7-8
「さぁー昼からも頑張ろうかー」
拓斗は気合いを入れ、芝浦と別れた。
拓斗が持ち場につくと、東ではなく違う男が作業をしていた。まだ20歳前後だろう、髪は金髪で、ヤンキー風な感じである。
「あれ?ここだよなー?」
拓斗は、どうしていいのかわからず、その青年に聞いてみた。
「あのー?私はここでいいんでしょうか?」
「あー、聞いてるけど・・・」
その青年は、笑顔1つ見せずに拓斗をちらっと見ただけだった。
「東さんはどこへ行ったんですか?」
「違うとこでいるんちゃう」
「そうなんですか」
拓斗は東の姿を探したが、見つからない。
「西岡さんどうしたんですか?」
拓斗が辺りをキョロキョロしていると、城川が声をかけてくれた。
「あのー、東さんがいないんですけど、私はどうしたらいいんですか?」
「あー、すいません。言ってなかったですね。持ち場はローテーションするので、昼からはこの藤堂君が西岡さんの先生です」
「あー、そういうことですか」
拓斗はやっと理解できた。そういえば前後の人も午前中とは違う人だった。
「じゃー藤堂君よろしくな」
「はい」
藤堂は、軽く会釈している。
「じゃーやってみて、見てるから」
「いやっ、いきなりやれって言われてもできないですよ。朝からは見ていただけですし」
「そうなん?・・・じゃー教えるからやって」
そういうと、藤堂は最初から説明してくれた。
拓斗は、午前中のことも思い出しながら、やってみたが、やはりなかなか思うようにできない。
「違う違う、こうだって!!」
藤堂はイライラしている。
「すいません。どうも思うようにいかなくて」
「もう一回やるから見ててな」
藤堂は、最初から自分でやりながら説明しているが、どうもわかりにくい。人に教えるのが苦手なのだろう。
「じゃーやってみて」
拓斗は1から教えてもらったようにやってみた。
まだスピードは遅いが、何回かやっているうちにできるようになってきた。
だが、作業が終わった頃には、次の人がもう終わろうとしている。こんなことでは到底一人ではまだまだできない。
急いで戻ると、藤堂が次の車を終わらせている。
「すいません、迷惑ばっかりかけて」
「もうちょっと早くなってなっ!!それと、まだ間違いが多いわ」
確かに後で確認してみると、違う部品をつけていたり、作業を忘れていたりしている。
車の種類やグレードによって、部品が違う。車の前に貼っている図面を見て確認しないといけないのだが、どうしても慌てると失敗してしまうのである。
ジリリリ・・・・・・・・
仕事の終わりを告げるベルがなり、ラインは止まった。
拓斗が片付けをしていると、藤堂はもういなかった。
ものすごく偉そうな奴だったが、今の拓斗にはそんなことで腹を立てるわけにもいかず、グッとこらえていた。
「お疲れ様です。初日はどうでしたか?」
東が声をかけてきた。
「あっ、どうも東さん。なかなか思うようにいかないですよね」
「誰でも最初はできないですよ。一人でできるようになるには1週間ぐらいはかかるんじゃないですか」
「やっぱりそのぐらいかかりますよね」
「昼からは藤堂君やったでしょ?あいつ偉そうな奴だからムカついたんじゃないですか?」
「ちょっとね・・・でもそんなことでいちいち腹立ててられないですからね」
「大人ですね西岡さんは。俺だったらイライラして仕方ないですよ」
会社というのは、いろんな人がいる。東みたいや優しい人もいれば、藤堂みたいな偉そうな奴もいる。
拓斗は、早く独り立ちできるように頑張ろうと決めたのだった。




