6-14
「あのー、すいません」
大和は、事務所に入っていく社長を呼び止めた。
「はい?」
「私、戸川愛の夫なんですが・・・」
「あー、これはどうも。お世話になってます」
「嫁が、一昨日の夜から帰ってこないんですが、何か連絡なかったでしょうか?」
「いやっ、何も聞いておりませんが、いなくなったんですか?」
亀田は顔色ひとつ変えずに、大和の質問に答えている。
「そうですかー。やっぱり連絡ないですかー・・・」
「よく働いてくれる子だったから、急にこなくなって困ってるんだよ」
「すいません・・・あのー、もし嫁から何か連絡あったら教えてくれませんか?」
「わかりました。心配ですね・・・心当たりとかないんですか?」
亀田は、大和には悪いと思いながらも、大和の話に合わせていた。
「まったくわからなくて・・・急にいなくなってしまったので・・・ではそろそろ失礼します」
何も情報を得られなかった大和は、拓斗の会社に向かうことにした。
亀田花園から、カーナビで拓斗の会社を検索し、場所を確認すると、10分程度の場所だった。しかも、家からここへ向かうときに前を通っていたのである。
拓斗の会社は、5階建てのビルの1階にある。
目の前にある駐車場に車を停め、中に入っていった。
「いらっしゃいませ・・・あっ、!!」
「あっ、お前、茜じゃないかっ!!どうしてお前がこんなところにいるんだ!!」
事務所に入ってきた大和は、もちろん茜にすぐ気がついた。
「えっ、あー、大和君・・・いらっしゃい・・・」
「いらっしゃいと違うだろ!!お前がどうしてあいつの会社で働いてるんだよ!!」
茜はどうしたらいいのか分からない。すぐに坂上に助けを求めたのだった。
坂上は、すぐに愛の旦那だと分かった。
「初めまして。私、西岡君の上司の坂上と申します。戸川さんですよね?」
「あー、そうだ」
「先程も西岡君の奥さんが来ましたが、私たちは何も知らないんですよ」
「そうですか、何も知りませんか。それよりもどうしてこいつがここにいるんですか?」
大和は茜を睨んでいる。
茜は、蛇に睨まれたカエルのように、固まってしまっている。
「山本さんは、以前ここで働いていました。一度辞めていますが、私が来てくれるように頼んだんです」
「へぇーそうですか。まぁーそんなことはどうでもいいや!茜、やっぱりお前何かしってるだろう!!」
大和は、茜に向かって叫んだ。
「えっ・・・何も知らないよ・・・」
茜はどう答えたらいいのか分からない。
「あまり山本を責めないであげて下さい。私も山本も二人の関係は知ってましたよ。でも、今回のいなくなったことは、本当に何も知らないんですよ」
「やっぱりお前たちグルだったのか!!おかしいと思ったんだよ!!いつ電話しても営業にでてるって嘘ばっかりつきやがって!!」
「いやっ、それは嘘ではありませんよ。戸川さんが電話していただくときは本当に営業に回っています」
「そんなこと信じられるか!!」
「信じる、信じないはあなたの勝手ですが・・・西岡君が休みのときは、私達は何をしているのかは聞いていないので」
「・・・じゃー二人がいなくなった日はどう説明するんだ!!こいつが営業に出てるって言ったじゃないか!!」
山本は茜を指した。
「それは・・・・」
茜は何も言えない。
「その日は、何も連絡がなかったので、直に営業に行っていると誰もが思っていたんですよ。よくあることですからね」
「・・・なんだそれ!!お前の会社は社員が来てるかどうかの把握もしてないのか!!」
「私共の会社は基本、営業が仕事ですので。急に朝から、客に呼び出されることもあります。本来は会社に電話すべきなんですが、すいません。そこはわるいところですね」
「・・・もういいっ、お前と話してても腹が立つだけだ」
大和は、坂上のたんたんとした話し方が気に入らなかった。どれだけ怒鳴っても、普通に返してくる。こういう人間は話をすればするほど腹が立つだけだった。
「私も山本も、二人の相談は聞いていましたが、いつ会っていたとかは全く聞いてませんので。ただ二人とも、ここ最近はかなり深刻そうでしたよ。二人で駆け落ちするってことも考えられると思いますよ」
「・・・・・・もうどうでもいいですよ・・・・もう好きにしたらいい・・・」
さっきまで怒鳴り散らしていた大和であったが、諦めたのか何も言わずに出ていったのだった。
「あー、もうだめかと思いましたよー坂上さん・・・・ほんとにありがとうございました」
茜はぐったりとしている。
大きな深呼吸をして胸を撫で下ろしたのだった。
「いやいや、俺もヒヤヒヤものだったぞ。でもあーいう怒鳴る人間は、冷静に話をするのが一番なんだよ。そうすれば、必ず諦めるもんだ」
さすがは、今までいろんな人間と関わって来ているだけあった。
「もうこないですかね?」
「いや、わからないよ。諦めの悪そうな人そうだったからな。ただ、きになることがひとつあるんだ」
「なんですか?」
「山本、あの日、愛ちゃんに電話してるだろっ」
「はい・・・してますけど、それが何か?」
茜は、坂上が何を気にしているのか、まったく分からなかった。
「万が一、愛ちゃんの携帯の履歴見られたら電話してることばれるぞ。家族だったら履歴なんてすぐに取れるからな」
「えーーそうなんですかー・・・どうしよう・・・」
「まぁーまた何か対策考えないとな」
坂上は腕を組みながら、頭を悩ませていたのだった。




