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「ごめんね、愛のわがままで・・・」
「いいよ。もう決心したから。でも子供が嫌って言ったらどうするの?」
本人達が否定しているのに、無理矢理連れていくのはよくないだろう。
「念のため聞いてみるね。もし、嫌なら旦那と暮らしたらいい話だから。ただ、愛と一緒にくるなら拓斗が一緒だということを理解してもらわないとね」
ほんとに子供にとったら酷な話だ。
今まで住んできた家、学校、友達、全てを捨てなければならないのである。
果たして、そこまでして着いてくるだろうか。
「もうすぐ愛の家だよ。いきなり家の前につけても大丈夫なの?」
「念のため、ちょっと離れたところに停めて。普通ならもう仕事行ってると思うけど・・・もしかしたら行ってないかもしれないし・・・」
愛は一度車から降り、隠れるように家に近づいた。大和の車は停まっていない。仕事に行ったようだ。
愛は一度、車に戻り、拓斗に大和がいないことを伝えた。
拓斗は、車を愛の家の前へ停めた。
「たぶん子供達は寝てると思うから起こしてくるね。中に入って待っててくれる?」
「あーわかった」
愛は二階に上がっていった。
拓斗は玄関先で待っていたが、じっとしてはいられない。この家には嫌な思い出でしかない。あのときの修羅場が頭をよぎる。
愛は子供部屋に入った。
「桜、向日葵おきて!!」
先に桜がおきた。いつもの愛の声にびっくりすることもなく。
「おかえり愛ちゃん。どうしたの?」
桜は大きなあくびをしている。
「向日葵おきて!!」
なかなかおきない向日葵だったので、愛はベットの階段を上がり、向日葵の体を軽く揺さぶってみた。
「もう朝?・・・」
向日葵は寝ぼけているが、なんとかおきてくれた。
「二人ともよく聞いて。お母さんね、もうお父さんと一緒にいられないの。もうこの家で住めないの。それで今からこの家出ていかないといけないのね」
愛は桜と向日葵の顔を交互に見ながら、いつになく真剣に話をしている。
階段の下で待っていた拓斗にも聞こえていた。
二人ともまだ眠気まなこで愛の話を聞いている。
愛は話を続けた。
「それでお母さんは桜と向日葵も一緒に連れていきたいの。でも、それは桜と向日葵が自分で決めたらいいから。ただ、お母さんはお父さんとは別の男の人と一緒だから。だからお母さんと一緒に行くってことは、その男の人も一緒だからね。それはわかってね」
桜は何となく、愛の言っていることがわかってきた。
向日葵は全く分かっていないが。
「よく考えたらいいからね。友達とももう会えないし、たぶんこの街へは帰ってこれないと思うから。それとこれからは好きな物も食べれないし、ほしい物も買ってあげられないから・・・。それでもいいんなら一緒に来てほしい」
桜は下を向いたまま黙っている。
いきなりで困っているのだろう。
それもそうだ。いくら子供だといっても、愛が言っていることは、余りにも過酷なことなのだから・・・。
「向日葵はどうしたい?ママと一緒に行きたい?それともママいないけど、お父さんと今まで通りここで暮らす?」
「向日葵はママと一緒に行くよ」
向日葵は簡単に決断した。
まだまだ向日葵は小さい。ことの重大さがわかっていないのだろう。
「ありがとう。桜はどうする?」
「・・・」
桜はさすがに、すぐには返事できない。
「・・・・・・愛ちゃんと一緒にいる・・・」
桜は小さな声で頷いた。
「ほんとにいいんだね。もう帰ってこれないかもしれないんだよ」
桜はもう一度静かに頷いたのだった。
「ありがとう二人とも。じゃー時間ないから早速用意して」
ほぼ強引ではあるが、二人を大和に任せて放っては行けない。
こんな馬鹿ばっかりしているが、桜と向日葵は愛にとって大事な大事な宝物である。
愛は二人に指示し、必要最低限なものだけ用意させた。
階段の下では、拓斗が心配そうに、三人のやり取りを見守っていたのだった。
「やっていけるんだろうか・・・」
拓斗の不安がどんどん膨らんでいく・・・・・・




