5-1
拓斗は香奈に頼み込んで、今はまた以前のように三人で暮らしている。
前よりは少しだけましになったが、相変わらず二人になるのが恐い日々は続いていた。
愛のほうはというと・・・
大和は以前にもまして金にうるさくなった。
誕生日に買ってもらったものなどは、現金で返せと言ってくる。ローン、引き落とし以外で買うものは全く払ってはくれない。
食費は今まで大和のカードを使って買っていたが、カードは没収され、愛の給料から払わなければならないのである。
それによって、パートだけの愛の給料で、食費、生活に使うもの、子供のものなど全て愛が払っていた。
今までより遥かにやりくりが大変になり、愛のほしいものなど全く買えない状態であった。
そんな二人の生活は一ヶ月続いていた。
「愛、久しぶり!!」
今日は久しぶりに茜と飲みに行く約束をした。
大和に怪しまれないように、茜が家まで迎えにきてくれたのだ。
居酒屋に入った二人は席につき、飲みもの、食べきれないほどの料理を注文した。
「茜、こんなに頼んで食べれるの?」
愛はいつになくテンションの高い茜に、目が点になっていた。
「いっぱい食べて元気出さないとだめだよ愛!!」
茜も愛に気を使ってくれているのだろう。
「仕事のほうはどう?」
「うん、そんなにむずかしい仕事じゃないしね。ただハウスの中だからものすごく暑いけどね」
真夏のハウスは確かに暑いものではなかった。もう8月も終わりだが、まだまだ暑い日が続いている。
食欲がなくなるのと、今までのことで、この一ヶ月で愛は5キロも痩せたのである。
「いいな、私も痩せたいよ」
愛も茜もそれなりに痩せている。
「いいでしょ。最近太りぎみだったからいい機会だよ」
茜はテーブルに並んだ料理を、箸が止まることなく食べていた。それと同時に口も動いているが。
「ねぇ、拓斗は元気にしてる?」
愛は一ヶ月経った今でも、拓斗のことが気になっていた。
「もう足も治って、毎日営業頑張ってるよ。西岡君は愛のこと聞いてこないけど、かなり気になってるみたいだよ。毎日携帯見ながらぼーっとしてるもん」
「そうなんだ。でも携帯見てるだけで私のこと考えてるとかわかんないじゃん」
茜は喋りながら思いだし笑いをしている。
「それでね、この前後ろから西岡君の携帯覗いてみたの。何見てたと思う?ちょー笑えるよ」
「どうせエロ画像でも見てたんじゃないの?」
「ちょっとエロい画像だけどね」
茜の笑いが止まらない。
「もう、もったいぶらないで言ってよー」
「愛のセーラー服姿!!ねっ、笑えるでしょ」
それは愛がラブホテルで、拓斗に着せられ、撮られたものだった。
「えーそんなの見てたのー!!もう拓斗は!!」
愛は怒るふりをしたが、嬉かった。拓斗の携帯に愛の画像が残っているとは思っていなかった。
「西岡君は私が見てることに気づいてないけどね
。結構いろんな画像持ってるみたいだよ。覗き見するたびに違う画像だもん」
「そうなんだ。撮った画像消してなかったんだね」
愛の顔に笑みがこぼれる。
「でもセーラー服は笑えるよねー」
茜は愛を見ながら、腹を抱えて笑っている。
「もうー茜、笑いすぎだよ」
「ごめん、ごめん。だってセーラー服って!他にも何か着たの!?」
「他には着てないよ。拓斗がセーラー服好きだっていうからね」
「へぇー西岡君そういう趣味あるんだー」
「そうだ茜、これね拓斗に渡してほしいの」
愛はかばんの中から、封筒を取り出した。
「何入ってるの!?」
茜は封筒を透かして見ているが何も見えない。
「いろいろ考えたんだけどね。やっぱり私、拓斗のこと諦められないよ。ちょっとのつながりでいいんだ。会えなくてもいいから拓斗とつながってたい・・・それでね、手紙書いたんだ」
「そっか・・・わかったよ!!渡してあげる。それが愛の答えなんだね。やっぱりそう簡単には諦められないよね・・・よしっ!!私も応援してあげるからね」
茜は自分のことのように喜んでいる。
「拓斗はそれ見てどう思うか分からないけどね」
「西岡君もきっとおんなじ気持ちだって。大丈夫、大丈夫。よし!!今日は朝まで飲むぞー」
愛もそれ以上深く考えるのはやめにした。
考えれば悪いほうにしか考えれないからである。




