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近づく終幕

ゲームを開始してから数時間経過した。展開は俺が予想していた通り、数少ない解毒剤を手に入れるために住人たちが奪い合いを始めた。一部の者に支給した解毒剤入りのバッグだが、中には一人分以上の数の解毒剤を入れてあったのだがそれを譲り合おうという考えは彼らの中に一切なかったようだ。実は支給した全てのバッグ、その中に入っている解毒剤を全て合わせれば住人たち全員がギリギリ助かる分の数は入れてあった。不安を煽ったのは事実だが、彼らの頭の中に協力という言葉が少しでもあればこのような事にはならなかっただろう。本当に自分たちの事しか考えてない奴らだ。

だがそんな中でも協力しあう者もいた。村長が雇ったというゴンザレスたち、護衛メンバーだ。彼らはウイルスがばら撒かれたという状況であっても冷静さを失わず、現状を打破しようと作戦を立てていたのだ。だが彼らが取った道は事もあろうか俺を倒すという選択肢であった。

俺自身は彼らに恨みは無かったため、事が済んだら見逃すつもりでいた。甘いと言われるかも知れないがゴンザレスたちと連絡が取れなくなったとなれば少なからずギルドは何か起こったのではないかと勘繰るだろう。そうなればそこから俺が生存しているという情報が洩れる可能性がある。それならばゴンザレスたちはわざと生還させ、上手く嘘の報告をするよう脅した方が良いと俺は考えていた。彼らにもそれなりの意地はあるだろうが、ウイルス感染のスキルがあればどうとでもなる。言う事を聞かなければお前の身内全員をウイルス感染させるとでも言えばこちらのいう事を聞かざるを得ないだろう。そんな事を考えてはいたものの、彼ら全員が襲い掛かってきたため返り討ちにし、生き残ったのはゴンザレスだけになってしまった。


「ああ……」


作戦が失敗したショックが大きかったのかゴンザレスの表情は絶望に染まっている。目の前で仲間を失った事で心にダメージを負ってしまったようだ。これならばいくらでも懐柔できそうだ。


(ん? 何か騒がしいな)


ふと耳に誰かが叫んでいる声が聞こえる。どうやら村長の屋敷付近で誰かが叫んでいるようだ。村長の屋敷で何かが起こったのだろうか? 気になった俺はゴンザレスにある提案をした後、村長の元に向かう事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



村長の屋敷に向かうと村の住人たちが何やら大声で何かを叫んでいる。どうやら村の住人たちは村長に助けを求めてやってきたようだが、村長は住人たちの声を一切聞こうとしていないようだ。まぁあの村長が住人たちのために何かをするなどと考えてもいなかったがまさか自分だけ助かるために引きこもるとは予想外だった。住人たちは何とかバリケードを突破しようとあらゆる手を使っているようだがどれも無駄に終わっている。


(くくく、面白くなってきたな。ゲームも終盤に差し掛かってきたしここで追加ミッションでも始めますか)


ウイルスの影響で息絶えた住人たちの数も大分増えてきている。辺りには既に多くの屍が転がっている。おそらく人口の半数以上は死亡しているはずだ。残っている者は村長の屋敷の前で群れている者、何とか解毒剤を確保しどこかに身を潜めている者くらいだろう。あっけない形だが住人たちに対する復讐はほぼ完遂したと言ってもいいだろう。


(さて、後はあの村長だけか。それじゃあ始めますか。追加ミッション、村長狩りを)

「大変そうだな。手伝ってやろうか?」


最後の追加ミッション、村長狩りを始めるためにバリケードを突破しようとしている住人たちに俺は声をかける。その姿に気づいた村長と問答をするが、本当に自分の保身しか考えていない発言ばかりだ。バリケードを突破されない自信があるのかかなりの余裕を見せている。まずはその余裕を崩してやるか。


「おい出番だぜ」


俺の声に答え大男のゴンザレスが姿を現す。ゴンザレスは得物である金槌をバリケードに向かって大きく振るい、事もあろうかバリケードを破壊してしまったのだ。


「な!?」


村長が驚愕の表情を浮かべる。さすがはBランクの実力者だ。住人たちが突破できずにいたバリケードを一瞬にして破壊してしまった。その怪力は中々のものだ。ウイルス感染のスキルを得ていなければ、老婆から様々な装備品を貰っていなければ、今頃俺はあの一撃を喰らいミンチになっていただろう。だがその力が俺に振るわれる事はない。


(元をたどれば村長が全ての元凶だったようだ。もし村長を捕まえ俺に差し出すのなら残った住人とお前自身を助けてやる)


村長を差し出せば、住人とゴンザレス自身の命を助けてやると提案したのだ。普通ならばこのような提案を受ける事はないだろう。だが仲間を失った挙句、俺を倒す事ができなかったという現実にゴンザレスは俺の提案を飲むしかなかったのだから。


バリケードが破壊され、住人たちが一斉に屋敷に侵入し始める。屋敷内にもしかすると罠があるかもしれないが、住人たちが先行して突入してくれているため、俺が引っかかるという事はないだろう。最早村長が捕まるのは時間の問題だ。


(さて、ゲームのフィナーレはどうしようかねぇ)


いよいよゲームも終幕だ。最後をどう飾るか考えながら、住人たちの後に続くようにして俺も屋敷に足を踏み入れた。



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