヒロインに番と名乗る獣人がやってきた。あなたの番が迎えに来たって? 番ですか、そうですか。さようなら  作者: ひとみんみん


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18/18

18.近づくと、人の形をして。遠ざかると、バラバラになって。(ミハエル・ミスト・シルフィ視点)

※本作には未熟な言動や不快に感じられる描写が含まれますが、物語上の意図によるものです。苦手な方はご注意ください。

 その後は、伯爵家の存亡に関わるお家騒動のため、真贋の鏡という「発言が嘘か真か」判断できる魔道具まで王宮から運ばれて、アナナッサ家は徹底的に調べられた。


 俺は、首を刎ねてほしい気持ちもあるし、アメリアと離れると、また会いたい気持ちが募って、自分が何を答えてるのかはよく分からなかった。


 騎士団の取り調べにより、アメリアに対する酷い仕打ちが明らかになっていく。


 伯爵夫人改め伯爵代行の愛人(?)の言うように、獣人は頭が悪い、つまり俺は頭が悪いのだろう。

 伯爵代行の愛人――アメリアを虐げたあの女は殺してやりたいが、貴族に暴力を振るった罪で派手に見せつけながら処刑が決まってるそうだ。

 伯爵代行であるジオルドは、遠征先に後任が派遣され次第、早急に呼び戻されて処刑だそうだ。


 アナナッサ伯爵家は、正当な後継者となれる者がアメリア・フラガリア・アナナッサしかいなかったため、国が代行して管理しつつ、その行方が探されるそうだ。


 …………俺は外国人という事もあって、アナナッサ伯爵家のお家騒動に巻き込まれ、事情もよく分からなかった馬鹿な外国人として、遠い獣人の祖国に強制送還された。

 アメリアの眼差しが、軽蔑の眼差しが深く心に焼き付いている。


 勘違いしていたとはいえ、俺は何という事をしたのだろう。

 自分の番のアメリアを買おうとしたのだ。



 自分の国に入ると、そこかしこで老若男女の獣人が自分の番と手を繋いでいる。

 あるいは、将来に必ず会う自分の番にふさわしいものになるために、皆、希望に満ち溢れた顔をしてそれぞれの仕事をこなしていた。


「もーう、ダーリンたら私を迎えにくるのが遅いのよっ! 私、早く子供が欲しいのに」

「ごめんごめん。君に苦労をさせないように色々と準備が…………」

「準備なんていらないっ、私はあなたさえいればいい。一緒に頑張りましょ」


 とぼとぼと、あえて徒歩で歩く自分の屋敷までの道のりでそのような会話が聞こえて嫉妬で胸が焼けた。

 アメリア…………美しい人だった。

 俺の運命の番のはずだった。

 ――どうして。どうして。



「なんという恥知らずな事をしたのだ。よりにもよって番をそのように辱めるとは」


 自分の屋敷に帰ると、すでに先についていた手紙で事情を知っていた父上に、そう呆れた目で見られた。


「しかもそのように不自由していた番を追いかけることなく、また自分の国に返されるとは。狼の名の恥よ。番を自分の柔らかい毛でくるむように優しく保護して見せてこそ、番ではないのか。番を金で買おうとするとは……っ」

「うわああああ!!!! 人間が良かった。人間が良かった。父上、何故私は番が人間なのに同じ人間ではないのですか? 人間ならば、獣の本能に惑わされることなく、冷静にっっ!!」


 番を辱めた自分、獣人である自分、俺の仕打ちを軽蔑したアメリア、何もかもが怖くてもどかしくて、俺は再び屋敷の外に飛び出した。


「あっ! おいっ! ミハエルっ!」


 父上の声が後から追いかけてくるが、俺は闇雲に外へ駆けた。

 自分の番が居る獣人たちが奇異なものを見る目で俺を見てくる。



 ……………………気づくと俺はどこかの湖のほとりにいた。

 ああ、小さい頃よく遊んだ近くの森の中の湖だ。

 湖面には、忌々しい獣人が映っている。

 番もろくに救えなかった自分、どこにアメリアは転移したのだろう。

 苦しんでいないだろうか?

 心細くて泣いていないだろうか?

 自分は番の為にとても修行した。できるなら守らせてほしい。


 しかし、また拒否されたらと思うと怖い。


 揺れる湖面に映る獣人。

『……………………灰色のふさふさとした耳に尻尾。人間にはコンナモノハ生えていない』


 ……………………、

 …………………………………………、

 ………………………………………………………………、


「あーあ、この狼、完全に頭がイかれちまってるね。人間になりたいなら人間にしてやったらいいじゃないか」

「しかし、千切れた尻尾と耳は治してはくれないのか?」

「魔法でくっつけようとしたら、暴れるんだろ? アタシは、ごめんだね。目くらましの魔法と、目が光るのをごまかすために眼鏡をやろう。どうせ獣人は自分の特徴の耳や尻尾をなくしたらそんな強いことはできなくなるから」


 遠くで父上と、獣人の国の深い森にすむ蛇の魔女の声が聞こえる。

 蛇の魔女も自分の番と仲良くやっている。

 皆、嫌いだ。

 獣人である俺はもっと嫌いだ。



 ……………………、気づくと『僕』はどこかへ向かって歩いていた。

 背中には長剣を背負い、顔には眼鏡がかかっている。

 人間だから、人間の『エル』だから――耳も、尾も、もうない。

読んでくださってありがとうございました。感謝です。

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