6-20
「はい、いってらっしゃい」
香奈は保育園に来ていた。
先生に宇宙を預け、手をふった。
「いってきます、ママ」
宇宙は、友達と一緒に部屋に走っていったのだった。
「香奈、おはよう」
前から奥西桐子が歩いてきた。
「いってらっしゃい」
桐子は、子供を送り終えると、嬉しそうな顔で香奈に近寄ってきた。
「香奈聞いたよ。旦那出ていったんだって?」
香奈は、桐子の言葉に驚いた。
「ちょ、ちょっと待って!!どうして桐子が知ってるの?」
「どうしてって、そんなの実家の周辺はみんな知ってるよ。そういう話は広まるの早いからね」
桐子は、大和から聞いたこと。自分が愛と一緒に仕事をしていたことは、香奈には言っていない。
だが、実家で拓斗が出ていったという噂が広まっているのは事実である。
「そうなの?誰が広めるんだろ・・・誰にも言ってないのに・・・」
『私が広めたんだよ、ばーか』
桐子は心の中で叫んだ。よっぽど言ってやろうかと思ったが。
桐子は、小さい時に馬鹿にされた仕返しに、言いふらしていたのだった。
「もう恥ずかしくて実家行けないよ・・・」
「そんなの気にすることないって。噂なんだから」
「それはそうだけど・・・」
「旦那さん、どこへ行ったかわからないの?」
「うん、全然情報がなくてね」
「じゃー死んでてもわかんないじゃん」
「いや、それはないと思うんだ。たぶんだけど、旦那不倫してて、その女と女の子供二人連れて出ていってると思うから」
「あー、そうなの。不倫してたんだ。女と子供ねー。じゃー四人ででていったわけ?」
桐子は、また面白い話を聞いた。
まさか子供まで連れて出ていったとは驚きだった。
「誰も見てないからわかんないけど、四人一緒の日にいなくなってるから、たぶんね」
「そうなんだ。早く見つかったらいいね」
桐子は、心配そうな顔を見せていたが、心の中では大笑いしていたのだった。
「ありがと。また相談にのってね・・・」
「うん。私にできることなら手伝ってあげるからね。いつでも言ってよ」
桐子は香奈と別れたあと、車に戻るなり携帯を取り出した。
「さぁー実家に電話しぃよぉ」
ニコニコしながら最新情報を実家の親に電話したのだった。
その日の夜。
一度は、香奈の母、初子に連れられ実家で暮らしていたのだったが、宇宙の保育園、自分の仕事もあり、元の家に戻ったのだった。
宇宙と帰ったあと、ご飯を作る気にもなれず、宇宙を拓斗の親に預け、自分は適当に買ってきたものを食べている生活が続いていた。
午後9時。
いつも義父が、宇宙を風呂に入れてくれている。
香奈は、いつものように宇宙を迎えに行ったが、宇宙は遊んでおりなかなか寝に行くと言ってくれない。
仕方なく、香奈は少し待つことにしたのだった。
「お父さん、何か拓斗探す方法見つかりましたか?」
香奈は、宇宙と遊んでいた光久に聞いた。
「方法って言ってもなー・・・とにかく警察に捜索願いだけでも出しておくくらいかなー」
「もう捜索願いはだしてありますよ。全く探す気なんてなかったですけどね、警察は」
「そうなの?いつだしたの?」
幸子がコーヒーを入れて持ってきてくれた。
「昨日ですよ。警察なんて当てにならないですよ。事件性がないものは探さないんだって」
「そうみたいだね。前にもテレビで言ってたことあったかな。捜索願いってかなりの人が出してるらしいね。そりゃー一人一人なんて探してられないわよね」
幸子もそのことは分かっていた。
「だから、他の方法を考えないと」
「他の方法ねー」
少しの間沈黙が続いたが、ついていたテレビを見た香奈は何かを思い付いた。
「ねぇー、探偵に頼もうよ」
香奈が推理もののドラマを見て思い付いたのだった。
「探偵?そんなドラマじゃないんだから。それに、ほんとに探偵なんてこの辺でいるのー?」
「探偵なんてどこにでもいるはずだよ。私が探してくるよ」
「・・・ほんとにいるのー探偵さんなんて?まぁー・・・香奈ちゃんの好きにしたらいいよ。それで拓斗のこと探せるなら」
「ほんとどこへ行ったんだろ・・・帰ってきたら絶対許さないよ」
「ごめんね香奈ちゃん、あんな子で・・・。でももう帰ってこないんじゃない」
幸子は、この何もしない香奈の元へ、拓斗が帰ってくるなんて思ってなかった。
幸子自身も、これ以上拓斗が香奈に苦しめられるのを見たくなかったのだ。
「えっ・・・?」
香奈は、幸子が何て言ったのか聞き取れなかった。
幸子は、そんな香奈にもう一度聞こえるように憎しみを込めて言ってやった。
「拓斗は、もうあなたのところには帰ってこないよ」




