4-15
その日の夜。
拓斗は店に到着すると、坂上は先に来ていた。
「おぅ、先に飲んでるぞ」
坂上は枝豆を食べながら、生ビールを飲んでいた。
「あ、俺も生中でっ!!」
通りかかった店員に拓斗は声をかけた。
「毎日暑いですねっ」
拓斗はよく冷えたおしぼりを広げ、顔にかけた。
「あー気持ちいいー!!」
「お前おっさんみたいだなー」
坂上はそんな拓斗を見ながら笑っている。
「えっ、坂上さんもするでしょっ!」
「まぁーな。おっ、来た来た。お疲れ様、乾杯!!」
乾杯したあとに、拓斗は生中を一気に飲み干した。
「あー、仕事の後のビールはほんっとうまいですよね。・・・あっ、すいません、おかわりください」
「で、どうなんだ。ある程度は山本から聞いてるけど、大変だったな」
「そうなんですよ・・・でも自分が悪いんで仕方ないですけどね・・・」
拓斗は今までのことを、坂上に全て話した。
「そうかー。ばれたのが痛かったな」
「はい・・・まさかプリクラ見られるなんて思ってなかったです」
「まぁー終わったことは今更考えても仕方ないよ西岡。これからのことを前向きに考えないとな」
「そんな簡単に言わないでくださいよー」
「簡単な問題じゃないことぐらいわかるよ。でもな西岡、終わったことをうじうじ考えても仕方ないだろ。・・・そう言えば昼に言ってた俺も不倫してたって話、話せてやるよ」
坂上は自分の過去を話し始めた。
今から6年前。
坂上は30歳。今の拓斗と同じぐらいのときだった。
結婚して6年。
坂上の嫁は美知子といい、坂上と同い年だった。
結婚してから子供に恵まれず、不妊治療を始めたのが結婚して3年後。最初は二人で協力して頑張っていたが、年が経つごとに子供が出来ない苛立ちからか、二人の距離が少しずつ離れていった。
外で女をつくり始めたのが、そのときからだった。最初は遊びで始めたつもりだったのだが、相手の女性に子供ができてしまった。
坂上は悩みに悩み、子供をおろすように頼んだのだが、相手に拒まれた。
そして相手の女性が、家に殴り込んできたのだった。
嫁の美知子と相手の女性が大喧嘩になってしまい、最悪の結果となってしまった。
最後は三人で話し合い、お金でなんとか解決した。
そのときに一度は美知子と別居状態になったが、坂上が頭を下げなんとか元のさやに戻ったのである。
それから6年、その時のことはどちらも口に出さないが、子供はあきらめ二人で生活しているのである。
「坂上さんにそんな過去があったんですかー。びっくりですよ」
拓斗はほんとに驚いた。
「みんなには内緒だぞ。西岡に話すのがはじめてだ」
「こんな話誰にもできないですよ」
「まぁー今の西岡とはちょっと話が違うけどな。それで愛ちゃんだったか?その子のことは諦められそうなのか?」
「全く忘れるなんてできませんよ。人をこんなに好きになったのははじめてなので。香奈には失礼だけど。香奈との結婚は成り行きみたいなものだったので・・・。でも諦めないと愛に迷惑かかってしまうので・・・なんとか忘れようとしてるんですけどね・・・」
「今の嫁とはどうするんだ?戻るつもりなのか?」
「子供がいなかったら別れていると思います。宇宙のことを考えると元に戻った方がいいのかなと・・・」
「ビールでいいか?」
坂上は拓斗のビールがなくなっているのに気づき頼んでくれた。
「あ、すいません」
「これからのことはよく考えて決めたらいい。愛ちゃんはどう思っているのかわからないが、山本に聞いた話だと、旦那とまた一緒に暮らしてるみたいだから。あの子も子供とか生活のことを考えてそうしたみたいだけどな」
「一緒に暮らせてるんですね。離婚しなくて済んだんだ。よかった・・・」
拓斗は少しほっとした。
あの旦那のことだからてっきり離婚するんだと思っていた。
『これでいいんだよな・・・愛。これが愛にとって幸せなんだよな・・・もう俺は必要じゃないよな・・・』
坂上に全てを打ち明け、相談にのってもらったことで気持ちがかなり楽になった拓斗だった。
それから二日後、拓斗は香奈の実家に行き、土下座し、一緒に暮らしてくれるように頼み込んだのであった。




