籠城
お待たせしました
そろそろ終幕です
次で視点が主人公に戻ります
「ぐっ!」
どれくらい眠っていただろうか。突然襲い掛かってきた苦しみで眠気が一気に吹き飛ぶ。すぐさま近くに置いてあった解毒剤の瓶を手に取り一気に飲み干す。すると徐々に症状が軽くなっていく。
「屋敷にいても感染するとは……。何と恐ろしいスキルよ」
完全に屋敷内を密室にしていたにも関わらずいつの間にか感染していた事に驚きを覚える。さすがに危険だという理由で教会が引き取るだけはある。スキル封じの腕輪をつけた上で監視付きの生活を送っていたはずだがどうやって抜け出したのだろうか。もし教会がヘマをしてあのクソガキを逃がしたのであればその責任は大きい。弁償金をたっぷりと請求してやらねば。とそのとき何やらドンドンという音が響いている。どうやらその音は屋敷の外から聞こえているようだ。音が気になったため、窓から外の様子を伺う事にした。
「村長さん! 助けてくれー」
「私の息子を……息子を助けてください!」
「ひきこもってるんじゃねぇぞ! 早く出てきやがれ!」
いつの間にか屋敷のドアの前に多くの住人たちが集まっていたのだ。彼らはものすごい剣幕でドアを叩いている。全く、普段何の役にも立たない癖にこういう時だけ助けろ助けろとうるさい奴らだ。
「屋敷にいる事は分かってますぞ! どうか開けてくだされ!」
「村長様! 何卒 お慈悲を!」
住人たちの中には使用人たちも混じっている。やれやれ、この私に仕える存在がそのような醜態をさらすとは何ともみっともない。最早彼らも不要だろう。まだ生き残りがいた事には驚いたがしばらくすれば彼らも全員息絶えるだろう。私はただそれまで待てばいい。ゴンザレスならともかく彼ら程度では屋敷のバリケードを突破する事はできないだろう。
「クソ! みんな! 一斉に攻撃するぞ! 魔法を使える奴は後ろから援護してくれ!」
住人たちが一丸となってバリケードを突破しようと攻撃を仕掛けるがびくともしない。何かあった時のために、自分の身を守るためにあらかじめ準備をしていたのだ。
「やれやれ、本当に自分の頭脳が恐ろしい」
自分の策が功を制した事に対し、思わず自分の事を褒めてしまう。後は解毒剤を飲みながら時が来るのを待つだけだ。ウイルス感染のスキルは恐ろしいものだが、これほど恐ろしい効果が永遠に続くとは思えない。このまま使用していればそのうち魔力は尽きるはずだ。そうなれば逃げ出すチャンスはいくらでもある。後は教会やギルドに報告してあの忌々しいクソガキを処分するだけだ。
「ククク、精々足掻くがいい。何をしようともお前たちは……」
「大変そうだな。手伝ってやろうか?」
何とかバリケードを突破しようとする住人たちに対し何者かが声をかける。この事件の首謀者である少年、アル・スペンサーが住人たちの前に姿を現したのだ。
「む! 忌々しいクソガキめ! 何をしに!」
まさか自分の目の前に全ての元凶が現れるとは夢にも思っていなかった。幸い自分は退避済み。となれば自分は安全圏にいながら一方的にいたぶる事ができる。これはチャンスだ。
「みなの者! 全ての元凶がそこにいるぞ! いまこそ力を合わして始末しようではないか!」
すぐさま二階の窓を開け、住人たちに指示を出す。
「いたぞ! 村長だ!」
「卑怯者め! 早く出てきやがれ!」
だが予想してた展開とは異なり、自分の言葉に耳を貸さず住人たちから一斉に非難の声が浴びせられる。
「……な……何を言ってる! 私の事よりまずはそこにいるクソガキの始末が先だろう!」
「ふざけるな! もとはと言えばてめぇのせいだろうが!」
「そうよ! あなたがあんな事さえしなければこんな事には」
「な……何を言っている」
さすがの私でも住人たちの言っている事が理解できない。何故全ての元凶たるクソガキが目の前にいるのに相手にせず私を責めてくるのだろうか? ウイルスに侵され、頭もおかしくなってしまったのだろうか?
「おーい、村長聞こえるか?」
そんな中、アル・スペンサーが私に向かって声をかけてくる。
「村の住人から聞いたぜ。俺の両親に嫌がらせをするよう命令したのはお前だってな。住人たちも脅迫されて無理やりさせられたんだってな」
「ふ……ふざけた事を言うな! 私は村のためを思って」
「だからよ。住人たちにチャンスをやる事にしたんだ。村長を捕まえたら住人全員助けてやるってな」
「な!? なんだと!?」
ここまで住人たちが愚かだとは思わなかった。まさかパンデミックの元凶たるあのクソガキに踊らされるとは。頭の中に脳みそがつまっていないのだろうか。
「だ……騙されてはいかん! そのクソガキは私たちの仲を引き裂こうと……」
「だったら今すぐこの状況を何とかしろ!」
「私たちから税収とか言って高い金を搾り取ってるくせに! 少しは働きなさいよ! この無能!」
「む……無能だと! この私を無能だといったのか! この出来損ないの愚か者が!」
ここまでくれば住人達に良い顔をする必要もないだろう。
「みろ! あれが村長の正体なんだ!」
「酷い……。私たちが村のためにと思ってどれだけ……」
「何が酷いだ! 替えの利く貴様らとは違って私は選ばれし存在なのだ! 貴様らはそのクソガキがばら撒いたウイルスとやらでさっさとくたばるがいい! 頭の悪いお前たちなど必要ない!」
私の言葉に住人たちが信じられないという表情を浮かべている。ようやく自分たちがいかに世にとって不要な存在か、身をもって思い知った事だろう。
「そこのクソガキはこのウイルスが収まった後に必ず始末してやる。この村に何かあったとなればギルドや騎士団が出向してくるだろう。そうなれば貴様も終わりだ!」
「おいおい、まだゲームは終わってないのに勝利宣言か?」
「ふん、貴様らがどれだけ足掻こうがこのバリケードを突破する事などできん!」
奴らが何をしてもバリケードを突破する事は不可能だ。バリケードで守られた屋敷にいる限り私は安全だ。
「しらけるなぁ。せっかくのゲームなのに引きこもって不参加か? つまらない真似はするなよ」
「挑発のつもりか? 貴様が何を言おうと私はこの屋敷から一歩も出るつもりはない」
「あっそ。じゃあこっちから突入させてもらうとしようかな。おい出番だぜ」
クソガキの呼び声に応え、一人の男が姿を現す。それは私が雇ったBランクの男、ゴンザレスだった。手には得物である金槌を持っている。
「ま……まさか!」
「さてゲームもいよいよ終盤だ。追加ミッション、村長狩りを始めるとしようか!」




