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末路

「ぐぅふははは! 油断しおったなクソガキが!」


俺から青い瓶を奪い去り飲み干した村長が高笑いを上げる。


「はぁはぁ、見れば貴様も大分消耗しているようだな。大方ゴンザレスとやりあったのだろう? 今の貴様からなら簡単に逃げられる。それにもうしばらくすれば外から誰かが様子を伺いにもくるだろう。そうなれば貴様も終わりだぁ!」


村長は笑みを浮かべこちらを見つめてくる。どうやら目の前の馬鹿な村長にも分かるくらい俺は消耗しているようだ。老婆からの道具のおかげで何とかゴンザレスを撃退したものの、あの戦闘で体力をかなり消耗した。村長の言う通り、さすがに今の状態では外から援軍が駆けつけようものならさすがに太刀打ちできない。


「ああ、確かに馬鹿なあんたでも分かる通り、俺はかなり消耗しているな。もし外から誰かが村の様子を見に入ってこられたらさすがにどうにもならないだろうな」

「今更謝ってももう遅いぞ! この私が味わった苦しみ。ただ貴様を始末するだけは生ぬるい。死んだ方がましだと思うくらいの地獄を味合わせてやる!」


とてもさきほどまで殺してくれと悲願していた人物ととても同一人物には思えない。とはいえそれも無理はないだろう。俺から解毒剤を奪い、あちらは回復済み。対するこちらはゲームが開始してから魔力も体力も大分消費している。相手もこちらを倒す必要はなく、逃亡すればいいのだからその条件は緩い。勝利は間違いないという村長の考えもあながち間違いではないのだ。


「ははは、さて私は失礼させて……ぐぅぁぁぁぁぁ!」


突然村長が喉を抑え大きな呻き声を上げる。


「かはっ! 何故だ! 何故……解毒剤を飲んだというのにぃぃぃ!」

「やれやれ、あんたは本当に学習しないな。何で俺があんたに素直に解毒剤を渡すと思うんだよ」


そう、あくまで村長が飲んだ液体が解毒剤であったのならば勝利の道はあっただろう。


「実は解毒剤が入っていたのは赤の瓶でした! 青い瓶に入ってた液体は激しい苦しみが襲い掛かるウイルス入りの水だったのです!」

「き……きさ……ごぼぉぉ」


再び村長にウイルスによる痛みが襲い掛かる。先ほどまで味わっていた苦しみに体を侵され、その場に倒れこんでしまう。


「何で素直に俺の言う事を信じるかね? 普通疑うだろ?」

「ふざ…ふざけぇぇぇ!」

「これでもチャンスはやったんだがな。あんたが本気で改心するつもりで赤の瓶を選んだのならまだ助かる道もあったんだが……まぁ、あそこで反省するような奴なら俺の両親にあんなえげつない真似できないよな」

「おぼぇぇぇ!」


俺が村長に対し言葉を投げかけるが返ってくるのは悲鳴だけ。ウイルスの苦しみから逃れるのに必死でどうやら俺の声はもう村長に届いていないようだ。


「はぁ、もうあんたの相手も飽きてきたよ。まぁ精々苦しんで逝ってくれや」


もはや村長に対しもう何も感じる事が無かった。復讐を始めてからは自身の何かが満たされる感じがしたが、今は村長の悲鳴を聞いても何も思わない。


「さて、村長の方はあれでいいとして、身を挺して任務をこなそうとした戦士には報酬をやるとしますか」


俺は持っていた赤い瓶を倒れこんでいるゴンザレスにかける。経口による摂取ではないため効果は薄いもののそれでもウイルスを除去できる効果は少なからずあるだろう。そして俺は回復魔法をゴンザレスにかけ、話ができるくらいまで回復してやる。


「がぁはぁ……なぜ……」


回復されたゴンザレスは俺に対し疑問を投げかける。当然だ。先ほどまで戦っていた敵に対し治療を施すなど普通では考えられない。

「なーに、自分の身を挺してでも村長を守ろうとした心意気に感動しただけさ」

「……悪いが信用できない。それだけの理由で敵に治療を施すなど……」


さすがに鋭い。さすがはBランクギルドメンバーだけある。ゴンザレスの身を挺した行動に敬意は覚えたが、無論それが理由で治療した訳ではない。


「あんたと再契約したいんだよ。さっきは反故にされたけど、次はキッチリ結びたいと思ってな」

「悪いが君に何をされようと契約をする気はない。殺すなら殺すがいい」


さすがに潔い。あの村長にも見習ってほしいものだ。もしこの村の村長がゴンザレスのような人物であればとつくづく思わされる。だがそんな人間が相手であるが故の弱点もある。


「いや、あんたは断れない。性格からして……何よりこの村の現状……俺のスキルの効果を見て断るという選択肢を取れないのさ」


俺はゴンザレスに契約の内容を伝えると表情がみるみる真っ青になっていく。だがそれでも彼は飲まざるを得ない。ゴンザレスとはそういう人間なのだ。俺と取り交わした契約を破棄しようものなら恐るべき事になるのだから……。





契約内容

・ゴンザレスの命の保証。生きた状態でギルドへ生還させる

・ただしギルドに対し、村で起こった惨状について虚偽の報告をする事

・俺の事は身内を含め誰にも言わない事。

・契約が破棄されたと俺が見なした場合、ゴンザレスの家族、所属しているギルド、住んでいる町にウイルスをばら撒く



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