15.神様、俺が何をしたというのか(ミハエル・ミスト・シルフィ視点)
色々駆け足で進んですみません。
「あいつ逃げたの?! で、でもお金はもらうから。約束通り会わせたでしょ!!」
伯爵夫人がそう言って、俺の手から金貨をひったくった。
袋に入っていた金貨がいくらか散らばる。
かすかに残る香りが、アメリアがもうこの場にいないことを告げていた。
アメリアはもう、どこにもいなかった。
「いない? アメリア、いない? ……っ、痛い!!」
——アメリアがいない
その事実にとても驚いて、心臓がわしづかみにされ、握りつぶされるように痛かった。
「痛い痛い痛いっ!」
そうわめきながら衝動的に外へ走り出た。
少しでもアメリアの痕跡を探して辺りを見回したけれど、いなかった。
アメリアの軽蔑の眼差しが目に焼き付いている。
あの目は、拒絶だった。
俺が嫌い、ということなのか。
アメリアからは、
『番ですか。そうですか。……さようなら』
という言葉と、その軽蔑の眼差ししかもらっていなかった。
俺の番。
神様から決められた俺の唯一無二の相手。
故郷では、同じ獣人同士で番が見つかって、皆、幸せそうで。
俺もアメリアを見つけ出しさえすれば、幸せになれる。
そう思っていた。
番がダメという事なのか。俺がダメという事なのか。
あるいは、アメリアを救い出そうとして、気がはやってアメリアを買うという手段に出た俺が悪かったのか。
いつの間にか、伯爵夫人が横にいた。
にやにやと笑いながら、辺りをキョロキョロしている。
俺からひったくった金は手に持っていない。
「アメリアはやっぱりついてないダメなやつね。せっかくお貴族様に生まれたのに、それも生かせなくて——こんな獣人しか助けに来ないんだから」
「…………え? 貴族?」
「そうそう、そんな事も知らなかったの? やっぱり獣人は馬鹿なのねぇ。アメリアったら、前妻に似た顔して生意気ったらないわよね。だから旦那に言わずに売り飛ばそうと思ってたのよ」
アメリアを侮辱されたことで一瞬頭が沸騰しかけたが、『アメリアが貴族』という言葉に耳を疑った。
「…………何? そんな目で見て。お互い様でしょ? あなたはアメリアを買った。私は前妻の子供のお貴族様を売り飛ばしてやった。アメリア、どこか遠い所に逃げたのね。あはは、あははははは。無様ー!」
………この伯爵夫人と自分は残念ながら同類になっていた。
自分の浅はかさ、アメリアを傷つけたことに頭がおかしくなりそうだった。
――俺は自分も逮捕されるかもしれないことも考えたが、すぐさま役所に向かい、事の次第を通報しようとした。
が、それよりも前に、『貴族の血』さらには伯爵夫人も誤解していたが、アメリアは驚くべきことに『次のアナナッサ伯爵家当主』だったので、許可も報告もなく国外に出た際には、国が感知できるようになっていたらしい。
その頃——
この国の騎士隊がアナナッサ伯爵家に強制捜査の為に突入しようとしていた。
伯爵夫人→アメリアが次の伯爵家当主とは思わず、アメリアをただの前妻の貴族の子と思い、後でどうとでも言い繕えると思ってミハエルに売る。
ミハエル→番に長い事会えなくて若干気が狂いかけてた所に、よく考えたら色々おかしいのに、働かせられていた番が奴隷か召使かと思い込み、アメリアを解放させるために伯爵夫人とのアメリアの取引に応じる。
アメリアの母親→当時は真面目をよそおっていたアメリアの父と貴族らしく政略結婚する。アメリアが4歳の時に病で死ぬ。
アメリア→4歳までは母親の愛(?)に包まれて幸せだった。母を突然の病で無くしたら、母に従順だったはずの父親が愛人を家に引き込み再婚。それからはずっと下働きをしている。その後13歳の時に迎えにきたミハエルを見て覚醒。転移魔法でアイステリア王国に転移。その時に、貴族家当主が報告なしに国外に出たため、国の通報システムが作動。騎士隊出動←今ここ
(国の通報システムは今回のような事を想定しているわけではなく、ただ単に魔法の力を高めた貴族の血の国外流出や謀反を防ぐためのもの)




