最後の選択
「お……無事についたな」
転移を行い、俺とゴンザレスは先ほどまで村の住人たちとゲームをしていた会場に戻ってくる事ができた。
「いるいる。良かったぁ。逃げられていた時の事を考えてなかったけど杞憂だったみたいだな」
そしてゲームに使用した道具、村長も逃げずにその場でうずくまっていた。ゴンザレスほどではないが痛みに喘ぎながらジタバタしている。ナイフで刺されたとはいえ、体をウイルスで侵され、狂人化の魔法を使って暴れまわったゴンザレスと比べれば痛みは大分マシだろう。
「ハヤグゥゥ! ハヤグゥゥヴォロシテェ!」
何故だろうか? 先ほどまではゲームを楽しめていたはずだが、痛みに耐えてなお闘争心を失わないゴンザレスを見た後だからなのか非常に見苦しく見える。死を懇願する村長を見ていると惨めに思えてくる。生き恥を晒すなと言いたくなるくらいだ。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ村長さん。そこにいるゴンザレスさんが身を挺して現状を打破しようと動いてくれたんですよ? まずはお礼を」
「ヴォォォォ!」
これでは話にならないと考え、俺は老婆からもらった杖で治癒魔法を使って村長を回復してやる。ゴンザレスはナイフでの傷による痛みより耐えがたい苦痛に耐えているのにこの村長ときたら……。みっともないと思ってしまう。
「がはっ! がはっ!」
「どうです? 楽になったと思いますが?」
「き……貴様ぁ! この私をなぶりのものにしおって! 絶対に許さ……がぁぁぁ!」
回復魔法で傷が治った途端、敵意をむき出しにして睨んでくる村長に思わず苦笑いしてしまう。とはいえあまりに威勢がいいと話にならないため、少量のウイルスを仕込み、動けない状態に持っていく。
「回復した途端、あの態度とはな……。もとはと言えばあんたのせいだろ? 現に住人たちも全員あんたを犠牲にして逃げて行ったぜ?」
「あんな使えん屑どもの代わりなどいくらでもいるわ! ぐぅ……それに貴様が粋がっていられるのも今のうちだ。そのうち外から村の様子を見にくる者たちが来る。そうなれば貴様も終わりだ!」
「おお、それは怖いなぁ。じゃあ早くゲームを終わらせないと」
確かにゲームを開始してからもう間もなく三時間経とうとしていた。本来であればもう少し余裕があったはずだがゴンザレスとの戦いという想定外の自体があった事もあってかなり時間を取られてしまった。素早くゲーム終了を行うため、とりあえず俺は村長に感染させていたウイルスの進行をはやめた。
「!!!がぁぁぁぁ!!」
ウイルスの進行が早まった事で症状が悪化し、村長の体が急変する。ウイルスによって苦しみ始めたのだ。
「本当に学習しないな。もうあんたが偉そうな事言える立場じゃないって分からないものかね? まぁいいや。じゃあ最後に楽しい遊びをやりますか」
苦しむ村長を前に、俺はバッグから二つの瓶を取り出す。どちらの瓶にも液体が入っているが、違いは瓶の色だ。一つは赤く、もう一つは青い色をしている。
「そこのゴンザレスさんに感謝するんだな。あんたに最後のチャンスをやるよ。あんたがやってきた罪。それを認めるならこの赤い瓶をやるよ。それでゴンザレスさんにはこの青い瓶をプレゼントだ」
二本の瓶を手にとりそれを見せびらかすようにして村長の前で横に振る。
「青い瓶は回復薬で、赤い瓶の液体は俺がウイルスを仕込んだただの水だけどな。といっても濃度はかなり濃くしてるから飲めばウイルスの症状が一気に進んで終わりだがな」
「き……きさまぁぁぁぁ!」
「あんたの所業、死んで償えるなら安いもんだろ」
その言葉を聞き村長が怒りの表情を浮かべ睨みつけてくる。まぁ無理もない。俺が村長に勧めたのはウイルス入りの水が入った赤い瓶、つまりこれを呑んで死ねと言っているようなものなのだから。
「あんたは赤い瓶を呑めば望み通り死んで楽になれるし、ゴンザレスさんは青い瓶で回復できる。迷う事ないだろ? ほらほら早く飲んでくれよ」
俺は挑発するように手に持っている瓶を横に振る。
「な……舐めるなよ! クソガキがぁぁぁ!!」
最後の気力を振り絞ったのか、村長が俺に向かってとびかかってきた。そして俺が手に持っていた青い瓶を奪い去り、それを一気に口の中に入れ流し込んだ。




