5-11
(じゃー仕事終わったから帰るね(^-^)おやすみ(^^)/)
拓斗は仕事を終え、いつものように愛にメールを送り終えてから、車を走らせた。
拓斗がメールを送り、その返事は返さないように二人で決めている。
家でいると、嫁の香奈が拓斗の携帯を奪い、勝手に見るのである。
そのため、愛からのメールを気づかないまま帰ってしまうと大変なことになりかねない。
家に到着した拓斗は、いつものように玄関を静かに開け、物音をたてないように入っていった。
ここからだ。
天国か地獄か、リビングのドアを開けるまで分からない。
香奈がいれば地獄。
いなければ天国である。
リビングの電気は、香奈がいるいないに関わらずついている。なので、外からでは分からないのである。
拓斗はドアを開け、恐る恐るリビングを覗いた。
『いない・・・な』
香奈がいないことを確認した拓斗は、胸を撫で下ろし、ほっとしたのだった。
拓斗はテレビをつけ、冷蔵庫からビールをだした。
食卓には、今日のご飯なのであろう焼き鳥とサラダが置いてあった。どちらもスーパーで買ってきた状態でるが。
その横には、香奈の飲みかけのビールもおいてあったが。
拓斗が食べていると、二階から物音がした。
そして、階段を降りてくる足音。
嫌な予感・・・。
「なんだ、帰ってたんだ」
嫌な予感が的中した。
香奈が二階から降りてきたのだった。
これぞ、大どんでん返しというやつだ。
ごくまれに、こういうことがあるから恐いのだ。
天国から地獄へ、一気につき落とされた拓斗だった。
「最近仕事遅いな。またあの女と遊んでるのか!?」
香奈は飲みかけのビールを一気に飲み干した。
「仕事が忙しいだけだから・・・」
拓斗は「お前と顔会わせたくないから」なんてことは言えず、仕事のせいにしておいた。
「へぇー仕事ね。まぁー今まで散々嘘ついてきたんだから、どうせ嘘だろうね!!」
香奈はソファーに足を組み、どこかの社長のように偉そうな格好で座り、拓斗を睨んでいる。
「・・・嘘なんて言ってないわ」
ほんとに腹が立つ。自分のしていることは最低なことだということはわかっているが、あまりにも態度が大きすぎる。
「今の仕事いつまで続けるの!?給料も上がらない。こんな給料で生活なんてできないんですけど!!」
「・・・あのさー、給料なんてそんな簡単に上がらないんですけど!!俺だって今の仕事頑張ってるんだよ!!生活厳しいのはお前が使いすぎだからじゃん。ちゃんとやりくりしてたら充分やっていけるわ!!」
拓斗は、香奈のあまりに腹の立つ言い方に、思っていることを吐き出した。
「何、私が悪いの!?毎日ちゃんとやってるじゃん。文句あるんだったら出ていくわ!!」
「毎日ちゃんとやってる?・・・何をやってるの?ご飯は買ったものばっかり!!部屋はあれ放題。買ってきたものも袋のまま置いてあるだけ。片付けようともしない。使わないんだったら買うな!!それにうちの掃除機は飾りか!?お前が掃除機かけてるとこなんて見たことないぞ!!宇宙のことだってそうじゃん。最近はうちの親に預けてるだけじゃんか!!何がちゃんとしてるんだ!!いい加減にしろよ!!」
拓斗は今まで溜めていたことをすべて吐き出したのだ。
「・・・あんたにだけは言われたくないわ!!裏切られた気持ちなんてわからないくせに!!」
「元々お前がそんなんだから女作ったんだろうが!!お前こそ俺の気持ち考えたことあるのか!!」
「もういいわ。どうせ今でもあいつと私の悪口言ってるんでしょ!!携帯毎日大事そうにもってるもんな!!」
「はぁー、してるか!!ほんと腹立つなー!!そんなに人のこと疑うんだったらこんな携帯いるかっ!!」
バキッ・・・
拓斗はあまりの腹立たしさに、持っていた携帯をへし折ったのだった。
「あー、もういいわ」
拓斗は無残にも、へし折った携帯を壁に投げつけ、リビングを出ていった。
車に乗り込んだ拓斗は、アクセルをめいいっぱい踏み込んだのだった。行くところはどこもなかったが・・・。
リビングに一人残った香奈は、悔し涙を流しながら、辺りにあるものを手当たり次第投げ始めたのだった。
拓斗は、朝方家に帰ってきた。
家の中に入ると、びっくりするほどリビングが荒れ果てていた。寝室に入ると、香奈は宇宙とともに寝ていた。
『ちょっと言い過ぎたかな・・・』
拓斗は激しく怒鳴ったことを少し後悔した。何もできない嫁だが、いちよう今まで一緒に暮らしてきたのだ。今は全く愛情はないが、少し可哀想な気もした。
『俺が裏切ったんだもんな・・・ごめんな・・・』
リビングに戻った拓斗は、散らかった部屋を片付け始めたのだった。




