猛攻の後
「ヴォァァァァァ!」
ゴンザレスにかかっていた狂人化の魔法を解除した途端、部屋全体に悲鳴が響き渡る。それも獣の咆哮とでもいうべきものであった。ただでさえウイルスに侵され、体を少しずつ壊されている所に狂人化状態のままあちこちを破壊したのだ。下手をすればゲームで傷を負った村長以上の激しい痛みが体を襲っているかもしれないのだ。
「よう、お目覚めかい? といっても快適な目覚めじゃねぇだろうけどな」
「ぐぅぅ! がぁぁぁ!」
俺の言葉に反応したゴンザレスが悲鳴を上げながらも、顔をゆっくりと上げ俺を睨みつけてくる。こんな状態になっても闘争心を失わないとは大したものだ。
(とはいえ俺も危ない所だった。もし泥人形がなければ逃げきれていたかどうか……)
もしこの村で老婆と出会い、様々な道具を恵んでもらっていなければ今とは違う結果になっていたかもしれない。最悪、自分が既にこの世に存在していなかった可能性もあったのだ。ウイルス感染のスキルは強力だが無敵ではない。
(もっと強くならないとな)
これから先の復讐を完遂するためにはスキルを鍛えなければいけないだろう。ゴンザレスも中々の実力者であったが、ギルドのランクで言えばBランク。彼よりも強い存在は他にもまだまだいるからだ。
「ぐぅぅ……まだだ……まだ」
考え事をしている俺にゴンザレスが痛みと戦いながらも何とか声をひねり出してくる
「……驚いたな。かなりの痛みが襲っているだろうに。気を失わないどころかまだしゃべれるのか……」
「わたしがぁぁ……わたしがぁぁ……たおればぁぁ! 住人たちがぁぁ!」
この状況、どう考えても打つ手はないはずだ。それでもなお闘争心を失わないゴンザレスには敬意すら覚える。
「なぁ? 何であんたはそこまでするんだ? 村の住人たちでさえも自分たちが助かるために村長を差し出したんだぜ? こういっちゃなんだがあんたは赤の他人だ。正直村や村長がどうなろうと関係ないだろ?」
それと同時に覚えた疑問を俺はゴンザレスに投げかける。彼にはここまで村に忠義を尽くす義理はないはずだ。様子を見ていた感じ、この村が故郷という訳ではなく、身内がこの村出身という訳でもなさそうだ。それにゴンザレスには村長を引き渡せば助けてやるという取引まで行った。俺自身はゴンザレスに恨みは無かったため、この取引を破棄するつもりは無かったが、彼はそう思わなかったのだろうか。
(となれば仲間の復讐か?)
他に考えられる要因があるとすれば、一度目に俺に襲い掛かってきた仲間たちをスキルで一網打尽にしたくらいだ。それが理由なら納得はする。とはいえそれも俺自らが行ったのではなく襲い掛かってきたから返り討ちにしただけだ。それで恨まれるとなれば逆恨みもいいところだ。
「……散っていった者たちのぉぉ、何より……この凶行をぉぉぉ見逃す訳にはぁぁぁ!」
悲鳴の合間に何とか声を出しこちらの回答に答えてくるゴンザレス。正直見ているのが辛いくらいだ。言葉の内容を聞くに、やはり復讐の意図はあったようだ。そしてやはり俺がやった事を許せなかったようだ。
「凶行……ねぇ。あんたにはさっきも言ったが元をたどればこいつらがえげつない事をやってくれたおかげだぜ。それにあんたも見ただろ? この村の住人の醜さを」
この村の住人たちは自分たちが助かるためならば平気で他人を犠牲にする。昔は俺の両親を、そして今回は村長を。どちらもそうするよう仕組んだ者がいるという点は一緒だが結局彼らは流されるがまま流され、結果的に自分たちだけが助かろうとした。逆に言えば赤の他人であるゴンザレスが村長や住人のためにここまで体を張って、凶行を止めようとしたというのがおかしいくらいだ。
「だがまぁ、あんたの心意気は大したものだよ……。もしあんたがあの時、俺がスキルを授かった日や俺の両親に住人たちが嫌がらせをした時にいてくれれば……な」
あの老婆は言うに両親が嫌がらせを受けた時に庇ってくれた人は多少はいたようだが、結局は自分の事しか顧みない者たちによってひねり潰されてしまった。だがもしあの時にゴンザレスが、Bランクのギルドメンバーがいれば何かが変わったのだろうか。
「いや今更こんな事を言っても仕方ないか。だがあんたの心意気には恐れ入ったよ。だからさ、最後のチャンスをやるよ」
身を挺してここまで行動を起こしたのだ。ゲームのサプライズとはしては十分楽しむ事ができた。となればこちらも返してやるのが礼儀というものだろう。
そこでふと思いついた遊びを実行する事にした。この遊びならばゴンザレスもきっと納得してくれるだろう。そうと決まれば早速行動だ。俺は老婆から貰った道具の一つを使い、ゴンザレスとともに屋敷内の広間、さきほどまで村長がいた所に転移を行った。




