6-15
駆け落ちして3日目。
拓斗と愛、それから桜、向日葵は、まだ宛のない旅をしていた。
朝は、一番安く済む食パンに、マヨネーズを塗り食べていた。昼と夜は、適当なすぐ食べれるものを買って食べていたのである。
1日中車に乗っていると、体が鈍ってくるので、1日一回は外に出て体を動かすようにしていた。
ただ、ひとつそろそろ耐えられなくなってきたことがある。風呂である。昨日は、スーパーのトイレに完備してあったシャワーつきの洗面器があったため、頭は洗ったのだったが。
「安い銭湯探そうか」
まだ我慢できる拓斗ではあったが、女三人は限界のようだった。
「そうだね・・・もうお金もったいないとか言ってられなくなってきたね・・・」
拓斗は、カーナビで近くにある銭湯を探すことにした。
「ここ、近そうだな。行ってみようか」
「うん・・・ごめんね」
拓斗はナビ通りに走り、銭湯らしき場所に到着した。3台程しか停められない駐車場に車を停め、中に入っていった。
「愛ちゃん、ちょっと汚いね・・・」
桜が嫌そうな顔で愛を見つめている。
拓斗も愛も、子供のときに何度か銭湯にはきたことがあった。桜と向日葵は今日が初めてだったのだ。
「我慢して桜。お風呂入れるだけいいと思わないとね」
「うん・・・」
「はい、いらっしゃい。大人は280円、子供は160円ね」
ちょろちょろしていた4人に気がついた番頭さんが声をかけてきた。
「案外安いんだね」
拓斗も愛も、もう少し高いのかと思っていた。
「じゃー後でな」
拓斗は男一人、男湯の扉へと入っていったのだった。
「じゃー行こうかっ桜、向日葵」
「はーい」
向日葵は初めての銭湯にウキウキな様子だった。
中に入ると、お年寄りが2人、お風呂からでてきたのだろう裸で喋っていた。
銭湯自体は古いが、銭湯のイメージはこんな感じだろう。歩くたびに床がギシギシ鳴っているところが少し怖いが。
「ママ、早く行こうよ!!」
向日葵が一目散に服を脱ぎ、愛を引っ張った。
「はいはい、ちょっと待ってね」
愛は自分の服を脱ぎ、家から持ってきたお風呂道具の準備をしている。
「はい、いいよ。行こうか!!」
向日葵と手をつないであげ、風呂場へと入ったのだった。
「うゎーー!!」
驚いているのは、桜だった。
風呂場の中に入ると、以外と広くて綺麗だった。
愛も汚いイメージをしていたので驚いていた。
「さぁー、体洗おうか」
桜と向日葵を両側に座らせ、愛も体を洗い始めた。
「あー気持ちいいね」
さすがに3日も風呂に入らないことは初めてだった。
「ママ、お風呂入っていい?」
向日葵は、そうとう湯船に入りたいのか、もう体を洗い終わっている。
「もぅー、ちゃんと洗ったのー」
「洗ったもん」
「はいはい、いいから入っておいで」
愛は笑顔で答えてあげた。
「ねぇー愛ちゃん」
桜が頭を洗いながら、話し掛けていた。
「どうしたの?桜」
「愛ちゃんあの人のこと好きなの?」
「拓斗のこと?大好きだよ」
愛は笑顔で答えた。
「そうなんだ・・・好きなんだ・・・」
「どうして?」
「なんでもないよ。これからどうするの?」
桜はいつになく不安そうな顔で、愛を見つめている。
「とりあえず、住むところを探さないといけないね・・・それから仕事も探さないといけないし、桜と向日葵の学校も探さないといけないよね」
「もう家には帰らないの?・・・」
「そうだね・・・今のところはね。帰ってちゃんと話しないとだめなんだけどね。今は、お父さんから逃げることが精一杯かな・・・ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって・・・」
「愛ちゃんがそれでいいんなら、桜はいいよ」
桜は笑顔を見せた。子供ながらに愛のことを思っているのだろう。
「ありがとうね、桜」
愛は、そんな桜を見ていると、涙が自然と溢れてきた。
「泣かないでよー、桜も泣けてくるよ」
「あっ、ごめんごめん・・・」
「愛ちゃん、今幸せ?」
「幸せだよ」
「じゃーいいじゃん」
「うん、ありがとね。さっ、お風呂入ろっ」




