5-8
拓斗は、坂上と飲みに行った日から自問自答の繰り返しだった。
家に帰れば、嫁の香奈が一人で缶チューハイ片手にテレビを見ている。
子供の宇宙はいつからか、ご飯だけ食べて風呂にいるまでの間、親に預けている。
聞けば、香奈が一人になりたいらしい。
そして風呂に行って寝かすのである。
そんな日々が続いてることで、宇宙との時間が持てない拓斗であった。
家に帰っても香奈が恐い顔でいるだけ。
最近は風呂に行っている時間に帰るようにしている。
今日は仕事が早く終わったが、まだ帰るのには早い時間だった。
一人になると色々と考えてしまうので、何かに集中しようとするが、何をしても集中できないのであった。
遠くの空を見て、愛のことを考えていた拓斗は、携帯を手に取り愛の番号を押してみる。
この行動を今まで何回しただろうか・・・番号を押しては消し、その繰り返しだった。
♪♪♪
携帯が鳴った。非通知だ。
「旦那だろうかっ・・・」
拓斗は非通知恐怖症になりそうだった。
でるかでないか、携帯をじっと見たまま止まっている拓斗だったが、でなければしつこくかかってくるだけだ。
「もしもし・・・」
拓斗は必死の覚悟で電話にでたのだった。
「・・・・・・・・」
電話の相手は何も言ってこない。やっぱりあの人か。前もそうだった。
「もしもし、西岡ですけど・・・」
「・・・・もし・・・もし・・・」
小さな声だったが男ではない。
拓斗はその声が誰なのかすぐに分かった。
愛だ。
「もしもし、愛なのか!?」
「うん・・・ごめん・・ね・・拓斗・・・・」
「元気だったか?だいたいは茜さんから聞いてるよ・・・俺こそごめんな・・・俺のせいでたいへんだったろう」
「愛は元気だよ。ごめんね・・・迷惑だと思ったんだけど、我慢できなくて電話しちゃった」
愛の声はどこか弱々しい。
でも久しぶりに聞いた愛の声に拓斗はなぜか涙がでてきた。
「俺もずっと電話しようと思ってたんだ。でもなかなか勇気がなくて・・・情けない男でごめんな」
「もう足大丈夫なの?茜から聞いたよ」
「聞いたんだね・・・俺は大丈夫、愛の傷みに比べたら大したことないから」
「ねぇー拓斗?もう一回付き合うことできないかなー・・・」
「・・・今度ばれたらただじゃ済まないよ。旦那さん今でも電話かかってくるから。まだ俺たちのこと怪しんでるよ・・・」
拓斗は携帯に電話があったこと、会社に電話があったことを愛に話した。
「そうなんだ・・・ごめんね・・・ほんと諦めの悪い男だからね・・・一生かかってくるかも」
「愛が悪い訳じゃないからね・・・仕方ないよ自分が悪いんだから」
「電話だけでもだめ?愛は拓斗とつながってたいの・・・」
拓斗の頭のモヤモヤが、愛の言葉で吹き飛んだ。
今まで考えていたことが嘘のように吹っ切れたようだ。
「愛、俺さー、やっぱり愛のこと諦められないよ。今までずっと忘れようとしてたけど、忘れることなんてできないよ」
「愛もだよ・・・毎日拓斗のことばっかり考えてしまうの・・・そんな簡単になんて忘れられないね・・・」
「でも、次はないと思わないとね。絶対ばれないようにだけしないと」
「それはよく分かってる」
二人はこれからのことをじっくり話し、会う約束をしたのだった。
「じゃーね、会うの楽しみにしてるね」
「おぅ、旦那に怪しまれないようにな。愛の旦那が一番恐いからな。じゃーね。あっ、そうだ・・・電話してくれてありがとうな」
こうして、二人の関係はまた始まった。




