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拓斗は今日も営業まわりにでていた。
「社長、もっと仕事くださいよ」
工場にいたときは、考えもしなかった人に頭を下げる仕事。今は頭を下げることも当たり前になってきた。
「西岡君も結構慣れてきたなー」
「ありがとうございます。これも社長のおかげですよ」
「お世辞も上手くなったよな」
「いえ、いえ、また何かありましたらすぐに電話してくださいね」
拓斗は深々と頭を下げ、車に戻ってきた。
10分ぐらい前から、拓斗の携帯がポケットの中で鳴っていた。
画面を見ると、非通知で電話が何回もかかっていた。拓斗は特に気にすることなく、車を走らせたのが、すぐに携帯がなった。
「なんだよ、しつこいなー、通知してかけろよ」
拓斗は一人でブツブツいいながら、客という可能性もあるため電話に出たのだった。
「はい、西岡です」
「・・・」
相手は何も言ってこない。
「もしもし・・・」
「西岡か?」
「そうですけど・・・」
間違い電話ではなかった。
電話の相手は男で低い声で喋ってきた。
「お前、まだあいつと続いてるだろ?」
『えっ・・・あいつと続いてる?・・・もしかして・・・愛の旦那?』
以前とは違い、元気のない低い声だったが、よく聞けば聞き覚えのある声だった。
「何か言えよ。お前まだ愛と続いてるんだろ!!」
さっきより声が大きくなった。
「あれからは連絡してないですけど・・・」
大和だと分かった拓斗は、足がガクガク震えてきた。
「嘘つけよ!どうせまた連絡してるんだろ!?」
大和の声が段々高ぶってきた。
「ほんとに・・・何もないですよ・・・」
「ほんとだな!お前のことは許さないからな。また電話する・・・」
電話は切れた。
「なんだったんだ・・・嫌がらせか・・・また電話するって・・・またかけてくるんだろうか・・・はぁー」
拓斗は大きなため息をついた。
前に大和が言ってたことは、こういうことだったのだろうか。
こんなのこれからもかかってくると思えば、嫌になってくる拓斗であった。
営業が終わり、会社に帰ってきた拓斗は、ぐったりするようにデスクに座った。
「ご苦労様、西岡」
坂上が声をかけてきた。
「あっ、お疲れ様です。今日は疲れましたよ」
拓斗は何もする気になれず、ぼぉーっとしていた。大和からの電話のこともあったことで、余計に疲れたのだった。
「そうだ、今日の夜空いてるか?ちょっとだけ付き合ってくれないか?」
「いいですよ・・・」
今日はあまり飲みに行く気分ではなかったが、坂上に誘われては、断ることもできなかった。
「今日はちょこっとだけ飲みたい気分なんだ。疲れてるのに済まないな」
「全然大丈夫ですよ」
拓斗は笑ってみせた。
「じゃー今日はもう仕事終わらして行っちゃおうか!」
坂上はもう行く気満々で、荷物を片付けている。
「そうですね、今日はもう仕事する気になれないですよ・・・行きましょうか!」
二人は荷物を片付け、事務所を後にしたのだった。




