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「今日な、会社に苦情の電話がかかってきたんだよ」
「苦情ですかー?」
拓斗は、料理を目の前にして急にお腹が空いてきたので、箸と口を動かしていた。
「それがな、西岡が仕事もしないでパチンコしてただの、女とコーヒー飲んでただの言うんだよ」
「えー、俺そんなことしてないですよ!!」
「心配するな、俺も、西岡がそんなことするなんて思ってないから」
「どんな人だったんですか?俺、全く見に覚えがないんですけど・・・」
拓斗は自分に関わりのある客を思い返していた。
でも・・・特に恨みを買うようなことをした覚えもないのである。
「低い声で、なんか酔っぱらってるみたいな喋り方だったぞ。俺思ったんだけどな、そいつって愛ちゃんの旦那じゃないのか?」
「・・・あー、そうなのかもしれないですね。あの人だったらやりかねないですよ・・・」
「まぁー西岡のこと恨んでる奴なんてそいつぐらいだろっ!?まぁー適当に言っておいたから気にするな」
坂上にはほんと助かる。そこいらの馬鹿そうなお偉いさんとは違い、信頼できる上司と言える。
「ほんと助かります、坂上さん」
「気にするなよ。それより愛ちゃんとはどうなってるんだ!?」
「どうって、別に何もないですよ。もう終わりましたから」
「西岡はそれで悔いはないのか?」
拓斗は箸を置き、急に暗い顔になった。
悔いはある。でもこれ以上踏み込んだらいけないのは分かっている。今日も大和から電話があったばっかりなのに・・・。
「悔いありますよ・・・でもこれ以上は無理ですよ・・・」
「そうだろうな。西岡は嘘つくの下手だから、すぐに顔にでる。短い付き合いの俺でも分かるよ」
「もしかして茜さんに何か言われました?」
拓斗は前に茜に言ったことを思い出した。
あのときはほんとに悪いことをした。あそこまで信じてくれるとはおもってなかったが・・・。
「そうなんだよ。西岡に言われたときは信じちゃったけど、後々考えたらおかしいことに気が付いたんだと。それで、自分では聞きにくいから俺に聞いてくれって言われてな」
「すいません。迷惑ばっかりかけちゃって」
「そんなことは気にするな。これは、俺の意見だがな、人生は一度だ。今のままで一生を終わるのもいいが、思いきって自分の人生を変えるということも考えていいんじゃないか?」
「それはそうですけどね・・・恐いんですよ・・・またばれたらって思うと・・・」
「それは確かにな。まぁーこれは西岡と愛ちゃんの問題だから、俺は一つの案を言ってるまでだ。
でもこのまま終わっても絶対後悔するぞ。俺がそうだからな。今思えば、嫁と別れて付き合ってた彼女と一緒になることもできたからな」
「・・・もう少し考えますよ・・・今すぐに決断することでもないので・・・」
「そうだな。ゆっくり考えろ。後悔だけはするなよ。誰かが傷つくなんて思ったら絶対後悔するからな。自分のしたいようにしたらいい。それが人生ってもんだよ」
坂上はもっともなことを言っているが、世間の人が聞いたら批判の嵐だろう。
「そんな人生終わったような顔するな。西岡の人生はこれからなんだぞ。人と違う人生もいいと思うよ」
「・・・はい」
「今日はすまなかったな。付き合わせちゃって。俺の言ってることは間違ってるかもしれないが、こういう人間もいていいだろ。じゃー帰ろうか。お疲れ様」
坂上は先に席を立ち、お金を払ってくれている。いつも一緒に飲むときはおごってくれるのだ。
「いつもすいません。お疲れ様でした」
拓斗は深々と頭を下げた。
「気を付けてな。ちゃんと代行呼べよ。お疲れ」
拓斗はこの日の夜も眠ることができなかった。
「自分だけ幸せになってもいいのかな・・・」




