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「おはよっ、愛」
朝方、少し寝れたのか拓斗は目を覚ました。
隣では、愛が目を開けて拓斗を見ていた。
「おはよ、ちょっとでも寝れた?」
愛も少しの間、眠っていたのだろう。
時間は朝8時。
桜と向日葵はまだスヤスヤと寝ている。
「あんまり寝れなかったかな。愛も寝てないんじゃないか?」
「そうだね。これからのこと考えたら不安で寝れないね・・・」
「とにかく今は地元から離れないとな。こんなところでいたらすぐに見つかっちゃうよ」
「そうだね・・・」
拓斗は車を走らせた。
途中で銀行に寄り、少しではあるが現金を出金した。
「すまない、これだけしかなくて・・・」
拓斗の貯金が10万。
愛も全て出金し、昨日もらった給料を足して30万程度だった。
「行き先は決まってないけど、出来るだけ見つけにくい場所を探さないとな。住むところと仕事だな・・・」
「そうだね。子供の学校も考えてあげないと・・・今は冬休みだからいいけど・・・行かない訳にも行かないから・・・」
朝の道は仕事に行く人で車が多い。
拓斗の仕事場はどうなってるだろう。茜が事情分かってるから坂上には言ってくれているだろう。
「あっ、おきた桜。おはよっ」
後ろで桜が目を覚ました。向日葵はまだ寝ている。
「おはよ愛ちゃん・・・」
「家から持ってきたパンあるから食べる?」
さすがは主婦である。食料のことまで拓斗は考えていなかった。
「さすがだなー愛は」
「食料は一番お金かかるからね。少しでも家にあったものは持ってきたから」
「ありがとうな」
「いいよ。でもそんなにないから、なくなったら買わないといけないね。料理できないし、即席ものになっちゃうね」
「お腹空いてないからいいよ・・・」
桜は小さな声で答えた。
さっきから拓斗のほうをチラチラ見ている。
気になるのは当たり前だ。会ったこともない人なんだから。
拓斗もどう接していいのか分からない。
小学校5年ともなれば、少しは大人事情もわかってくる難しい年頃だろう。
「あっ、向日葵もおきたの。おはよっ」
「おはよ、ママ。ここどこ??」
向日葵は昨日の出来事を余り覚えてないのだろう。辺りをチョロチョロしながら不思議そうな顔をしている。
「向日葵の知らないとこだよ」
今の向日葵には説明が難しい。愛は適当に話を合わせておいた。
「どこに行くのー?」
「まだ決まってないの。向日葵お腹空いた?パンあるからね」
「まだおきたばっかりだから大丈夫だよ」
「お腹空いたら言ってね」
「はーい」
「今頃みんな騒いでるよな・・・」
拓斗が久々に口を開いた。
「・・・警察とかに言うのかなー?」
「どうだろうな・・・でも捜索願いだしても警察は探してくれないよ。事件性がない限りは探さないらしいから」
「そうなんだ。案外警察って何もしてくれないんだね」
「それだけいなくなる人が多いんだろうね」
「ママ見てー!海だよー!!」
向日葵が窓に張りつき、目を輝かせている。
「ほんとだー」
桜も同じように向日葵の後ろから、海を見ていた。
「最近、海も来てなかったもんねー」
愛の家族で海へ行ったのは、5年前が最後だったので、桜も向日葵も海を見るのは久しぶりだった。
拓斗は、そんな二人を見て、海岸沿いにある駐車場に車を停めてあげた。駐車場からは、すぐに砂浜へ降りられるようになっていた。
「愛ちゃん、行っていい?」
桜が海を指さしながら、今にも車を飛び出していきそうな勢いだった。
「うん、いいよ。行っておいで。向日葵のこと見てあげなよ」
「うん、わかった。向日葵、いこっ!!」
桜は、向日葵の手をしっかり繋ぎ、嬉しそうに砂浜へ走っていったのだった。




