4-11
拓斗は右足を骨折しており、全治一ヶ月と診断されたのだった。
体中が痛かったが、右足以外は軽い打撲程度ですんだ。
一週間は入院して、後はリハビリを兼ねて通院しなければならない。
仕事中だったこともあり、会社は足が治るまで休ませてもらうことになった。
その日は会社の同僚が見舞いにきてくれ、慌ただしい1日だったが、一人でいることを考えれば気は楽だった。
香奈にはまだ連絡していない。
するべきか黙っておくべきか・・・
今日はやめておこう。
自分の親には言ってあるから、もしかしたら言ってくれてるかもしれない。
その日はベットに横になると、すぐに寝てしまった。
次の日の朝。
拓斗の母、幸子が来てくれた。
昨日も父の光久と一緒に来てくれていた。
「おはよう、拓斗。調子はどう?」
「ごめんな母さん。迷惑ばっかりかけて・・・」
「いいのいいの、気にしなくていいから。いい機会じゃない、ゆっくりしなさい。ほんと骨折だけで済んでよかったよ」
幸子は袋いっぱいに入ったリンゴとバナナを机の上に出している。
「食べる?」
「あんまり食欲ないから・・・また食べるよ。ありがとね。・・・そういえば俺、まだ香奈に言ってないんだよ。やっぱり言ったほうがいいよな」
「当たり前でしょ。いちよう夫婦なんだから。言いにくいんだったらお母さんから言ってあげようか!?」
「頼めるかなー。今は喋りにくくてね・・・」
「じゃー帰ったら電話しておくね」
「あー頼むよ」
トン!・・・トン!・・・
誰かが来たようだ。
「どうぞ、入ってください」
「・・・こんにちは」
聞き覚えのある声だった。
「どうだ西岡」
拓斗の上司、坂上充宏だった。
そして愛の友人の山本茜も一緒だった。
「じゃー拓斗、帰るね」
幸子は来てくれた二人に気を使い、帰っていったのだった。
「すいません坂上さん、こんなことになってしまって・・・」
坂上は、拓斗が尊敬できる先輩の一人だった。
拓斗は何度も繰り返し頭を下げた。
「西岡君大丈夫なの?」
茜も心配してくれているようだ。
「すいません、茜さんまで心配かけちゃって・・・でも珍しいですね。二人で一緒にきてくれるなんて・・・あっ・・・まさか??」
拓斗は二人の顔を交互に見て、笑みを浮かべている。
「まさかって!私達そんな関係じゃないよ!」
茜がすぐに否定した。よっぽど嫌だったのか。
「おい、そんな嫌そうな顔するなよ」
坂上も笑っている。
拓斗は久々に笑ったような気がした。
「今日は朝から面接に行ってたの」
「えっ、面接って?」
「今の会社辞めちゃって。それで坂上さんに電話してみたら、うちの会社に来ないかって誘われたの」
「そうなんだ・・・愛はどうしてるの?」
拓斗は一番気になってることを聞いてみた。
「やっぱり西岡君何も聞いてないんだね・・・」
茜の笑顔が急に消えた。
「えっ、聞いてないって・・・愛に何かあったの?」
「私が言ったって言わないでよ・・・あのね、愛ね・・・家でリストカットしたの・・・」
拓斗は茜の言ったことに言葉もでなかった。
「・・・・・・」
拓斗の頭の中でいろんなことがよぎった・・・。
「発見が早かったから命に別状はなかったからよかったけどね・・・」
『よかった・・・』
「そんなこともあって仕事休んでたから、愛、仕事クビになっちゃってね・・・」
「そうだったんだ・・・俺のせいで愛は苦しんでるんだろうな・・・」
「今は少し元気になったみたいで、仕事探してるみたい!たまに電話とかメールしてるけど、元気な感じだったよ」
「・・・そっか・・・」
『愛は自分が落ち込んでるときでも、人には元気にみせるからなー・・・。俺のこと必死で忘れようとしてるんだろうか・・・。俺は愛のこと忘れるなんて無理だよ・・・』
「西岡、お前が落ち込む気持ちもわかる。でもあの子も頑張ってるみたいだし、お前も元気だせ!なっ!」
坂上が拓斗の肩を叩き、励ましてくれた。
「ありがとうございます、坂上さん。これからは仕事一途に頑張りますよ」
拓斗はめいいっぱいの笑顔を見せた。
「また愛と話す機会あったら西岡君のこと言っておくね」
「いや、このことは言わないで・・・これ以上心配かけられないから・・・バリバリ仕事頑張ってるって言っておいてよ」
「うん、分かったよ。西岡君もあんまり無理したらだめだよ」
「うん、ありがとう」
愛と最後にあったあの日から、いろんなことがあった。
愛にそんなことが起こっていることも知らなかったし・・・旦那に電話で言われたことも気になってどうしようもない。
これからの俺はどんな人生を送るんだろ・・・
一人になればなるほど、ネガティブになってしまう拓斗であった。




