6-17
「ありがとうございました」
「おぅー、じゃーな。仕事見つかったらえぇーな」
おっちゃんは、最初から最後までテンションの高いままだった。最後には、入り口のドアを閉めながら、右腕を挙げ手をふっていたのだった。
しばらくして、愛と子供逹もでてきた。
久しぶりのお風呂だったので、かなりすっきりした様子の三人だったのは言うまでもないが。
「ごめんね拓斗、待った?」
拓斗は、おっちゃんとの話を愛に話したのだった。
「いい人に出会ったね。明日電話してみようよ。仕事あったらいいね。派遣の中には住むところまで用意してくれるところもあるからね」
「そうだな。とにかく少しの希望はできたからな」
次の日、12月25日。今日はクリスマスである。
朝から天気がよく、コインランドリーで洗濯をしていた。
桜と向日葵は、コインランドリーの前にある公園で、遊んでいた。
「あっ、そうだ!!」
愛は、何かを思い付いたように、車に戻っていった。
「拓斗ー、ちょっときてー」
愛は、車の後ろから何かを引っ張り出していた。
「何してるの愛?」
「天気いいから布団干そうと思ってね」
「えっ、どこに干すの?」
「あそこのフェンス」
愛は公園のフェンスを指差している。
「そりゃー干せないことはないけど・・・」
「人の目なんて気にしてたから何もできないよ。どうせ二度と会わないんだから」
やはり女性はすごい。拓斗一人だと、はずかしくてそんなことはできないだろう。
「これ持って!!」
愛は、布団を一枚拓斗に渡し、自分はさっさとフェンスに向かった。
公園で座っている人達は、やはり笑いながらおもしろい光景を見ている。
「はい、終わりっ!!」
愛は、さっさと終わらせ、子供逹が遊んでいるブランコの方へ向かった。
拓斗も、辺りを気にしないように、愛の方へ向かったのだった。
「桜、ほらっ、もっと押してよ」
何故か愛がブランコに座り、桜が後ろから押していた。
「もうー、愛ちゃん重いよー」
「重くないよー。ほらっ、もっともっと」
どっちが子供かわからない。
「ママー、向日葵も押してよー」
愛の横で、一人で乗っていた向日葵が、二人の光景を羨ましそうに見ていた。
「おーしっ、向日葵、俺が押してやるよ」
一人で見ていた拓斗が、向日葵の後ろへつき、押してあげた。
「ありがとー、おっちゃん」
「いいよ。落ちるなよ」
「はーい」
向日葵は無邪気に喜んでいる。
「向日葵、おっちゃんはやめようよ・・・たくちゃんにしようかっ」
さすがに、拓斗のことをお父さんと呼ばせるのは無理がある。愛の思いは、早く仲良くなってお父さんと呼ばせたいが。
「たくちゃんなんて恥ずかしいなー。まぁーおっちゃんって呼ばれるよりはましかな」
拓斗も、早く仲良くなりたいが、さすがにまだあったばっかりだし、拓斗自体なかなか絡みにくい。桜も向日葵も、拓斗以上に近寄りにくいであろう。
「たくちゃん、もっと押してよー」
向日葵は、人懐っこい性格だ。一緒にいても自然でいられる。
「愛ちゃん、こっちきてー」
桜は、ブランコを押すのに飽きたのか、木登りを始めた。
「もう、危ないよー桜。怪我しても病院行けないよ」
「大丈夫、大丈夫」
桜は愛の言うことも聞かず、どんどん登っていく。
「ほら、見て。ここまで登れたよ」
そんなに高い木ではないが、桜はテッペン付近で手をふっている。
「わかったから降りておいで」
愛は相変わらず、心配そうに桜を見ていた。
「いいなー、向日葵も登りたいなー」
愛の横では、向日葵が羨ましそうに、桜を見上げていた。
「よいしょっと・・・」
桜は、降りようと足を木の枝に伸ばしているが、届かない様子だった。
「愛ちゃん、降りれないよ・・・どうしよ・・・」
「だから、言ったでしょー、もうーどうするのー」
木登りというものは、登るのは簡単だが、降りるのは難しい。そういうものである。
「ほらっ、その枝にぶら下がることできるか?受け止めてやるから」
拓斗が、桜の下から手をさしのべてあげた。
「恐いよ・・・」
「落ちても大丈夫!!受け止めてやるから」
「ほらっ、桜、飛び降りな」
愛も拓斗の横で、手を延びしている。
「ちょっと待ってよー。ゆっくり行くから」
桜は、必死に手と足を動かし、枝にぶら下がった。
「あっ・・・」
とっ、そのとき・・・手が滑ったのか、枝から桜の手が離れた。・・・が、真下で待ち構えていた拓斗が、しっかりと桜を受け止めたのだった。
「大丈夫かっ」
拓斗は、初めて間近で見る桜の顔を、まじまじと見つめた。
桜はよっぽど恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして、拓斗の腕から降りたのだった。
「ありがとう・・・」
小さな声だったが、拓斗にははっきりと聞こえた。
「もうー桜、ほんとに気を付けてね。怪我しても病院いけないんだからね」
「はーい・・・ごめんなさい」
桜は反省しているのか、すまなそうに下をみつめていた。
「まぁーまぁー。元気でいいじゃんか」
拓斗は少しだけ、三人の中に入れたような気がした、そんな一時だった。




